コラム

【知らないと危険】外国人の不法就労助長罪

2022.06.08[VISA]





【外国人雇用のリスク管理は必須】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。

日本で働く外国人の数は年々増加しています。
厚生労働省の調査によると、
令和2年10月末時点の外国人労働者数は
約173万人となっています。
2008年以降も増加を続けており、
コロナ禍にある去年も横ばいにつける勢いです。
外国人のマンパワーや資質が
日本の社会で認められている

という証でもありますね。

<厚生労働省:在留外国人労働者数の推移>




外国人労働者の評価が上がる一方、
雇用においては
事業者側で気を付けておくべき点があり、
使用者としての責任も当然発生します。

これを怠った場合に、問われるリスクが高いのが、
不法就労助長罪です。

2007年より
外国人雇用状況の届出が実施されるなど
法整備もととのってきている現在、
近年では
不法就労の摘発事例も少なくなく、
事業者はもはや
外国人の雇用ルールを知らなかったでは
通用しない場面が多くなりました。
雇用者としての立場から
対応策はマストで把握すべきと考えます。




【不法就労とは】

不法就労助長罪という言葉にもある
不法就労とは、

本来持っていなければならない
就労VISAを持っていない外国人が
日本で仕事をして収入を得ること


です。

外国人の不法就労が発覚した場合、
外国人本人はもちろんのこと、
雇用した事業者も罪に問われる
可能性が高まります。


これまで発覚した不法就労の事例は、
大きく次の4パターンに分けられます。

①短期滞在VISAでの就労
そもそも、短期滞在VISAというのは、
観光や研修
ビジネス上の訪問や出張を目的
として日本にショートステイできるVISA
で、
在留期限はMAXで90日間と限られています。
このVISAで日本に在留する外国人は、
報酬を得る活動がNGとなっており、
当然仕事はできません。
これに反して、
安易にお手伝いを頼み、お金を渡す行為をする
などは、不法就労にあたります。

以前、北海道では、
ゲストハウスの経営者が
外国人観光客に対して、
宿泊料金をタダにしてあげる代わりに
ベッドメーキングや簡単な仕事をさせる
「フリーアコモデーション」をおこない、
逮捕事例があります。

⓶有効VISAなし
外国人の就労条件として
1番にあげられるのはやはり、
有効なVISAを持っている
です。
これに反して、たとえば、
不正入国をしたり、
在留期限切れ
強制送還が決まっている

などの状態で日本で働くことは、
不法就労にあたり、
密入国者にいたっては
母国への強制送還対象となります。

在留期限が1日でも切れている外国人は
不法滞在者となりますので、
当然ながら雇うことはNGです。

⓶非就労VISA+特別許可なし
たとえば、
留学VISAや家族滞在VISAなどは、
本来仕事を目的として在留しない、
非就労VISAであるため、
フルタイムの仕事ができません。

非就労VISAを持つ外国人が
報酬を得る手段としては、
資格外活動許可が必要です。

この点で特に注意すべきなのが、
留学生です。
留学生は、勉強や学生生活が在留目的ですので
アルバイト就労時間の制があります。
この制限を守らずに仕事をして報酬を得ると、
その時点で
規定就労時間を超えた就業(オーバーワーク)

として、不法就労にあたります。
また、
ある事業者が
就業時間の制限を守って就業させたとしても、
留学生がほかの事業者のアルバイトを掛け持ちし
結果、オーバーワークにつながった

という事例も見受けられ、
実際に当事務所でも
多くのご相談を受けています。
※難民認定を申請中の外国人も
 就労には許可が必要です。

資格外活動VISAについては、
 以前のコラムでも詳しくご紹介しています。
 ⇒
こちら

④就業内容とVISAのアンマッチ
就労VISAは、
職業によって種類がカテゴライズされ、
できる業務内容も定められています。
また、
同じ業務であったとしても
就業すべき事業所から簡単に異動させ、
違う業務をさせることができません。

※VISAの種類と職業については、
 
こちらでご紹介しています。

このように就労VISAを持つ外国人は、
持っている就労VISA要件にフィットした仕事
をしなければなりませんが、
これに反して、たとえば、
シェフであるのに英会話講師として働く
本業がオフィスワークなのに現場作業をする
などは、
不法就労にあたります。

ただ一方、
就労VISAに合わない仕事であったとしても、
たとえば
ボランティアなど
報酬を受けず
就業先での業務にも影響しない作業

は、不法就労にはあたりません。





【不法就労助長罪とは】

出入国管理及び難民認定法上、
不法就労助長罪
次のように定義されています。

第73条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、
3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、
またはこれを併科する
1 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた
2 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた
3 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあっせんした


懲役を科せられる可能性、
また罰金額が大きいことからも、
不法就労助長罪はかなり重い罪
と認識できますね。

事業者が高い確率で
不法就労助長罪に問われるアクションとしては、
次のようなものです。

①外国人に不法就労をあっせん
外国人に不法就労させるため
パスポートの取得や在留カードの偽造
などをあっせん
する、
いわゆる悪徳ブローカーが存在します。
これらの業者が、
あっせんを繰り返しおこなったり、
その意志があると考えられる行為をすると
不法就労助長罪の対象になります。

