コラム

二重国籍者のパスポートの使いかた

2022.07.13[VISA]





【二重国籍者が使うパスポート】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
滞在目的を問わず、
私たちが海外に行くときには
パスポートが必要となります。

私たちが持てるパスポートの数は
基本的にはひとつだけなのですが、
国際結婚や外国人のパートナーとの出会い
によって生まれた方は、
国籍を複数持ち合わせることがあり、
各国のルールにしたがって
複数の国籍を持つことを認められる
重国籍者となり、
パスポートもふたつ以上取得する
ということも、最近では珍しくなくなりました。

たとえば、二重国籍者が、
日本から海外へ出国するとき
また海外から日本へ帰国されるとき
持っているふたつ以上のパスポートは
どう使い分ければいいでしょうか。

わかるようで迷ってしまう、
二重国籍者のパスポートの使い方。
諸国の国籍における方針によっても
取り扱い方が違うことも多く、
渡航や帰国に備えて
あらかじめ知っておきたいルールです。
※二重国籍者による国籍選択の手続き
 については、
 当事務所のコラムでご紹介しています。
 ⇒
二重国籍者の国籍選択と手続き
 ⇒二重国籍者のメリット・デメリット



【パスポートの役割】

そもそも、パスポートとは、
どのような役割を持つのでしょうか。

パスポートとは、
日本人が海外に行ったとき
外国人が日本に来たとき
自分がなに者なのかを具体的に証明できる
身分証明書
となります。

私たちは、日本から
世界のいろいろな国に行き、滞在するために
パスポートを携帯し、提示する必要があり
渡航には欠かせないツール
であることも知られています。
外国人の皆さまも
日本に来るときには、同じ条件が付きます。

また、日本のパスポートには、
「このパスポートを持つ日本国民を
通路故障なく旅行させ、
必要な保護扶助を与えられるよう、
関係諸官に要請する。」

との外務大臣による保護要請文
が記載されています。

<外務省>パスポートが必要な場面


<パスポートの保護要請文>





【二重国籍者のパスポート】

パスポートは、
その人が持つ国籍の分だけ
発行が認められています。
日本は、血統主義を採用しているため、
持てるパスポートは
日本のパスポートだけしか認めていません

が、
アメリカなど、
重国籍が認められている国では
複数の国のパスポートも持つことができます。

二重国籍者が
在住する国を出る場合と入る場合

その在住する国のパスポートを使う
のが原則ルールとなります。

たとえば、
日本とアメリカの二重国籍者が
日本に在住し
日本から出国して
また日本に入国する場合
は、
日本のパスポートを使用します。

反対に、
日本とアメリカの二重国籍者が
アメリカに在住し
アメリカから出国して
またアメリカに入国する場合
は、
アメリカのパスポートを使用します。

アメリカのほかにも、
カナダ、オーストラリア、ドイツ
なども、
アメリカと同じルールとなります。

日本から出国した二重国籍者が
アメリカに滞在後、万が一、
アメリカのパスポートで日本に再入国すると、
日本人でありながら外国人と取り扱われ、
VISAがないという理由で不法入国
となり
罰金を科されたり、トラブルになる可能性

がありますので気を付けましょう。

今度は、
二重国籍者が
ルーツのある2つの国以外の国=
第三国
に入出国するとき

はどうでしょうか。

この場合は、
渡航する第三国のルールにもよりますが、
どちらの国のパスポートを使ってもOKで、
VISAの取得が比較的簡単な方の
国のパスポートを使
うことが一般的です。
※短期間の滞在の場合は、
 VISAが不要な国もあります。




これらの原則的なルールに対して、
居住国を出るときは
持っている国籍に関わらず
どの国のパスポートでもいいという国

もあります。
代表的なのがフランスで、
自国を含め
シェンゲン協定加盟国全体での滞在日数が
90日以内の場合
にかぎって
日本のパスポートでフランスの入出国も可能
です。
※シェンゲン協定とは
 ヨーロッパ諸国の間で出入国審査をスキップして
 自由に国境を越えることを認める協定で、
 現在26か国が加盟しています。


<外務省:欧州諸国訪問者への案内>




【二重国籍ならではの名前表記】

二重国籍者であることによって
持っているふたつのパスポートで
名前の表記が違う

ということは、よくあるケースです。

たとえば、
アメリカ人の父と日本人の母の子どもで、
二重国籍を取得している場合は、
次のようなバリエーションの違い
が考えられます。


※日本のパスポートは、
 在住国で使用のファミリーネームや
 在住国登録&日本未届のミドルネームなどを
 括弧内に併記できる制度を採用しています。
 これは世界標準ではない、
 日本オリジナルの制度です。


名前の表記が違うことになると、

問題なく入国審査をパスできるだろうか?

