コラム

外国人雇用におけるチェックポイント

2023.06.14[VISA]




【外国人の雇用が決まったとき】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
事業者さまが新たに社員さんを雇うにあたって、
さまざまなプロセスや手続きが
必要とされますが、
その社員さんが外国人である場合は、
日本人内定者とは違う観点で
注意すべきチェック事項が存在します。

もう少し詳しく定義すると、
日本人雇用と同じルール

外国人雇用における特有ルール
の両方の見極め

が難しいという要素があるため、
外国人の雇用は難しそう
と考えていらっしゃる事業主さまも
いらっしゃるのではないでしょうか。

これまで当事務所での
ご相談やサポート事例もふまえ、
事業主さまの外国人採用におけるポイントを
VISA要件を中心にご紹介します。




【外国人ならではの注意点】

外国人は出身国や性別の違いによって、
多種多様なキャラクターを備えています。
そんな外国人の採用において、
万能な業務マニュアルも作りづらい

のも現状ではありますが、
まず大切なのは、次のような
日本人と外国人との違いを知る
ことと考えます。

①入社までのインターバル
内定者が日本人である場合、
事業者側の都合さえ合えば、
必要な手続きを経て、
内定即日やに翌日にでも入社が可能です。

しかし外国人の場合は、
事業者が採用を内定したとしても、
あくまでVISAの要件にマッチ
出入国在留管理局から許可を得て
そのVISAを取得または変更しなければ、
入社して仕事をすることができません。

②求められるバックグラウンド
日本人の場合は
事業者が採用を内定して
比較的フレキシブルに
内定業務を定めることができます。
たとえば、
労働関連法を正しく守っていれば、
「学歴・経験不問」
といった社員募集をすることも、
簡単な作業や、日雇い程度の募集をすることも
も可能であったりします。

これに対して外国人の場合は、
VISAにマッチした業務を内定して、
雇用契約を結ばなければなりません。
外国人の就職において
一般的に取得するVISAは就労VISAですが、
それらVISAを取得するためには、
外国人が持つ学歴や職務経歴などの
バックグラウンドに一定の水準
が課され、
内定業務にマッチすることが必要です。
反対に解釈すると、
VISAのカテゴリーにあてはまらずに
外国人が就くことができない職業

もあります。
※就労VISAの
 バックグラウンドやマッチングについては、
 以前のコラムで詳しくご紹介しています。
 ⇒
技術・人文知識・国際業務VISAの取得
 ⇒【就労VISA】学歴の重要性
就労可能なVISAについては、
 こちらのページでご紹介しています。


ちなみに、
就労VISAを持つ外国人は
大学や専門学校で学び、習得する
専門的知識を要しない仕事(単純労働)
たとえば、
ホール業務や清掃作業、配達や仕分けなど

は認められません。

※単純労働については、
 
こちらのコラムでも
 くわしくご紹介しています。


③決まった仕事
日本人の場合、
入社すれば公序良俗や法に反しなければ、
なんの制限なく働くことができます。

しかし外国人は、
たとえVISAを取得できたとしても、
そのVISAで定められる仕事しかできません。
そのVISAで定められる仕事しかできない
ということは、
事業者が
外国人スタッフの
部署異動や担当業務の変更を
安易にできず
慎重に検討しなければならない

ことも想定されます。

また、VISAによっては、
就労時間や期間に細かな制限がかかる

こともあります。
たとえば、
留学生のアルバイトに関しては
資格外活動の許可が必要で、
就労できる時間がMAX28時間/週
であったり、
雀荘やナイトクラブなど
風俗営業のお店での
アルバイトはNGとなります。





【日本人と変わらないポイント】

外国人であっても、
日本人雇用と変わらない要素
があります。
それは、
労働法の遵守社会保険の適用
です。
たとえば、
最低賃金の適用
社会保険手続き
有給休暇の付与

