【悪質ホストクラブを撃退!】風俗営業法改正2025
2025.04.24[風俗営業法]
【ナイトビジネスに激震!風営法2025改正】
こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
居酒屋さんやホストクラブ
といったナイトビジネスから、
さらにはネットカフェからゲームセンターなど
エンタメビジネスまで幅広く適用する、
風俗営業法。
ついにこの春、
法律改正案が閣議決定しました。
女性客に売掛金(ツケ払い)の名目で
多額の債務を負わせ、性売買させるなど
いわゆる悪質ホストクラブによる被害防止
がおもな目的とされ、
今後は本国会で可決
その後1ヶ月以内に施行(本格スタート)
となる見通しです。
ニュースでもこうした報道がなされ、
当事務所でも
改正内容や今後の逮捕・摘発対策
についてのご相談が増えてきています。
風俗営業許認可をサポートする立場として、
今回のコラムでは
この春から始まる改正ルール
そして事業者が注意すべきポイントなど
幅広くご紹介します。
【風営法2025改正の背景】
政府は
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
=風俗営業法の改正案を国会に提出、
2025年3月7日に閣議決定されました。
この改正案は今後
公布から1か月、一部ルールは6カ月
で施行=改正ルール本格スタート
を予定しています。
※警察庁:改正風営法提出法案
今回の改正の目的は、
悪質ホスト
匿名・流動型犯罪グループ=トクリュウ
の摘発強化
にあります。
一部のホストクラブなどは近年、
お店を利用する女性客に対して
いわゆる色恋営業を展開し、
高額な料金の売掛け=ツケによって
借金を背負わせ、その返済のために
売春などの強要
頂き女子の詐欺
立ちんぼ
といったケースが相次ぎ、
重大な問題と考えられていました。
※厚生労働省:悪質ホストクラブ対策について
さらには、
そうした女性客の売春は、
ホスト→スカウト→ソープランド
といった紹介ルートが明るみになり、
そのスカウト会社がトクリュウと認定され、
振り込め詐欺や闇バイト強盗犯らと同様に
警察の摘発対象となりました。
※警察白書:匿名・流動型犯罪グループ動向と当局取組
このような流れから
悪質ホスト対策とスカウト資金源の断絶
をすべく、
今回の改正につながっています。
【公表!風営法2025改正の内容】
今回の風俗営業法改正は、
次の4点が重要ポイントとなります。
※衆議院:風俗営業法改正法律案
①接待飲食営業遵守事項・禁止行為追加
風俗営業1号や深夜酒類提供飲食店営業
が中心となる、接待飲食営業においては、
法律的遵守事項と違反ペナルティが強化
されます。
具体的な内容としては、
お店の利用料金において
利用客が誤認するような虚偽説明
利用客の恋愛感情などに付け込み
飲食などさせる色恋営業
そもそも利用客がオーダーしていないのに
キャストが勝手にオーダーするなどして
飲食提供し利用客を困惑させる
などを禁止事項として規定し、
違反すると公安委員会が営業停止を命じる
ことができるようになります。
※1号営業をはじめとする
風俗営業カテゴリーとその店舗形態は
こちらのページでご紹介しています。
※ガールズ/ボーイズバー、コンカフェなど
におけり「接待」も、対象となります。
※「接待」の定義については、
こちらのコラムでご紹介しています。
また、該当店舗営業者には、
利用客が支払能力面から
不相当に高額債務(=ツケ)を負担しないよう
必要な措置を講ずる
ことが義務づけられ、
さらには利用(特に女性)客に対して
オーダーや利用料金の支払いなどを目的として
威迫、売春(海外含む)、性風俗店勤務、AV出演
などの要求を禁止
違反者に対するペナルティも設定されます。
(客の正常な判断を著しく阻害する行為の規制)
第2条第1項第一号の営業を営む風俗営業者は、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。
第17条に規定する料金について、事実に相違する説明をし、又は客を誤認させるような説明をすること。
客が、接客従業者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該接客従業者も当該客に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、次に掲げる行為により当該客を困惑させ、それによって遊興又は飲食をさせること。
イ 当該客が遊興又は飲食をしなければ当該接客従業者との関係が破綻することになる旨を告げること。
ロ 当該接客従業者がその意に反して受ける降格、配置転換その他の業務上の不利益を回避するためには、当該客が遊興又は飲食をすることが必要不可欠である旨を告げること。
客が注文その他の遊興又は飲食の提供を受ける旨の意思表示(第22条の2第1号において「注文等」という。)をする前に、遊興又は飲食の全部又は一部を提供することにより当該客を困惑させ、それによって当該遊興をさせ、若しくはしたものとさせ、又は当該飲食をさせること。
(風営法第18条の3)
第二条第一項第一号の営業を営む者は、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。
