コラム

【外国人雇用で知っておくべき!】脱退一時金

2023.06.07[VISA]




【よく聞かれる?脱退一時金】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
外国人が
技能実習の終了、そのほかの理由によって
帰国する場合、
またはすでに帰国した場合、
日本国内で支払っていた年金の一部を
払い戻してもらえる、
脱退一時金の制度を、ご存じでしょうか。

外国人本人にとっては、
帰国にともなって社会保険料が返ってくる
というメリットがあるとともに、
勤務先の事業主の皆さまにとっても、
社会保険手続きの整理とともに、
外国人スタッフの信頼や
安定した雇用につながると考えます。

脱退一時金が外国人に適用されるか、
またその要件や背景の制度改正など、
幅広くご案内します。




【脱退一時金とは】

脱退一時金とは、
日本国籍を持たない者=外国人が
国民/厚生年金の被保険者資格を喪失し
日本を出国した場合、
在留中に支払った年金保険料を
掛け捨てにすることなく、
一部の払い戻しを受けられる
制度です。

20歳以上60歳未満の日本在住者は、
国民年金に加入し、
年金保険料を納めること
法律で義務づけられています。

これは外国人であっても同じで、
条件を満たす場合は
社会保険に強制加入
となり、
長期間の在留継続後に
将来老齢年金を受け取る場合、
年金保険料納付済み期間が10年以上必要

となります。
外国人の立場で考えると、
老齢年金をもらう前に帰国してしまえば
年金保険料の掛け捨てとなってしまう
ため、
支払った年金保険料の一部がバックされることは
うれしいものですね。




【脱退一時金のメリット/デメリット】

脱退一時金手続きの活用によって
あらかじめ頭に入れておきたい
メリットとデメリットがあります。

<メリット>
①払った年金が返ってくる

日本に中長期間在留し
年金保険料を支払っている外国人が
老齢年金の受給要件を満たさない場合は
当然年金は受け取れませんが、
帰国のときに
年金保険料の一部がバックされることは
非常にに助かるものです。

②高い払戻し率
脱退一時金は
年金保険料の全額が戻ってくる
わけではありませんが、
国民年金の払い戻し率は30%~50%
となり、
同じ条件で、厚生年金の場合は、
事業主が保険料の半分を負担しているため、
払い戻し率は60%~100%
と、払い戻し率が高いです。
※保険加入期間5年を前提とした率設定です。

<デメリット>
①年金加入履歴のリセット

要件に該当する日本在住者の年金加入期間は
一生を通して累積されていきますが、
外国人が
母国への帰国や他国への移住を決めた結果
脱退一時金を受け取ると
日本の年金加入記録はすべて抹消され、
未加入者(=年金ゼロ)と扱われます。


もしも外国人が
再度日本へ在留して
将来老齢年金を受け取るときには、
年金の受給資格がなくなったり
受給額が少なくなるなど、
外国人にとって不利
になることが
考えられます。

②払い戻し額の上限
脱退一時金は
年金加入期間が5年(60月)であったときに
返ってくるのがMAX金額
となっています。
そのため、
加入期間が5年を超えた場合
受け取る脱退一時金の額が増えることはなく、
期間に応じて払い戻し率は下がっていきます。





【きっと便利!脱退一時金の相互理解】

VISA申請サポートの際、
技能実習生や特定技能外国人
監理団体さまや登録支援機関さま
を中心に、

一時脱退金は受けられる?
年金を払いたくないけどいい方法はない?


というご相談を受けることがあります。

詳しく事情をうかがってみると、
外国人の立場としては、
給与の手取りが減る
年金保険料の掛け捨てをしたくない

といった理由が多く、
将来帰国する可能性と現在の生計の両方を懸念
していることが考えられます。

私は行政書士として、
また登録支援機関として、
雇用する事業主側から外国人スタッフに、
入社の段階で
法律ルールや社会保険の仕組みを
説明しつつ、お互いに十分に理解いただく

ことをおすすめしています。

外国人が脱退一時金の存在を知ることによって、
給与からの控除や社会保険の加入に
理解を示してくれるでしょう。
また、説明の際には
脱退一時金の概算額など具体的な数字を示す
ことで、さらに納得度が増すでしょう。




