コラム

【留学VISA】教育機関の「適正校の選定」

2022.07.06[VISA]





【留学生のVISAのカギを握る認定】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。

今年も新たに、
たくさんの学生さんが学校を卒業され、
また、同時に
大学や専門学校に入学をされましたね。
外国人の学生さんも
留学生として日本に在留し、
新しい学生生活を送っていることでしょう。

留学生は、留学VISAを取得することが必要
となりますが、
じつは、日本の教育機関は、
留学生たちの受け入れ、管理にあたって
政府から適正校かどうかのジャッジ
を受けていることをご存じでしたでしょうか。
このジャッジは、
留学生たちのVISA手続きや審査の結果にも
大きく影響するのです。




【メリットしかない「適正校」】

適正校とは、
出入国在留管理局が、
留学生の在留管理を適切におこなっている
と認定した教育機関

をいいます。

適正校の選定は1年に1度おこなわれ、
出入国在留管理庁が教育機関に対して、
その教育機関に在籍する外国人留学生の
在留管理の適正性を審査します。
審査の結果、適正校と認定した場合、
10月から11月頃には
適正校選定結果通知書が
教育機関に送付されます。

<適正校選定結果通知書>


適正校に選定される大きなメリットは
次の2つです。

①申請提出書類の一部スキップ
たとえば、
外国人が留学生として
初めて日本に在留するためには、
留学VISAの在留資格認定証明書
が必要となりますが、
この申請には、
留学生の立場でも次のような書類の提出を求められます。


基本的にこれらの書類は、
日本国外(留学生の母国など)で発行され、
現地の言語で作成されている
ことが考えられますが
英語以外の言語の場合は
日本語または英語の翻訳文が必要

となります。

これらの資料をすべて集め、
内容のチェックしていく作業は、
相当な手間がかかり、
入学する留学生が多ければ多いほど、
VISA申請の準備のために、
教育機関側の業務に手が回らなくなる

などの負担が懸念されます。

適正校に認定されると、
これら資料の提出が不要になり、
準備作業が軽くなりますので、
非常に大きなメリットとなります。

②長期の在留期間の付与
留学生の進学先が4年制大学であれば、
留学生は在籍期間の4年間、
留学VISAを保持しなければなりません。
しかし、付与される留学VISAの在留期間は
外国人によってさまざまであり、
途中で、在留期限が切れる前に
在留期間更新申請をしなければなりません。

留学生が付与される在留期間が少ないと、
在留期間更新申請も数回おこなう必要があり、
留学生や教育機関双方のストレスとなります。
※留学VISAの在留期間については、
 
こちらのページでご紹介しています。

これに対して、
留学先である教育機関が
適正校の認定を受けていれば、
留学生は、
MAX在留期間の2年3月が与えられます
たとえば、
4年制大学に留学する場合、
入学から卒業までに
VISA申請するのは1回だけ

で済むことになります。

また教育機関側でも、
VISAの期間更新申請の際に
在籍している留学生から
書類を求められる頻度が少なくなり、
VISA申請にかかる工数も大幅に軽減
されます。

③定数増員の実現
適正校と通知された教育機関は
生徒数を増やすことができます
たとえば、
日本語学校が生徒の在籍定数を増員する
ための条件のひとつにも、
適正校であることが明示されています。
民間の教育機関が適正校に選定されれば、
盤石な経営基盤が実現します。




【適正校にもれた教育機関】

一方、
出入国在留管理局から
適正校に選定されなかった教育機関は、
慎重審査対象校
と呼ばれ、
留学生の在留管理が
適切におこなわれていない教育機関

と判断されます。

慎重審査対象校に選定されてしまうと、
次のようなデメリットが出てきます。

①必要資料が増える
留学生が
在留資格認定証明書交付申請をおこなう際、
本来求められる書類はすべて提出する
ことが必要となります。
これは、
教育機関側でも書類準備が増える
ことが含まれます。

VISA申請における審査では
提出される資料を1件ずつ精査され、
不備があれば審査も長引き厳しくなる
と言え、さらに、
書類の追加提出を求められたり、
申請の不許可を受けてしまう可能性も上がる

ことが考えられます。

毎年の入学定員などを考慮する
教育機関としては、
入学許可を出してもVISAの取得が遅れたり
不許可となってしまうなど、
入学できないリスクは避けたいところです。