など、
雇用に関連する手続きは、
日本人と同じように適用され、
おこなわなければならず、
税金の徴収処遇もまた、
日本人と同等となります。

また、忘れてはならないのが、
平等・適正な待遇や評価をすべき
ということでしょう。
日本人と同じく、
外国人の持つ

スキルや経歴、パフォーマンスは
やはり正当に評価されるべき

と考えます。




【採用のための「募集要項」】

外国人ならではの注意事項を把握したら、
いよいよ雇用のための具体的なアクション
を進めていきます。

まずは、
事業者が募集する社員を具体的にまとめ、
募集要項にまとめます。

募集要項に記載されている内容が
「正社員」「●●スタッフ」
だけですと、
職場環境や担当業務、
業務のシチュエーションがわかりにくく、
応募者とのアンマッチや
入社後の雇用トラブルとなりやすいですので、
勤務場所や待遇、業務内容や
求められる経歴、資格などを
詳細にまとめる
ことが大切と考えます。






【必要なVISAの確認】

募集要項がはっきりしたら、
外国人内定者に求めるVISAの把握
に入りましょう。

基本的に外国人は、
就労VISAまたは
就労制限の少ないVISAがないと
フルタイムで働くことができません。
代表的な就労VISAとして存在するのが、
技術・人文知識・国際業務VISAです。

事業者にとって
応募してきた外国人が
どんなに良い人材であっても、
事業者の職種や業務内容にマッチするVISA
を持てない場合
残念ながら採用はできません。

たとえば、
介護業務を募集しているのに
日本語のスキルだけしかなければ
内定は難しいでしょう。

また、
募集社員がフルタイム社員であれば、
留学VISAや家族滞在VISAなど、
就労時間の制限があるVISAの外国人
を採用できません。


雇う外国人がアルバイトやパートで良い
という場合は、
その外国人が
資格外活動の許可を得ているか
または配偶者や永住者などの
就労制限がないVISAを持っているか
を確認します。

VISAの種類は非常にたくさんあり、
就労活動ができるかどうか
就労に制限の有無

など、
それぞれの特性をチェックしたいところです。

外国人が取得すべきVISAの
判断チャートと各VISAの特徴
をまとめてみましたので、
参考にしてみてください。




※VISAの種類については、
 
こちらのページでご紹介しています。




【募集人材の求人】

次に、
求める人材を確保できるよう、
求人をかけていきます。

外国人の求人方法としては、

求人広告を出す
転職エージェントや
人材派遣紹介会社を活用する
ハローワークに求人をかける
教育機関や前勤務先から人材推薦を受ける
知人や社員などからの紹介を受ける


などが挙げられるでしょう。
最近では、
求人広告の媒体も幅広く、
FaceBookやInstagramなどのSNS
を利用する方法もあります。




【外国人とのコンタクト、面接】

人材募集の結果
外国人から応募があった場合、
実際に連絡をとって、面接を設定しましょう。
面接の日程が決まったら、
ドタキャンは未然に防ぎたいものです。
そこで、
面接日の前日や当日の数時間前に
複数回リマインドの連絡を複数回入れる

と良いでしょう。

面接日当日は、
次の情報を実際に確認し、
内定可否の判断材料としましょう。

持っているVISA
連絡先
最寄り駅(住所)
土地勘の有無
基礎知識、保有資格
日本語レベル
志望動機
希望の待遇
外国人の印象


日本人はメールとLINE、電話など、
多様なツールを使うこと多いですが、
外国人は異国での在留、という環境から、
通信端末や
日本人にポピュラーな連絡ツールを
持っていない
メールチェックをあまりしない

