コラム

【気を付けて!】外国人の強制送還

2022.09.14[VISA]





【外国人が日本にいられなくなる?】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
日本に在留している外国人が
法律違反をした場合、
VISA申請をしても許可が下りなかったり、
日本から強制送還させられることがあります。
実際にあってはならないことですよね。

強制送還の決定を受けた外国人が
その生活や仕事の基盤を日本に持っていた場合
退去のために
多大な時間と労力を費やすことになり
心身や経済面でのダメージは計り知れません。

強制送還はどのような理由で決定されるのか。
もしその決定を受けた場合、
どのようなアクションをすべきか、できるのか。
困ったときの備えとして
知っておくことも大切です。




【退去強制とは】

出入国管理及び難民認定法(=入管法)
に定義されている
外国人の強制送還制度は、
正式には、
退去強制または国外退去処分
と呼ばれています。

退去強制は、
退去強制事由に該当する外国人が
出入国在留管理庁によって
日本に在留することが好ましくないと
最終的に判断された場合、
行政手続きにしたがって
日本のエリアから強制的に退去させられる
ものです。

退去強制の特徴としては、
通常の行政刑罰とは違い、
外国人の違反事実を
故意(=わざと)過失(=うっかり)
の有無に関係なく

退去強制事由の該当性を判断される

という側面があります。

VISAの中には、
特別永住者VISAというものもありますが、
これに該当する外国人は、
内乱罪や外観誘致罪などの
非常に重い罪を犯したり、
無期または7年以上の懲役または禁錮刑
さらにその犯罪行為により
日本の重大な利益を害したと
認定される場合
にしか退去強制処分を受けない

という特例措置が認められています。
※外交官や領事官、
 駐日アメリカ軍属者などは
 別のスキームによって
 出国手続きがとられます。





【強制送還における法的判断】

過去の裁判においては
退去強制における代表的な判例が存在します。

その裁判で導き出された国の方針は、

外国人は、わが国に入国する自由はもちろん、在留の権利ないし引き続き在留することを要求し得る権利を憲法上保障されるものではない。
(昭五三・10・四最高裁大(行)判決、刑集一一・六・一六六三)


というものでした。

この判例から、

在留外国人の中から
日本の在留を許す者
日本から強制送還させる者
の判断においては、
国が非常に強いジャッジを行使できる


ことをあらわしています。

しかし、同時に憲法では
基本的人権の尊重をを唱えていることから
日本に長年に在留している外国人を
明確な理由なしに追放させることは、
よほどの事情がないかぎり、ありません。


合法的にこの規約の締約国の領城内にいる外国人は、法律に基づいて行われた決定によってのみ当該領域から追放することができる。
国の安全のためのやむを得ない理由がある場合を除くほか、当該外国人は、自己の追放に反対する理由を提示すること及び権限のある機関又はその機関が特に指名する者によって自己の事案が審査されることが認められるものとし、このためにその機関又はその者に対する代理人の出頭が認められる。
(国際人権B規約第13条 1966年国連採択・1976年条約発効)


ちなみに、この規約のなかの
法律に基づいて行われた決定が、
退去強制手続き
その結果である退去強制命令にあたります。




【退去強制に該当する外国人】

退去強制事由は、
大きく次の8つにカテゴライズされます。
(入管法第24条)



①不法入国者
不法入国者に該当する代表的なパターンは、
有効なパスポートを持たずに
日本に入国する外国人
です。
そのほか、
外国人が他人のパスポートを使用したり
偽造パスポートで入国する外国人
も、これに該当します。

②不法上陸者
その方法や意志、事情がどうであれ、
上陸許可を受けずに日本に上陸する外国人

は不法上陸者に該当します
不法上陸者は、
 上陸許可の証印や記録なしの上陸者
 寄港地上陸や通過上陸などの
 特例上陸許可なしでの入国者
 (コンテナ船や漁船などによる密航者など)

の2パターンに分けられます。
※②に該当する者は、
 ①にも該当することになります。


③偽造・変造文書作成・提供者
外国人に不正な上陸や在留をさせるため
組織的・専門的に
にせもののパスポートや書類を
作成したり提供する外国人

がこれに該当します。
 外国人ブローカー
 偽造文書の作成者や提供者をサポートした者
 不法滞在者を働かせ利益を得た外国人事業主

が代表的な立場としてあげられます。

④(無許可)資格外活動者
本来認められている在留活動に沿わないで
収入をともなったビジネス活動や
報酬を受ける活動する外国人
が該当します。
よくあるパターンとしては
 留学生が学校に通学せず就労
 資格外活動許可なしにアルバイト
 深夜帯ににアルバイト