②在留期間が短い
慎重審査対象校になることによって、
留学生が得られるMAXの在留期間は
MAX1年3か月だけ
となります。
当然ながら、
すべての留学生が1年3か月の在留期間を
付与されるとは限らず、
さらに短い在留期間になってしまうこともあります。
在留期間が短ければ
在籍中にしなければならない
VISA期間更新申請の回数も増える

ことを意味します。

4年制の大学に入学する場合、
在留期間が1年しかなければ、
卒業まで3回から4回
VISA申請をしなければなりません。

この複数にわたるVISA申請の都度、
申請に必要な資料を確認したり
作成作業が発生することは
教育機関の担当者にとっては大きな手間となり、
在留期間が短いことによる
在留期限の管理負担が大きくなります。

さらに、
留学生の在留期限が短いと、
VISA申請のうっかり忘れや遅れによる
オーバーステイ(不法滞在)
のリスクも高まります。
オーバーステイの留学生が多くなると、
適正校選定基準に引っかかってしまいます。

③留学生にVISAがもらえない
3年連続で慎重審査対象校と認定されると、
在留管理の改善が認められるまでの間、
留学生への留学VISAの付与ストップとなり、
出入国在留管理庁と文部科学省は
その教育機関名を同時公表

する運用となっています。

教育機関としては、
VISA申請の資料準備の工数

在留期間の短さ
に加えて、

留学生が在留できないので受け入れNG
というデメリットも発生するので、
学校としての運営上、かなりのインパクト
があることがわかります。

ただし、
慎重審査対象校に選定されても
留学VISAの付与ストップまでに3年間の猶予
がありますので、
再度の選定に引っかからないためにも、
すぐに在籍管理を見直すべきです。




【在籍管理非適正大学】

ちなみに、教育機関が大学の場合は、
出入国在留管理庁による適正校基準のほかにも
もうひとつ、ある基準があります。
それが、
在籍管理非適正大学
です。

在籍管理非適正大学とは、
文部科学省によって、
管理状態に問題がある大学が選定されるものです。

これは、
大学による在籍管理の不備発覚がきっかけで
2019年より適正校ルールにプラスされた運用です。
産経新聞の記事

大学に、
退学者・除籍者・所在不明者が出た場合は、
その大学から文部科学省へ
報告しなければなりません。
報告を受けた文部科学省は、
その発生状況に応じて
留学生の在籍管理状況を調査し、
必要な改善指導を実施していきます。
改善指導の結果、改善が見られない大学は
在籍管理非適正大学として、
文部科学省から法務省に通告がなされます。



この在籍管理非適正大学に
選定されてしまった場合、
次のようなペナルティが発生します。



留学VISAの付与ストップは

慎重審査対象校とは違い、
3年間の猶予期間がない

ことに、注意したいところです。




【適正校の選定基準】

教育機関が適正校と認定され
得られるメリットを最大限活用するためにも、
教育機関が適正校と選定されるためには
次の3つの要件をクリアしなければなりません。

①問題生徒の在籍率5%以内
留学生の素行不良の事例は多く、
2020年以降からは
選定基準が厳格化の傾向が高くなっています。


問題生徒とは、以下のような留学生です。
このような生徒の在籍数において、
パーセンテージが明示されています。



たとえば、
100人の留学生を擁する大学の場合、
6人以上の不法残留者や
留学VISA期間更新不許可者が在籍していると、
この要件にひっかかってしまうことになり、
非常に厳しい基準であることがわかります。

②届出業務の遵守
所属機関である教育機関は、
留学生の受け入れ開始=入学時と
受け入れを終了=卒業・退学・除籍時には、
出入国在留管理局へ届け出
をおこない、
在籍状況にも問題がないことを証明
しなければなりません。

これらの届出は
最寄りの出入国在留管理局窓口に直接提出
出入国在留管理局の
在留管理情報部門届出受付担当宛に郵送
出入国管理電子届出システムでオンライン届出

のいずれかでおこないます。
※外国人がおこなうべき届出についても、
 以前のコラムで詳しくご紹介しています。
 ⇒
こちら

③適切な在籍管理
教育機関は、
在籍している留学生の在籍状況を
適切に管理しなければなりません。
適切の程度については
明確な基準が公開されていませんが、
次のような管理では、
不適切な在籍管理にあたると考えます。






【教育機関が適正校に選ばれるために】

教育機関として
在籍する留学生の適切な管理は
重要ではあり、また
当たり前におこなわれるべきと考えます。

適正校の選定基準を満たすために
できることを5つ、
ピックアップしてみました。

①留学生入学選定要件の整備
留学生が日本に在留するにあたって、
その教育機関での専攻、勉強内容とともに、
日本での生活費や学費は非常に重要な要素といえます。
教育機関は、留学生を受け入れ前後に、
学力を確認することはもちろん、
在留中における諸経費の支払いができそうかを確認したいところです。

