コラム

【2023年秋から!】景品表示法におけるステマ規制

2023.05.31[契約]





【ステマ規制が本格スタート】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。

今年10月より、
景品表示法に基づいて
消費者向けの広告や、販売の際の景品提供
における規制の強化がスタートします。

対象となる広告は、
事業者が第三者に依頼・指示を出して
おこなう広告表示
代表的なものとして挙げられるのが
今回ご紹介する、
ステルスマーケティング(ステマ)
です。

この規制によって、
商材宣伝における
著名人やインフルエンサーの起用
SNSやウェブサイトの活用
レビュー依頼
など、
従来のルールよりも注意点が増え、
法律違反となる場合は、
措置命令の対象となります。
今回は
法規制の詳細と対応ポイントを
詳しくご紹介します。




【ステマとは】

ステルスマーケティング(ステマ)
とは、
広告であることを伏せる形式の広告
を言い、
影響力のある者や業者が
中立な第三者を装って
商材の宣伝や紹介、口コミ投稿などをする行為

を指します。
広告主から対価を受け取っている業者が
一般の消費者のふりをして
好意的な口コミ・レビューを投稿する行為
もこれにあたります。

ステマには、大きく分けて
次の2パターンに分かれます。



両パターンに共通するのは、
宣伝であることを
消費者に宣伝だと気付かせない

ことです。

過去に騒然となったステマの報道は
次のようなものがありました。

①食べログのやらせ投稿
食べログとは
飲食店の検索・予約サイトで、
飲食を楽しんだユーザーが
お店の点数や口コミを投稿でき
ランキングが表示されるものです。
2011年、このサイト上で、
飲食店から報酬を受け取って、
そのお店に対する好評価の口コミ投稿をする
複数業者の存在が発覚、
やらせ投稿の典型的なモデルケース
と言えます。

食べログの運営会社はこの事態を受け、
携帯電話番号による認証導入
悪質な投稿業者に関する通報窓口の設置
など
やらせ業者対策を講じています。
※関連して、
 Q&Aサイト
Yahoo!知恵袋
 でのやらせ投稿にも
 対策が講じられています。

 
②ペニーオークション詐欺
当時、ステマという事実を
この事件で知ったという方も
多いのではないでしょうか。
ペニーオークションとは、
毎回の入札毎に手数料が必要になる
インターネットオークション

を指します。
ユーザーは入札手続きのために
あらかじめ設定された仮想通貨を購入、
その仮想通貨を使って
商品に数十円単位で入札して
落札後も仮想通貨で支払いますが、
実は運営業者によって
サイトにボットが仕込まれており、
ユーザーの入札を必ず上回るようにして
落札できないように設定
されていました。
元々、商品を破格で落札できる可能性から
非常に多くの人気を集めていましたが、
2012年、
著名人が知人から謝礼を受け取り
実際はサイトで落札していないにも関わらず
自身のブログで
「ペニオクサイトで激安で商品を落札した」
との投稿
をしていたことが発覚。
詐欺が発覚した運営業者は摘発され、
同時に
関わっていた著名人も
大変なバッシングを受けました。

③カリスマ美容室のステマ疑惑
2021年、
テレビ局のアナウンサーが
カリスマ美容室と呼ばれる有名美容室で
料金を支払わず
ヘアカットサービスとの引き換えに
カット後の写真をSNSに投稿

していたことが発覚。
これがステマに該当するのでは
と批判が挙がったものです。
※当時、ステマの該当性と並行して、
 倫理違反の該当性も議論が高まりました。
 ⇒
朝日新聞の記事

③アナ雪2レビューツイート
2019年、
ディズニーアニメーションの映画公開
にあたって、
試写会に招待され鑑賞したクリエイターが
感想を描いたPR漫画が複数一斉に
SNSに投稿
されましたが、
その投稿をPRと明記しなかったこと
一斉投稿の不自然さ

が批判を呼び、
配給元が謝罪したものです。
※配給元は、
 クリエイターに対してPR表記を依頼予定
 であったものの、
 コミュニケーションミスであった
 との説明をしています。
 ⇒
ウォルト・ディズニー・ジャパン社のお詫び掲載
 