などがあります。
※資格外活動については、
 以前のコラムでもご紹介しています。
 ⇒
こちら

⑤オーバーステイ者
在留期限を迎えてもVISA申請をせず
在留期間をオーバーし在留する外国人

が該当します。

単純にVISA申請を忘れたり遅れたりするほか、
配偶者VISAが離婚してしまい
その後に手続きをする余裕がなかった
観光や親族訪問のために
短期滞在VISAを持っていたが
在留期限が過ぎても出国しなかった
逮捕され勾留中にVISA期限が過ぎてしまった

など
オーバーステイには様々な事例があります。

⑥犯罪関与者
住居を犯す罪、通貨や文書、有価証券偽造罪、
支い用カードの電磁的記録に関する罪
印象偽造の罪、賭博及び富くじに関する罪
殺人罪、傷害罪、逮捕及び監禁罪、脅迫罪
略取・誘拐及び人身売買の罪窃盗及び強盗罪、
詐欺及び恐喝罪、盗品等に関する罪
などによって
無期または1年を超える懲役
または
禁錮に処せられた者

は、
日本での在留外国人としてふさわしくない
と判断されます。
これらの罪状が認められる場合は、
執行猶予が付されたとしても
退去強制事由にあたります。


⑦売春関係業務従事者
みずからが進んで売春すた
人身取引と関連して売春をあっせんした

という事実が認められる外国人
が該当します。

ただし、
人身取引などの因果関係から
売春などの業務に従事させられた被害者
の場合は、これに該当しません。

※売春防止法などに違反して
 刑に処せられたかどうかは
 退去強制事由には該当しません。


⑧退去強制命令違反者
出国命令や退去強制命令を
受けているのにも関わらず
日本から退去せず在留し続ける外国人

が該当します。

これら8カテゴリーに該当する外国人は
原則、退去強制手続きを受け
日本から退去しなければなりません。

※日本だけでなく、海外諸国でも
 入国拒否や退去強制の判断は
 国際法上の一般原則として
 各国の裁量権に任されています。


ちなみに、
   永住者VISA
   配偶者VISA
   定住者VISA

などを持って在留する外国人の場合は、
退去強制事由にあたるかの判断が異なる
場合があります。




【退去強制手続きのながれ】

退去強制事由に該当する外国人は
日本への在留を否定され、
強制送還の行政処分を受けます。

強制送還の決定が下されるまでには、
違反調査や口頭審理、裁決にいたるまで
審査手続がおこなわれます。

<出入国在留管理庁:退去強制手続きフローチャート>


①違反調査(PHASE1)
退去強制事由に該当容疑がある
外国人の存在が発覚した場合、
第1段階として
入国警備官による違反調査
がおこなわれます。

②収容
①の結果、
外国人が退去強制事由に該当容疑に足りる
相当の理由がある場合は
収容施設に収容されます。
このときに発布されるのが、
収容令書です。
収容令書は入国警備官が請求し、
主任審査官が発布します。

ただし、
外国人が
退去強制事由に該当しないことに足りる
相当の理由があるときには
収容はされません。


収容令書による収容期間は30日以内
ですが、
主任審査官が
やむを得ない事由があると認める場合
さらに30日間(=MAX60日)まで延長措置

をとることができます。

収容された場合、
外国人本人
または
その代理人、配偶者、親族などは
仮放免の申請をすることができます。

③違反審査(PHASE2)
退去強制事由の対象事件は、
入国審査官に引き継がれ、
今度は
入国審査官による違反審査
がおこなわれます。

外国人が刑事処分などによって
身柄を拘束されている
(未決勾留,服役中など)とき、
収容令書により身柄を拘束しないときでも
退去強制手続を行うことができます。


このフェーズでおこなわれる違反審査の結果、
 退去強制
 出国命令
 退去強制に該当しない(=在留許可)

のいずれかの処分が確定します。

④口頭審理
外国人が
退去強制対象者に該当と認定され、
認定に異議を唱えたい
または
意義はないが
日本での在留を特別に認めてほしい場合
は、
特別審理官による口頭審理
を請求することができます。
口頭審理においては、
容疑者またはその代理人に証拠の提出要請や、
証人に対して尋問や証言要請をおこない、
国の認定に誤りがないかどうかを審理し、
再度判定がなされます。
容疑のかかった外国人は
特別審理官の許可を受ければ、
親族や知人から1名の立会い

ができます。

もしも、この判定で、
認定の誤りまたは出国命令
という結果になった場合は、
特別審理官は外国人を収容から解放できます。

⑤異議の申し出
外国人が④の結果でも納得がいかず
異議を唱えた場合
日本での在留を切に希望する場合
は、
異議の申し出をすることができます。

異議の申し出は、
④の判定の通知を受けた日から3日以内に
不服事由を記載した書面を
入国審査官でも最上級のポジションである
主任審査官に提出します。
※主任審査官は法務大臣が指定します。