と、
心配する方もいるのではないでしょうか。

2か国間を往復すること自体に
特に問題になることはありませんが、
提示するパスポートは
居住国を出たときに使った
居住国のものを提示する

ことが基本となります。

ただ、
二重国籍者であるがゆえに
両方の国のパスポートの提示が
求められる可能性

もなくはありませんので、
渡航するときは
両方の国のパスポートを所持し、
もしも入国審査で求められた場合は
提示するようにしましょう。
※国や感染状況によって、
 取得しやすい国などが変わる可能性
 もあるので、フライト会社や旅行会社でも、
 提示するパスポートについて
 あらかじめ相談するとよいでしょう。





【フライト予約とパスポート】

二重国籍者がが海外へ行って
入国審査や出国審査を受けるにあたっての
注意事項がはっきりしましたが、
それ以前に、
フライトの予約をして、チケットを得ること
空港でチェックインすること

ということも必要ですね。

まず、
二重国籍者が無事に渡航するするために
気を付けたいポイントとしては

フライトチケットの名前と
チェックイン手続きで
提示するパスポートの名前が
完全一致する

⇒フライト予約した名前が
 記載されている方のパスポートを
 空港のチェックイン手続きで提示する


ことが大切となります。

たとえば、
日本に住む
日本とアメリカの二重国籍者が
アメリカに渡航する

とします。
この場合、
フライト会社側での手間をかけずに
出入国情報の整合性を合わせるため
フライト予約とチェックイン手続きには
日本のパスポートを使う

とよいでしょう。

ちなみに、
アメリカでは出国審査がなく
航空会社が出国審査を代行するシステム
をとっています。
アメリカの出入国情報の整合性が取れるよう
アメリカのパスポートも提示する必要
があります。

アメリカに渡航後、日本に帰国する
ときは、
日本のパスポートを提示し
日本人として入国審査を受ける

と良いです。
※日本国籍を持っている二重国籍者は
 通常日本への入国時に
 VISAを発給してもらうことはできません。



※在外日本領事館から
 日本国籍のある二重国籍者に対して
 日本の氏名表記でフライト手続きをするよう
 注意喚起がなされています。


<在トロント日本領事館の注意喚起>


ちなみに、
フライトチケット自体は
上陸審査の必要資料とはならない

ため、
フライトチケットと入国審査の名前の表記が
違っていても問題はありませんが、
居住国のパスポートに使用を統一する
のがベターといえます。

反対に、
アメリカに居住する
日本とアメリカの二重国籍者が
日本に渡航(=帰国)する

場合は、
アメリカのパスポートの氏名表記に合わせて
フライトを予約し
チェックイン手続きと出国審査では
アメリカのパスポートを
提示します。
日本で滞在後、アメリカに帰国するときには
日本のパスポートを提示して出国審査を
受けても、問題はありません。
ただし、
アメリカの入国審査では
アメリカのパスポートを提示
しなければならない

ことに、注意しましょう。

スムーズにフライトが予約できるかどうかは
その国の方針や感染状況によって
リアルタイムに変わり得ます。
そのため、必ず、
外務省の最新情報を確認
旅行会社のアドバイスをあおぎましょう。
※2022年7月現在、
   日本での水際対策による渡航制限
   が続いており、
    「特段の事情」があるものとして
   発給されたVISAがない限り、
   アメリカ人、カナダ人は
   日本に入国できません。

※短期滞在目的で入国したい場合は、
 VISA取得のためにERFS申請が必要です。
 以前のコラムでご紹介しております。
 ⇒こちら




【パスポートの併用はルーツを自覚するステップ】

ご紹介してきた、
二重国籍者の皆さまが渡航するときの
パスポートの使い分けを
一覧にしてみました。



スペシャルな特長を持つ二重国籍者ゆえに
フライト手続きや入出国手続きを
スムーズにするためにはひと工が必要
となりますが、
同時に、
持っているパスポートを通して
自分のアイデンティティーを改めて自覚できる
いい機会を得られる

のではないでしょうか。

海外諸国の水際対策レベルも
対応差はありますが、
ビジネスや観光で海外に出国する機会も
元に戻りつつあり、
かつ、
新規感染者数も再び増加の傾向を見せています。
海を渡って行き来を予定される方は、
引き続き感染予防を十分におこない、
快適に渡航したいですね。

WINDS行政書士事務所では、
入出国や日本在留におけるVISA
において、
現在の水際対策における最新情報をキャッチ
しつつ、
外国人を幅広くサポートしております。
どうぞお気軽にご相談ください。