【一時脱退金の金額】

気になる一時脱退金の金額ですが、
厚生年金をベースに考えると、
原則、次のように算定されます。





日本年金機構ホームページでも
 算定式が公開されています。


もし、多少の誤差は気にせず
ざっくりの概算額を算定したい場合は、

入社から3年分の年収総額 x 9%

を目安に考えるとよいです。

たとえば、
日本で3年間勤務、
年収400万
円の技能実習生
一時脱退金を請求する場合、
脱退一時金の概算額は、
400万円×9%=108万円

となります。
※2021年4月より、
 最終月(資格喪失日の属する月の前月)が
 2021年4月以降の場合は、
 計算に用いる月数上限が60月(=5年)
 となっています。
※見込み額については、
 日本年金機構から正確な回答はしてもらえません。


一方、この概算額を
より正確に算定したい場合は、
毎月の給与手取り額
ボーナス手取り額
支給総額から控除された厚生年金保険料総額

を確認します。

厚生年金保険料の支払実績
年金事務所から
年金被保険者記録照会回答票(資格画面)
を請求すれば、確認がとれます。
これに、
給与とボーナス両方の手取り額を加えて、
ひと月あたりの平均給与額
(平均標準報酬額)を算出し、
3年(36か月)をかける

ことによって、
見込脱退金額が算出できます。
※給与支給額からは
 所得税が控除されますが、
 還付申告することで所得税が還付されます。





【脱退一時金の取得要件】

脱退一時金を受け取りたい者は、
次の要件をクリアする必要があります。

①日本国籍者ではない
シンプルなルールですが、
日本国籍者は
脱退一時金の支給対象者ではない

という、とても重要なルールです。

②年金の被保険者でない
年金保険の加入期間=
年金保険料の支払期間が6ヶ月以上

or
社会保険の加入期間が10年未満

の外国人は
将来年金を受ける権利がなく
脱退一時金の対象者となります。
⇒年金を受ける権利のある者は
 脱退一時金を受け取れません。


③日本国内に住所がない
すでに帰国していて
年金保険の被保険者資格の喪失日から
2年以上経過していない

資格喪失日に日本国内に住所がある場合は、
出国後2年以上経過していない
外国人は、脱退一時金の対象者です。

反対に解釈すると、
以下の方は
脱退一時金を請求することができません。




社会保険加入期間10年以上の外国人が
脱退一時金を受けられないのは、
将来年金の受給資格を持っている
=年金の被保険者になっている

からです。

社会保険の資格を喪失した日に
日本国内に住所がある場合は、
社会保険の資格を喪失した後に初めて、
日本国内での住所がなくなった日から2年
を起算します。




【脱退一時金の請求手続き】

脱退一時金の請求手続きは、
短期滞在の外国人
または委任を受けた代理人

日本の住所をなくして出国後2年以内
郵送・オンラインいずれか
おこなうことができます。
です。

注意したいのは、
加入制度(国民年金か厚生年金か)や
加入期間によって
日本年金機構と各共済組合など
提出先が分かれる
ことです。
日本滞在中の年金の加入期間が、
国民年金または厚生年金保険の期間のみ
の場合は
日本年金機構に請求します。
一方、帰国後、
旅行など就労以外の目的で来日した場合は、
年金事務所または年金相談センター窓口
で請求します。

万が一、
外国人が脱退一時金の支給を受けずに死
した場合は、
請求者の死亡当時に
一緒に生計を立てていた
配偶者、子、父母、孫、祖父母、
兄弟姉妹、3親等内の親族などが
代理で受給
することもできます。

また、外国人が
確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)に加入
していた場合は、
中途脱退できる要件が厳しく
脱退一時金の受給に対する高いハードル
となっています。



要件②のひとつである、
iDeCoに加入できない者とは、
保険料の免除を申請している
国民年金第1号被保険者
生活保護法による生活扶助者
日本国籍者でない者

が該当します。




【脱退一時金の払い戻し時期】

脱退一時金は、
請求受け付けからおよそ4カ月後
を目安に支払われ、
脱退一時金が送金の際には、
脱退一時金支給決定通知書
が送付されます。

脱退一時金は、日本円ではなく、
支給対象国の外国通貨で支払われます。
このときの為替レートは、
支給決定された月の平均レートとなります。
(申請提出月ではありません)
支給が決まると、
日本の金融機関を通して
指定口座に振り込まれます。