また、もうひとつ注意したい点としては、
この形式の広告には
報酬の有無を問わない

ということです。
無報酬で宣伝したといっても、
法律違反には変わりはありません。

一方、次のようなものは、
ステマの対象とはみなされない
と考えられています。






【認識が高まるステマの不法性】

このように
社会問題と認識はされたものの、
これまでの法律では
ステマ自体を禁止するルールがなく、

ステマを広告戦略として活用する企業
が多く現れ、
消費者のクレームが後を絶ちませんでした。
また、
OECD加盟国(名目GDP上位9か国)のなかで、
ステマに対する規制がないのは日本だけ

であったことも、問題視されていました。

こうしたながれを受けて、
消費者庁は有識者検討会で
ステマの実態や規制について議論を重ねた結果
運用基準の策定を進め、
今年の3月28日には
ステマを景品表示法上の不当表示対象
とすることを公表

今年10月からいよいよ、
一般消費者が事業者の表示であることを
判別することが困難である表示
の規制が本格稼働
します。
消費者庁の規制運用基準

また、
口コミサイトやSNSの運営会社側でも
徐々に自主規制の傾向がみられ
ステマ防止のために
広告案件へのハッシュタグ表示
タイアップ投稿機能の装備

など、
広告であることを明示した投稿を
うながしています。




【景品表示法における不当表示】

ステマ規制の中核になる法律として
欠かせないのが、
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)
です。

景品表示法とは、
消費者がより良い商品・サービスを
自主的かつ合理的に選べる環境を
守ることを目的とする法律で、
商品・サービスの提供事業者に対する規制
を定めています。



景品表示法において規制すべき不当表示は、
次の3種類に分けられます。



事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
(不当景品類及び不当表示防止法第5条)


景品表示法での違反表示に該当する場合、
消費者庁より
表示によって一般消費者に与えた誤認の排除
再発防止策の実施
今後同様の違反行為を行わないことの命令

などの措置命令が出され、
場合によっては
課徴金の納付
を命じられることもあります。
また、法律違反の指摘によって
運営会社や事業者は
ペナルティ対応に追われ、
時間や労力のロスにもつながるでしょう。




【10月から!ステマ規制の内容】

10月以降に規制対象になるステマは
広告であることを明記しない
不当表示された広告
として
措置命令と公表の対象になります。
消費者庁:ステマ規制の運用基準

規制対象者は事業者(広告主)であり、
実際に商材に対して
紹介や口コミなどをおこなった
インフルエンサーや著名人などは
対象とはなりません。

※政府は、
 ステマ規制を運用してみて
 もし解決できない問題がある場合は
 見直したい、と見解を述べています。
 ⇒
日経新聞の記事
  
規制対象の広告表示について
さらに掘り下げてみると、

事業者が自己の供給する商品or役務の取引
についておこなう表示であって、
一般消費者が当該表示であることの判別が
困難と認められるもの


つまり、
消費者庁が総合的にチェックそた結果、
次の2つに該当すればステマにあたると
判断されるおそれがあります。



措置命令を受けた
広告の依頼主である事業者は、
その名を
消費者庁や都道府県のホームページで公表

され、
景品表示法上の不当表示をおこなった旨を
日刊新聞紙への掲載
するなどして
周知徹底を図る必要があります。
また、
2年以下の懲役または300万円以下の罰金
が科されます。
※課徴金の納付対象は、
 優良誤認表示及び有利誤認表示のみ
 であるため、
 ステマ規制違反については
 課徴金が課されません(景品表示法8条)。





【規制にあたっての対策】

来たるステマ規制の措置対象とならないよう、
広告主や商材を展開する事業者としての
対策をピックアップしてみました。

①自社広告のチェック
事業者は
規制がスタートする10月までに
自社広告がステマに該当しないかを
チェックすべきでしょう。
規制対象となる可能性が高い広告がある場合、
その広告の中止
広告であることを明記するなどの修正
などを検討しましょう。

②SNSでの他者投稿
著名人やインフルエンサーなどが
自社商材に関連する投稿をおこなった場合、
たとえば、広告主と投稿者の間に
明確な依頼がない場合であっても、
投稿者が何らかの対価を受けられる
とうな関係にある場合
は、
投稿者が自主的な意思の投稿とは認められず
ステマ規制の対象となる
可能性があります。
この場合は、
投稿の削除や修正
広告である旨の追加コメント
をおこなうほか、
事前に投稿者と
情報発信における契約を結んでおく