という方も多く見受けられます。

また、ツールがあったとしても、
Wi-Fiが繋がるときにしか
受信チェックしない

クイックレスポンスが難しい環境にいる
なども想定されます。

連絡ツールは幅広く用意して対応
したいところです。

内定時点で
取得すべきVISAを持っていない場合
在留資格変更申請
取得すべきVISAはあるが
在留期限が迫っている場合

在留期間更新申請
内定業務と取得しているVISA
とのマッチングが不安な場合

就労資格証明書交付申請
すみやかにおこないます。




【内定業務に直結する「日本語レベル」】

VISAとともに、
事業者にとって最重要視するのが
外国人の日本語レベル
ではないでしょうか。

内定後に入社しても、
もし事業者と
スムーズにコミュニケーションが取れないと
お互いが一緒に仕事をするにあたっての
ハードルが高くなってしまいます。

外国人の日本語レベルを確認できるツール
として、代表的なものは、
日本語能力試験(JLPT)などの
日本語レベルです。

ただし、合格レベルに関わらず、
外国人によっては
発音や読み書きが苦手であったりと
実際のスキルには違いがみられますので
合格証明はあくまでも参考情報としつつ、
次のように日本語レベルをチェック
していきたいところです。

<リーディング>
たとえば、
漢字・ひらがな・カタカナ
が混ざった書類をその場で見せて、
外国人に読んでいただきましょう。
事業者が業務上頻繁に使う
ひらがなや漢字などを書いてみて、
どのくらい読めるか試すのも良いでしょう。

母国で漢字を使わない国籍者にとっては、
漢字は高いハードルとなると考えますので、
最低限ひらがなとカタカナの読解力は大切です。
入社後の就業に支障がないように
事業者が用意するであろう業務マニュアルも
内容を調整する必要もあるでしょう。

<ライティング>
ペンと紙、またはPCを与えて、
ひらがなやカタカナで
外国人の氏名や住所などを
書いたり、入力していただきましょう。
外国人から提出された履歴書の作成者が
外国人本人なのかを確認するのも有効
と考えます。

<スピーキング・ヒアリング>
外国人の日本語スキルでは
これが1番優れて傾向が高いです。
まずは、事業主から、
日本での在留期間や
前職(または卒業した学校)
など、
シンプルな質問をゆっくりと話しかけて、
一問一答に答えられるかチェックしましょう。

簡単なコミュニケーションができること
を確認したら、
少し会話のテンポを早くし、
雑談を交えてみたり、
職場で使う具体的なフレーズを使ってみたり
してみましょう。




【採用後に大切なこと】

応募した外国人が
無事に採用内定となりましたら、
入社手続きとして
ハローワークや年金事務所に対する
社会保険手続きを済ませます。
※厚生労働省:被保険者に関する手続き

外国人の採用するにあたっては
外国人雇用状況の届出を
最寄りのハローワークに提出
しなければなりません。
この届出は
外国人が雇用保険の被保険者になる場合と
そうでない場合に、書類が分かれること、
また、
外国人が離職したときも提出すること
に注意したいところです。
※厚生労働省:外国人雇用状況の届出

また、社内手続きとしては、
内定時点で、
外国人の在留カードのコピーを控えておく
ことで、
住所や名前、国籍などを身元保証情報にする
ことが可能です。
また、
外国人の在留期限が過ぎてしまうと、
不法滞在となり
事業者は雇用できなくなってしまいますので、
あらかじめ在留カードで在留期限を確認して
次のVISA更新タイミングをチェックできます。




【貴重な外国人人材とともに】

外国人雇用においては、
日本人スタッフと同様に扱うほか、
外国人だからこその手続きも存在します。
これらの手続きをおこなわなかったり、
VISAののっとった在留活動が認められないと
不法就労助長罪に問われ、
事業者が罰せられる可能性もあります。
※不法就労助長罪については、
 以前のコラムで説明しています。
 ⇒
こちら

VISAに関わる法律やルールは非常に複雑で、
専門的な知識や経験が問われます。
価値観や文化を超えて、
事業者と外国人がともにがんばれるよう、
また事業発展につながるよう、
雇用手続きやVISAまわりのチェックは
しっかりとおこないたいところです。

WINDS行政書士事務所では、
外国人を雇用する事業者の皆さま対する
VISA申請のサポート、
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どうぞお気軽にご相談ください。