また、
外国人と悪徳ブローカーの仲介に入り、
紹介する
ことも、
あっせん業を繰り返しおこなう意思がある
とみなされ、同様に対象となります。

②不法就労と理解しながら雇用
たとえば、
事業者自身が優位的な立場にあるのを自覚
しながら
外国人に不法就労をはたらきかけたり、
この外国人を雇えば不法就労になる
とわかっていながら
外国人を雇って働かせた

場合は
不法就労助長罪の対象となります。

事業者が法人である場合は、
不法就労にいたるまでの経緯が悪質
と判断された場合

代表者や役員、責任者も監督責任を問われ、
処罰される

こともあります。

③不法就労のために身分証を預かる
外国人が、
その身分や出入国プロセスを証明するツール
として、パスポートがあります。
また、在留カード
日本での身分証明には欠かせないものです。
これらは本来、
外国人本人が常備していなければなりません。

これに対して、たとえば、
事業者が指示・従属の関係を利用して
外国人が不法就労から逃げたり辞めたり
しないように
外国人のパスポートを預かる

などの行為をした場合、
外国人労働者を支配下に置いた
とみなされ、不法就労助長罪となります。

ちなみに、当事務所でも
VISA申請サポートの間
お客さまのパスポートと在留カードを
お預かりすることがありますが、
この場合はお客さまに説明のうえ

預かり証を発行し、
万が一、お客さまの身分証明が必要なとき
当事務所がフォローアップする
などの配慮をしています。


④不法就労させるために宿舎などを提供
たとえば、
不法就労外国人に入国費用を払う条件を付け
宿舎などを提供する

といったことも、
外個人労働者を支配下に置く
とみなされ、
不法就労助長罪に問われます。




【不法就労助長罪に問われない対策】

事業者さまが、
不法就労助長罪に問われないようにするため
には、次のような対策が有効です。

①パスポートの確認
外国人を雇用する前に、
必ずパスポートの確認をしましょう。
パスポートには、
日本への上陸許可印(シール)が付いているか
顔写真や氏名、生年月日、国籍などが
目の前の外国人の内容と一致しているか

などを確認します。

②在留カードの確認
短期滞在VISAではない、
VISAで、中長期期間在留する外国人には、
必ず在留カードが発行されています。
雇用前に、次の点をチェックして、
在留カードが有効なことを担保しましょう。
 
◎在留期間
在留カードに記載の
在留期限が過ぎていないかを確認します。
出入国在留管理局の在留カード等番号失効番号照会
では、
在留カード番号と有効期限の照合確認が可能です。
※法務省入国管理局「在留カード等番号失効番号照会」
https://lapse-immi.moj.go.jp/ZEC/appl/e0/ZEC2/pages/FZECST011.aspx

◎カードの正規性
在留カードが偽造されたものでないことも
合わせて確認しておきたいところです。
偽造カードかどうかを見分けるアプリケーション
もありますので、
活用しましょう。
※在留カード等読取アプリケーション
在留カード等読取アプリケーション サポートページ | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

◎就労制限
在留カードには、
就労可
就労不可

といった、
就労制限の有無が記載されています。
さらに
就労不可と印字されている場合
在留カードの裏面に
「資格外活動許可」のスタンプがあるか

を確認しましょう。

<出入国在留管理庁:在留カードのチェックポイント>

③就労内容のマッチング
外国人を雇用するとき
事業者が指示する業務内容が、
その外国人の持つVISAにフィットする
こと確認しなければなりません。
万が一、
VISAにフィットしない業務をさせる場合は、
VISAの変更申請をしなければなりません。
雇用後に、不法就労であることが発覚し、
当局から調査が入る
ということにならないように気を付けましょう。

④専門家への相談
当事務所にも
就労VISAさえ持っていれば仕事できる
させることができる

というお考えの前提で
ご相談を頂くことがありますが、
法律で定められた就業内容から逸脱すると
不法就労活動となる

ことに、注意したいところです。

また、
VISAの種類によっては、
パスポートも並行してのチェックや、
アルバイトの時間管理
も求められますので、

「VISAがあるか」
よりも、
「外国人をどのように雇用、管理するか」


という視点を重視することが、大切です。

外国人が就労VISAを持っていても、
事業者が考える
外国人人材のキャリアプラン次第で
不法就労活動に陥るおそれもあり、
不法就労助長罪に問われるリスクが残っています。

外国人雇用ルールを正しく理解する意味でも、
当事務所のようなVISAに詳しい専門家を活用
することも、
コンプライアンス上有効な手段といえるでしょう。




【外国人の雇用は正しく慎重に】

日本は変異種のニュースが続くものの、
感染者数も収まりをみせ
ウイズコロナの時代に入りました。
このままコロナが終息すれば、
インバウンドも再び増加傾向となる可能性は高いです。

事業者が外国人雇用ルールを
あいまいなままで理解し
ひとつのボタンの掛け違いの結果、
不法就労が発生し、
不法就労助長罪に問われると、
大きな法的、社会的責任を負うことになります。

「まさかこんなことになるなんて」

と後悔することがないように、
外国人雇用対策を十分におこなう
ことが必要です。

はじめて外国人の雇用を検討中
外国人スタッフが増え、現在も採用が続く

そんな事業者の皆さま。

WINDS行政書士事務所は、
外国人雇用やVISAの手続き、プロセスについて
雇用される前段階でVISA取得をまじえて、
外国人雇用からキャリアアップにおいても
幅広くご相談に応じます。