ことも有効です。
⇒当事務所までご相談ください。

③関係者の投稿
実際に商材の企画や開発担当、
広報スタッフや関係会社などが
販売促進を目的として開設したブログなどで
商材の紹介や「使ってみた」などのレビュー
を投稿することがあります。
この場合、
事業者が表示内容を明確に指示・依頼をしなくても、
第三者が事業者の意向を汲んだ表示内容に
せざるを得ないような状況
があれば
広告表示と判断され、また、
景品表示法上の、

事業者と一定の関係性があり
事業者と一体と認められる従業員や
事業者の子会社等の従業員がおこなった
事業者の商品or役務に関する表示


にも該当します。
事業者のサイトやアカウントでの投稿は、
消費者がそれを事業者の表示と判断できるため
問題ありませんが、
もし投稿するスタッフが
プライベートのSNSアカウント、
それらを装ったアカウントなどで
投稿をおこなう場合などは、
十分に注意が必要です。
この点は、
秘密保持契約などを結ぶ
投稿内容は事業者の表示であることを明記
(ハッシュタグ付け、広告ですとの文言表示)

をおこなうべきと考えます。
※秘密保持契約については、
 以前のコラムで詳しくご紹介しています。
 ⇒
こちら

また投稿上での表示においては、
一般消費者がわかりやすい表示
にすることが重要ですので、
たとえば、
「広告」と記載しながら
「これは第三者としての感想です。」
といった記載で判断に迷う投稿
認識できない短時間・認識しにくい箇所で
事業者と表示
一般消費者側が認識できない事業者表示
事業者表示であることを
ほかの情報に紛れ込ませる
(大量ハッシュタグの中に
 「#広告」などを紛れ込ませる)

といったものは、ステマ規制対象となる
ことに注意しましょう。




【現在進行のマーケ対応「ギフティング」】

SNSを活用した
ギフティングという
インフルエンサーマーケティングがあります。
ギフティングとは、
事業者がインフルエンサーに対して
自社商品のサンプルを提供
して
商品の使用感などを
SNSユーザーに向けて宣伝してもらう

ものです。

このギフティングもまた、

事業者が第三者に対して
SNSを通じた表示をおこなうことを
依頼しつつ、
自商品or役務について表示してもらうこと
を目的に、
当該商品or役務を無償で提供し、
その提供を受けた当該第三者が
当該事業者の方針や内容に沿った表示
をおこなうなど、
客観的な状況に基づき、
当該表示内容が
当該第三者の自主的な意思によるものとは
認められない場合


の広告表示に該当します。

つまり、

広告主側からインフルエンサーに
SNS投稿の依頼があった
広告主の広告が投稿目的
結果的にインフルエンサーが
広告主の意向に沿って投稿した
客観的にみて
インフルエンサーの自主的な意思の投稿
とは認められない


にあてはまる
ギフティング関連の投稿は
ステマ規制対象となります。

これを反対に解釈すると、

広告主が
広告目的をもってギフティングしても
インフルエンサーにSNS投稿の依頼をしない
投稿内容について一切関与しない
インフルエンサーが自主的な意思でした投稿


であれば、規制対象にはならない
と考えることができるでしょう。




【クリーンな広告表示で事業展開を】

いよいよこの秋から始まる、ステマ規制。
これまでも、
ネットでのテマ拡散などの法律違反は
大きな問題となっていましたが、
この規制を契機として
リーガルチェックの必要性も
ますます増加しています。

措置命令対象と指摘されれば
多大なペナルティや労力がかかり、
企業の信用やイメージに対するダメージ
も大きいでしょう。
様々な法律の規制を踏まえた上で、
政府が公表した運用基準を参考にしながら、
違反広告宣伝を未然に防ぐためにも、
契約プロセスを充実させたいところです。

WINDS行政書士事務所では、
事業者の皆さまが法律違反とならないような
契約書の立案やチェック
法務相談などのサポートをもって
ビジネスに関するリーガルリスクを分析し、
ビジネスを止めることなく
適法化を図るお手伝いをしております。
ステマ規制についても
よくわからない点やご不安な点がございましたら、
是非、当事務所へご相談ください。