一 客に注文等をさせ、又は当該営業に係る料金の支払その他の財産上の給付若しくは財産の預託若しくはこれらに充てるために行われた金銭の借入れ(これと同様の経済的性質を有するものを含む。)に係る債務の弁済(次号において「料金の支払等」という。)をさせる目的で、当該客を威迫して困惑させること。
二 客に対し、威迫し、又は誘惑して、料金の支払等のために当該客が次に掲げる行為により金銭その他の財産を得ることを要求すること。
イ 売春防止法その他の法令に違反する行為をすること。
ロ 対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交類似行為等(性交類似行為をし、又は他人の性的好奇心を満たす目的で、当該他人の性器等(性器、肛(こう)門又は乳首をいう。以下ロにおいて同じ。)を触り、若しくは当該他人に自己の性器等を触らせることをいう。)をすること。
ハ 第二条第六項第一号若しくは第二号又は第七項第一号の営業において異性の客に接触する役務を提供する業務に従事すること。
ニ 性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律(令和四年法律第七十八号)第二条第三項に規定する性行為映像制作物への出演をすること。
ホ 外国において売春をすること。
(風俗営業法第22条の2)
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1 第22条の2の規定に違反したとき。
(風営法第53条)
②性風俗店によるスカウトバック禁止
ソープランドやデリヘル、ハコヘル
などをはじめとする性風俗関連特殊営業者は、
店舗キャスト(風俗嬢、風俗セラピスト)
の紹介を受けた場合の
対価となる金銭などの利益提供が禁止
されます。
※性風俗関連特殊営業をはじめとする
風俗営業カテゴリーとその店舗形態は
こちらのページでご紹介しています。
この背景としては、
悪質ホストと利用女性客の関係
が挙げられます。
たとえば、
女性客がホストクラブを利用し、
その料金をお店に売掛け(ツケ)にする
ことをお願いするとします。
こうした
女性客のツケをホストが回収するため
女性客に性風俗店に勤務させる
というケースが多発
しているのが事実です。
さらにこのケースで、
ホストがスカウトに性風俗店への紹介を依頼し
その女性客をキャスト候補として
スカウトから紹介を受けた性風俗店が
紹介料を支払う、
いわゆるスカウトバックが存在、
法規制をかいくぐって常態化している
ことも問題とみられていました。
※職業安定法上、
スカウトバックは罰則対象です。
今回の改正では
こうした資金源を断つべく、
スカウトバックルールを全面禁止
するとともに、
違反者に対しては
6か月以下の懲役or100万円以下の罰金
という重いペナルティを適用、
これら行為が発覚した場合は
組織犯罪処罰法が定める犯罪収益隠匿罪
に問われます。
※紹介料でなく、
紹介者に対する給与上乗せ
別団体や第三者を通した紹介広告宣伝費など
も、この改正ルールに抵触します。
第2条第6項第1号又は第2号の営業を営む者は、営業所で異性の客に接触する役務を提供する業務に従事しようとする者の紹介を受けた場合において、当該紹介をした者又は第三者に対し、当該紹介の対価として金銭その他の財産上の利益を提供し、又は第三者をして提供させてはならない。
(風俗営業法第28条13)
③無許可営業に対する罰則強化
改正ルールでは
無許可営業者に対するペナルティが
拘禁刑 :2年以下⇒5年以下
個人罰金刑:200万円以下⇒1,000万円以下
法人罰金刑:200万円以下⇒3億円以下
と、さらに厳しくなります。
※関連売上においては
組織犯罪処罰処罰法上の犯罪収益として
没収や追徴が科されることもあります。
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1 第3条第1項の規定に違反して同項の許可を受けないで風俗営業を営んだとき。
2 偽りその他不正の手段により第3条第1項の許可又は第7条第1項、第7条の2第1項若しくは第7条の3第1項の承認を受けたとき。
3 第11条の規定に違反したとき。
4 第26条、第30条、第31条の5第1項若しくは第2項又は第31条の6第2項第2号若しくは第3号の規定による公安委員会の処分に違反したとき。
5 第28条第1項(第31条の3第2項の規定により適用する場合を含む。)の規定に違反したとき。
6 第28条第2項(第31条の3第2項の規定により適用する場合を含む。)の規定に基づく都道府県の条例の規定に違反したとき。
(風営法第49条)
この罰則強化は
悪質ホストの存在が発端となり、
1,000万円、1億円プレイヤーホスト
をラインナップするホストクラブの高額売上
と比較すると、
現行のペナルティはゆる過ぎるのではないか
という意見から実現するものです。
罰金額の引き上げレベルが各段な点からも
政府や当局の取り締まりの本気度がわかりますね。
なお、
このルールは風俗営業者が対象であるため、
規模を問わず、
ホストクラブ以外の
キャバクラ、スナック、コンカフェ
ガールズ/ボーイズバー
パチンコ店、ゲームセンター
「接待」をする深夜酒類提供飲食店営業者
にも例外なく適用されます。
※風俗営業に該当する店舗形態については、
こちらのページでご紹介しています。
