コラム

【強制送還を免れる】在留の特別許可

2022.12.07[VISA]




【法を犯した外国人の起死回生ルール】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
外国人が在留するために必要なVISAは、
入国管理局に事前に申請して
許可を得なければなりませんが、
外国人が在留中に、
オーバーステイなどの退去強制事由を根拠に、
在留が認められないケースが、実際にあります。

退去強制事由に該当する外国人は、
原則VISAを保有することはできず
国外退去しなければなりません。

※退去強制事由については
 以前のコラムでご紹介しています。
 ⇒
こちら

しかし、この場合でも、
在留し続けることを認めるべき事情を
認められる場合は、
特別に在留が認められ、
VISAを持つことが可能です。

この場合の許可は、

在留特別許可

と呼ばれています。

この許可を満たす要件や必要書類、
実際の事例などを、詳しくご紹介します。




【在留特別許可とは】

在留特別許可とは、
退去強制事由に該当し、
本来は強制送還されるべき外国人
を対象にした特例措置で、
通常のVISA申請での
入国管理局の審査官ではなく、
法務大臣が最終ジャッジ(=裁決)
をします。

特別許可を願い出ることができる外国人は、
次の前提条件を備えていることが必要です。

①退去強制事由に該当する
在留特別許可とは、
通常のVISA審査とは違い、
退去強制事由に該当する外国人だけを
対象としている手続き
で、
法務大臣の裁量で認められることによって
非正規的に在留が認められるものです。

②口頭審理の請求をする
外国人は、
入国管理局でいくつかの審理プロセスを経て
①の該当性を
慎重かつ厳重にチェックされます。
また、
各審理におけるジャッジ担当者は
入国警備官
入国審査官
特別審査官

と、異なります。



第1段階の入国警備官による違反調査
第2段階の入国審査官による違反審査
の時点では、
在留特別許可を認めるかどうかは
判断されません。


そこで、外国人が
在留特別許可を希望する場合は、
第3段階にあたる
特別審査官による口頭審理を
認定の通知を受けた日から3日以内に
請求しなければなりません。

※口頭審理には、
 行政書士は知人として
 弁護士は代理人として
 同席することが可能です。
※口頭審理については、
 
こちらのコラムでもご紹介しています。



口頭審理では、外国人の回答や供述が、
通訳を通してすべて調書に記載され、
内容は在留特別許可の判断材料となります。
この結果、
退去強制事由に該当との認定に
誤りがあるかどうか

との判定を経て、
最終ジャッジである
法務大臣の裁決が決まることになり、

出国命令
退去強制(=強制送還)

のいずれかの判定を受けます。

ここまでの手続きが進むことではじめて、
在留特別許可を願い出るかを
検討するスタートラインにたつことになり、
もし特別許可を希望する場合は、
異議の申立てをおこないます。
※退去強制手続きのながれについては、
 以前のコラムでご紹介しています。
 ⇒
こちら




【在留特別許可の判断要素】

在留特別許可は
こうすれば特別許可される
こうなると不許可
といった明確なルールがない

あくまで法務大臣の自由な裁量で
最終ジャッジが決まるものとなります。

もともと、
日本に在留するべきではなく、
強制送還が妥当と判断されたものを
日本に在留することを認めることに
状況をひっくり返す
ことになるため、
言葉どおり、この特別な許可は、
マニュアルどおりの申請は通用しない
ことを、理解すべきでしょう。

ただ、この点に関しては
決して対策がとれないわけではなく、
出入国在留管理局からは、
特別許可が見込まれる事案を盛り込んだ
在留特別許可に係るガイドライン
が公表されており、
特別許可を受けられるかどうかを導く
要件を確認することができます。
この要件は、
特別許可を考慮する積極要素
と呼ばれています。


※④にあげられる学校は、
 朝鮮学校などの母国語教育機関は該当しません。
※⑦⑧⑨にあげているVISAとは、
 永住者VISA
 日本人の配偶者等VISA
 永住者の配偶者等VISA
 定住者VISA

 を指します。


特別許可を受けたいと思う外国人はまず、
これらの要件を満たすかを
チェックするのがよいでしょう。

また一方、
特別許可を考慮する消極要素
というものも定義しています。


※①の薬物自己使用や
 自己使用目的の単純所持
である場合、
 特別許可を得られる可能性があります。
※②は、強制的な環境での売春から
 助け出した日本人客と
 真摯な交際を経た婚姻事実
がある場合は
 特別許可の可能性があります。
※⑥にあげる例としては、
 ブローカー犯罪組織の構成員である
 などがあげられます。