【脱退一時金における注意点】

脱退一時金の請求手続きにおいて、
注意したい点をピックアップしてみました。
ご参考ください。

①申請についての理解
申請者は、
外国人または委任を受けた代理人だけ
であり、
雇用した側の事業者は
この手続きをするものではありません。

外国人がこの点を誤解している場合、
手続きをしないままとなる結果、
トラブルになる可能性がありますので、
この点は、
事業者側が十分に外国人に説明
した方が良いでしょう。
技能実習や特定技能を活用する機関
であれば、
監理団体や登録支援機関に
説明のサポート
をお願いしましょう。

②払い戻し額
具体的な見込み金額は
現実的な情報として
外国人側が非常に納得しやすいと言えます。
ただし、
為替レートなどの要素もあり
概算額と実際に受け取る額は
異なる場合があります

ので、この点も合わせて説明しましょう。

②老齢年金受給の可能性
デメリット①でも説明しましたが、
脱退一時金を受け取ると
年金加入期間がリセットとなります。

もしも外国人が
帰国後に再在留の可能性が高ければ、
脱退一時金は受け取らないという選択肢

もありますので、
外国人が将来、
日本に在留して老齢年金を受け取る可能性
を十分に考えたうえで、
脱退一時金を請求するかどうかを
検討しましょう。

③請求手続き時の住所
受給するためには、
日本国内に住所がない
ことが、条件のひとつです。
請求手続きの受理日時点で、
外国人の住所がまだ日本にある場合は、
脱退一時金の請求が認められません。

対策としては、
住民登録をしている市区町村で
転出手続きを終えた後で、
請求手続きをすべき
でしょう。
郵送で手続きをする場合は、
請求書が転出日以降に到達するように

しましょう。

請求手続きのために
再入国許可・みなし再入国許可を受けて
出国する場合
もやはり
転出手続きを終えていることが必要です。
母国での冠婚葬祭、そのほかイベントなどで
一時帰国するとき、
再来日が想定されるのかが、
手続きをするかどうかの検討材料となります。

④社会保障協定の存在
脱退一時金の請求においては、
社会保障協定ルールについても
知っておいた方が良いでしょう。

社会保障協定とは、
外国人の母国と日本の二国間において
社会保障への二重加入防止
日本と相手国の年金加入期間の相互通算
を可能にする制度
です。
この制度を活用することで、
外国人は、
日本で働いて納めた保険料と
母国で支払っていた保険料を
同じ扱いにしてもらえる
わけです。

日本と社会保障協定を結んでいる国は、
次の22か国です。


※イタリアは現在署名未発効ですが、
 発効準備の調整が進んでいます。
※イギリス・韓国・中国との協定は
 「保険料二重負担防止」のみです。

日本年金機構:2022年5月13日現在の協定締結国

年金加入期間が通算できる
(=社会保障協定を結んでいる)国
の外国人は、

・帰国後に加入期間を通算して
 将来老齢年金とする
・日本出国後に脱退一時金を請求


のいずれかで、
支払った年金保険料を受け取る
ことができます。

脱退一時金の請求を選ぶ場合、
支給額の計算基礎となる年金加入期間は
日本で働いた期間となり、
母国での年金加入期間として
通算できなくなります。

外国人がこの点に注意して
手続きを選択をできるように
してあげたいところです。

⑤制度改正による支給上限
正確に脱退一時金の金額を計算するとき
に必要な、年金保険料納付済み期間は
これまで支給上限が3年となっていました
2021年4月から5年に拡充されました。
このルール改正は、
特定技能VISAの在留期間(通算MAX5年)や、
近年の短期滞在外国人の推移
を考慮の結果、見直されたものです。




【事前に知っておきたい有効な制度】

脱退一時金は、
外国人に特別に与えられ、
VISA申請手続きにも
密接に関わっているルールです。

技能実習や特定技能ルールの見直し
が議論され、また、
水際対策の緩和などによって
インバウンド増加の傾向から、
外国人が日本に在留するうえで
将来に向けたライフポリシーも幅広くなる
と思われます。
雇用する事業者の皆さまとしましても
社会保険手続きの整理とともに、
外国人スタッフの信頼や安定した雇用
につながると考えます。

WINDS行政書士事務所では
外国人のVISAに関わるこうした最新情報も
十分にキャッチアップして
事業者や外国人の皆さまを
サポートさせていただいております。
お困りごとやご相談がございましたら、
遠慮なくお問い合わせください。