⑥法務大臣の決裁
⑤の最終判定は、
いよいよ法務大臣に委ねられます。
法務大臣は⑤の申出を受理し、
事件の一連の事件記録をひと通り確認して
裁決を下します。
※法務大臣が
 再度の取り調べをすることはありません。

裁決国税不服審判所が下す結果
 であるのに対して、
 裁判所が下す結果の判決
 最高裁判所の判決の積み重ねである判例
 とはレベル感が異なります。
 (⇒裁決<判決<判例


これにより、
 退去強制
 在留特別許可
 非認定(=放免)

のいずれかが確定します。

⑦退去強制令書の発行
⑥で
退去強制の裁決処分が決定した場合は
退去強制令書という命令が発行され、
強制送還が確定します。
この段階でもし
外国人が不服に感じる場合は、

再審情願という訴えかけ
または

行政訴訟の提起
をおこなうこととなります。

ちなみに、この令書が発布されたとき

退去強制対象の外国人を
すぐに強制送還できない場合、
入国警備官は、
送還が可能となる時期まで、
外国人を収容
することができます。
②の収容とは違って、

この場合の収容期間は無制限となります。
※この段階でも、
 ②と同様に仮放免の申請が可能です。


⑧強制送還
外国人は、⑦にしたがって強制送還されます。
送還先は、原則、
その外国人の国籍または市民権のある国
ですが、
これらの国に送還することができない場合は、
本人の希望を尊重し
日本への入国直前に居住していた国や
そのほかの国に送還

されることとなります。
※外国人が
 自費で自発的に退去することを希望
 入国者収容所長または主任審査官が
 外国人の希望を許可する場合は、
 本国に送還できる場合であっても
 本国以外の受け入れ国を送還先とする
 ことも可能です。(別途申請が必要)





【出国命令】

外国人の出国手続きにおいて
決定事項のひとつとして、
出国命令があります。

出国命令は強制送還とは違い、
外国人自らが
出頭または出国する意思があり
一定の条件を満たす場合

に出される命令です。

この命令制度を利用できるのは、
外国人が次のいずれにも該当する場合です。



出国命令対象者に該当する
と判断された場合、
出国命令書が交付され
15日を超えない範囲内での出国期限
が定められます。
出国命令を受けた外国人は
出国前の在留生活において
住居や行動範囲の制限そのほかの条件

が付されることがあります。

出国命令の最大の特徴は、
上陸拒否期間にあります。

原則ルールとして、
退去強制事由によって
強制送還される外国人の
上陸拒否(出国後日本に上陸NG)期間は
出国日から5年間
前歴がある者は10年間

であるところ、
出国命令を受けた外国人の
上陸拒否期間は
出国日から1年間

と短いです。

<出入国在留管理庁:退去強制と出国命令の違い>


もしも
退去強制事由に該当する外国人が
将来また在留を希望するのであれば、
この制度を進んで利用することも
選択肢のひとつ

と考えます。




【在留資格特別許可】

外国人の出国手続きにおける
もうひとつの決定事項で
在留特別許可という制度があります。

在留特別許可は、
退去強制事由に該当容疑の外国人が
以下の要件に当てはまり、
外国人の在留を特別に許可すべき事情がある
と認められる場合に、
法務大臣の裁量で
在留を特別に許可することができる
とされる制度です。


※④実子のみで、養子は含まれません。
※⑦はおおむね20年以上が目安
 と考えられています


注意すべき点としては、
「申請の結果、国が許可できる
とされている制度であることから、

要件を満たす外国人であったとしても
必ず特別許可を申請できたり
受理されるとは限らず、
申請の結果は
国の情勢や、法務大臣の裁量に委ねられる


ことを覚えておきたいところです。




【段階を踏んだ確実な手続きを】

外国人が日本で在留するにあたっては
退去強制事由にあたらない
ことが大前提となります。
しかしそれでも、
なんらかの事件やアクシデント
に関わってしまい
不幸にも強制送還という決定となった場合、
手続きにおけるフェーズと
そのフェーズに応じた対応を
冷静かつ確実におこなうことが必須です。

WINDS行政書士事務所は、
外国人の皆さまの在留サポートを
事情に合わせて承っています。
どの外国人の皆さまも
引き続き在留生活を送れることを願いつつ、
身の回りの法律問題に関連する
ご相談にも応じます。
困ったときは、プロのVISA手続きの専門家に
頼ってください。