ガイドラインでは、

これら積極要素と消極要素を
個別に評価して、
積極要素として考慮すべき事情が
明らかに消極要素として
考慮すべき事情を上回る場合には、
在留特別許可の方向で検討する


単に
積極要素がひとつ存在するからといって
在留特別許可の方向で検討される
というものではなく、
また、
逆に消極要素がひとつ存在するから
一切在留特別許可が検討されない
というものでもない


と説明がされていることから、

在留特別許可申請を希望する外国人は
特別許可を希望する時点で、
退去強制事由に該当している

=最初から消極要素が付いてる
 マイナスからのスタート

となり、
積極要素は、消極要素と比べて
数倍のポイント幅のハンディキャップがある

=よりたくさんの積極要素を主張すべき
とみることができます。




【在留特別許可のための必要書類】

在留特別許可は開かれたルールというわけではなく、
法務大臣の個別裁量となる手続きとなります。
そのため、
事案に応じて、地方出入国在留管理局から、
提出書類を指定されるものとそうでないもの
があります。
⇒当事務所までご相談ください。

願い出る際に提出する書類について、
申請取次の資格を持つ行政書士や弁護士
が作成することも可能

です。
ただ、ここ数年、
私がサポートをしてきた感触としては、
申請者が
自分で
手書きなどして作成した書類が
心証が良く有利になる

または
手書きで作成してくださいとの要請が多い
傾向が高まっていると感じます。

パソコンやITツールが浸透している
この令和の時代に、
わざわざ手書きで書類を作るのは
決して効率的とは言えません。
しかし、国の立場としては、

申請者が書類に手間をかけたか
在留する強い意志や熱意を持った申請か
を試している


とも、考えられます。

申請者となる外国人は
多少の時間と手間をかけてでも
審査官の心にせまる書類の作成が望まれます。

ちなみに
指定されるもの以外の書類に関しては
提出NGというわけではありませんので、
申請者にとって有利にはたらく
と思われる書類や資料があれば、
積極的に追加準備した方が良い

でしょう。




【局収容された場合の対応】

退去強制事由に該当する外国人は
手続きを経て、
退去強制令書が発布され、
退去強制となるまでの間、
出入国在留管理局に収容されることがあります。
※必ずしも収容されるわけではなく、
 在宅案件として手続きが進められる
 場合もあります。


局に収容となった場合、
外国人はその身柄を拘束されます。
身柄拘束を解くためには、
仮放免の手続を取ることができます。

ちなみに、
退去強制令書に基づく収容は
行政処分となるため
執行停止を求めた提訴も可能です。
※近年、執行停止の申し立てが
 認められた事例はほぼありません。



【再審情願】

在留特別許可を得るためには、
今まで説明したような、
退去強制事由に該当の判定に対して
異議を申し立てて願い出る

というアプローチのほかに、
退去強制令書の発布後
外国人をとりまく事情の変更
(結婚、子の出生、難病の発症など)
が生じたことを理由に、願い出る

というアプローチもあります。

この場合は、
再審情願
というアプロ―チをおこない、
情状酌量をうったえる形で、
法務大臣に裁決を委ねます。
⇒当事務所までご相談ください。




【特別許可を受けた場合のVISA】

法務大臣の裁決によって、
特別に在留許可を得られる外国人は
外国人の状況によって与えられるVISAが
次のいずれかになる傾向が高いです。

日本人や永住者と結婚していた場合
⇒日本人の配偶者等VISA
   
永住者の配偶者等VISA
配偶者がいない場合

⇒定住者VISA
近い将来帰国希望の場合

⇒特定活動VISA


実際に特別許可が認められた事例と
認められなかった最新の事例が
年に1回
出入国在留管理庁のホームページで
公表されています。
https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri01_00008.html




【外国人の長い人生を見据えて】

外国人の皆さまで、
特別な事情や理由によって、
日本から強制送還される対象になった方は、
様々な理由から、
このまま日本に残りたいと思う方にとって、
在留特別許可は
限られた条件に該当する者だけに認められる
まさに、特別なルールです。

外国人ご本人や関係者の立場から、
これまでの在留経歴だけでなく、
在留を継続できた先のライフプランも
十分に考慮したうえで
本当にこの許可を目指すべきなのか、
より良い選択肢を検討したいところです。

WINDS行政書士事務所では、
在留特別許可をはじめ、
日本におけるVISAに関するご相談
申請におけるサポートを随時承っております。
難しいと思われる条件であっても、
詳しく事情をお伺いしたうえで
最適なプランをご提案しベストを尽くします。
是非、ご相談ください。