一方、
「風俗営業」から外れる、
性風俗関連特殊営業
(ソープランド、ハコヘル、デリヘルなど)
は対象外となります。
④不適格風俗営業者の排除
風俗営業を展開するうえでは、
人的・営業所的な欠格事由が存在し、
該当者は風俗営業が認められません。
<警視庁:風俗営業等欠格事由>
ところがこれに対して、
一部のホストクラブグループ店舗などで
営業許可取り消し処分を避けるべく
処分前に自主的な風俗営業許可返納
グループ店舗とは別名義で実質的営業再開
といった事案が散見されました。
こうした、
行政処分逃れ防止を防ぐ目的で
欠格事由の範囲をさらに拡大
することになりました。
拡大対象の欠格事由者は以下となります。
第4条第1項中第7号を第8号とし、第6号の次に次の一号を加える。
七 当該許可を受けようとする者(法人に限る。イ及びハにおいて同じ。)と密接な関係を有する次に掲げる法人が第26条第1項の規定により風俗営業の許可を取り消され、当該取消しの日から起算して5年を経過しない者である者
イ 当該許可を受けようとする者の株式の所有その他の事由を通じて当該許可を受けようとする者の事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの(ロにおいて「親会社等」という。)
ロ 親会社等が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの
ハ 当該許可を受けようとする者が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの
第4条第1項に次の1号を加える。
13 第三号に該当する者が出資、融資、取引その他の関係を通じてその事業活動に支配的な影響力を有する者
(風営法改正案)
もし
風俗営業者が
許可取り消し処分を受けた場合は
5年間営業が認められなくなる
処分直前に店舗を自主クローズしても
処分逃れ行為として認められない
さらにはグループ店舗も同罪
といった、
非常に厳しいルールであることが
わかっていただけるでしょう。
【ここも注意!改正関連重要ポイント】
ご紹介した4つの改正点以外にも、
私が行政書士として
風俗営業をおこなう皆さまに
ご注意頂きたいと考えるポイントを
まとめてみました。
是非、ご参考ください。
①全般的な風俗営業が対象
今回の改正の発端となっている事案は
ホストクラブとその利用客が当事者
ではありますが、
実際の改正法律案には
「ホストクラブ」などの具体的な店舗形態
に限定、狙い撃ちにしているわけではなく、
その適用対象は風俗営業全般に渡る
ことを認識し、
なんとなく営業できそう
などと楽観視することなく、
合法的な営業をおこなうことが大切です。
②スカウトバックの適用対象
改正点②でご紹介した
スカウトバック禁止ルールは、
性風俗店が対象となっていますが、
そのきっかけとなり得る
ホスト(クラブ)やキャバクラ(嬢)は
規制対象に含まれていません。
この点は、風俗営業者として
正しく最新の法ルールを十分に把握したうえで
事業者単位で従業員に対して
教育、指導していくことが望まれます。
③「ツケ」そのものに対する対応
今回の改正上、重要要素となった
「ツケ」自体は規制対象とはなりません
でした。
ただ、「ツケ」を肯定しているわけではなく、
実際にこうした未払飲食料金の支払いを促すため
ご紹介したような、
「支払わないなら実家や勤務先へ連絡する」
などの脅し
怖がらせや誘惑による売春(海外売春を含む)
性風俗店勤務、AV出演などの要求
といった行為が禁止事項となっていますので、
十分に注意したいところです。
④禁止エリア内メンズエステも営業禁止
改正ポイントとして
もうひとつお伝えしたいのが、
禁止区域内でのメンズエステ営業禁止
です。
いわゆるハコ(店舗)型メンズエステは
かつてマンションやアパートなどの一室を使って
未届出の状態での営業が散見されました。
その営業目的はあくまで
エステやマッサージといった施術であり、
性風俗店舗ではないという建前で、
風俗店営業禁止エリアで営業が行われている。
現行ルールでは、
改正前から
営業店舗を除いたほとんどのエリアで
新たな店舗型風俗店の営業は禁止されている
ことに加え、
今回の改正で、こうした違法エステ店も
罰則強化の対象になっていることを
十分に認識のうえ、対応していくべきと考えます。
【最新ルールで適法営業=ナイトビジネスの活性化】
風俗営業法は今年、
近年類を見ないレベルで大きな改正を迎えます。
営業方法や利用客へのアプローチも
見直しをせまられるほど
重要なルールがラインナップされており、
改正点に該当する、
またはギリギリのところで営業を続ける
事業者に対しては今後、
ペナルティが科せられるだけでなく
世論の目も厳しく向けられることは間違いでしょう。
事業者の皆さまは、
最新の法ルールを正しく把握し、
適法な営業展開と事業計画を立てることを
心掛けていくことをおすすめします。
この改正で、
自分の店の営業ってどうなんだろう?
法令順守徹底して営業したいので相談したい
どんなことがペナルティになっちゃうの?
などのご相談、サポートご依頼をご検討の
事業者さま。
風営法、警察関連の許認可手続きサポート
実績豊富なWINDS行政書士事務所が
ご相談、ご依頼に対応しますので、ご連絡ください。