日本人の学生さんとは違い、
留学生は、資格外活動によって
アルバイトなどの就労時間の制限があります。
入学時に経費支弁について確認することによって、
アルバイトのオーバーワークを防ぐだけでなく、
授業料の未払いによる除籍や退学のない、留学生の学生生活を守り、
ひいては不法滞在を防ぐことにもつながります。

②就学のフォローアップ
留学生にとって、勉強し生活する日本は、異国です。
違う言語が飛び交い、さまざまな文化や習慣に囲まれて
勉強と生活をしていくのは、どんなに大変か。
私自身も海外生活の経験がありますので、想像できます。
母国の学校との教育方針の違いを感じて勉強が進まない
ということも、あるかと思います。

結果、成績不良に陥り、単位が取れず、
VISAの期間更新が認められない
ということになると、
適正校選定基準に影響しますので、
できるだけそんな事態は避けたいところです。

留学生に対しては、
授業サポートやカウンセリングなどの
フォローアップの体制を準備しておくことは、
適正な在籍管理の実現、
ひいては適正校に選定されることにつながります。

③アルバイト管理
日本での在留生活のため、
アルバイトをしている留学生は多いです。
しかし、
母国にいる家族に仕送りをしたい
もっと日本での生活を楽しみたい
コロナ禍の中でも在留生活を乗り越えたい

などの理由から、
アルバイトをがんばり過ぎて
オーバーワークにつながる

という事例が後を絶ちません。
また、
複数のアルバイトを掛け持ち
することによって、
そのアルバイト実態がわかりづらい
ということも多いです。

これを受けて、出入国在留管理庁でも、
アルバイトのオーバーワークによる
資格外活動許可違反を重く見ており、
VISA審査においても
疑いの可能性がある申請者に対しては、
追加の書類提出を求める

など、非常に厳しく取り締まっています。

万が一、
VISAの期間更新申請で
アルバイトのオーバーワークが発覚すると、
ほとんどの申請は不許可
となります。
そうなると、
在籍している教育機関の適正校選定にも
大きく影響
します。

教育機関ができる対応としては、
アルバイト先の届け出ルールを作る
源泉徴収票の提出を求める
在留生活における相談コーナーを設ける

など、可能な限り
留学生に寄り添えるようなものを
おこなうと良いでしょう。

④VISA管理
たとえば、日本の大学の留学生は、
18歳を超える成人とみなされています。
そのため、
留学生自身の自己管理のひとつとして
教育機関はVISAの在留期限がいつか、
VISAの申請は問題なくおこなわれているかを
留学生本人に任せていることも
多いのではないでしょうか。

しかし、
VISA申請をうっかり忘れてしまうと、
在留期限を超過してとオーバーステイ
となり、
日本を強制出国しなければならなくなってしまいます。
留学生がこのまま強制出国すれば、
在籍数が少なくなるばかりか、
万が一不法滞在者となれば、
適正校選定基準にふれてしまいます
教育機関でも、在籍期限の管理をおこない、
定期的に留学生とコンタクトをとる
などの対応をすべきと考えます。

⑤定期的な説明会の実施
留学生が
異国である日本で在留生活を送るうえで
わからないルールが多く
とまどうことも多いでしょう。

しかし、納税や住民登録をはじめ、
在留外国人であっても
知っておかなければならない、
守らなければならないルールが存在
します。

教育機関でも、必要な手続きや義務については、
VISAのルールとともに、
留学生に認識させる機会を設けたいところです。
たとえば、
「入学式」「就職活動説明会」「卒業式」など、
教育機関のイベントで説明会を同時開催

すれば、
たくさんの留学生に周知が可能です。




【】

出入国在留管理庁による
適正校の選定は、毎年行われます。
適正校に選定されることによる
教育機関のメリットは大きいですが、
在籍管理を怠ると、
次の年には慎重審査対象校にランクダウン
となるおそれもあります。

留学生の明るい留学生活のため、
教育機関のスムーズな手続きや処理の実現のため
しっかり在籍管理を心掛けたいところですね。

WINDS行政書士事務所では、
留学生の皆さんのVISA申請サポートはもちろん、
教育機関の皆さまの在籍管理においても
アドバイスやサポートをさせていただいております。
適正校の選定に向けて体制の整備をご検討でしたら、
どうぞお気軽にご相談ください。