コラム

【大丈夫?】補助金申請におけるリスク

2022.02.09[事業支援]




【補助金を申請する前に】


こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
事業者さまが
新たな事業展開や販売促進を進めるために
重要な課題のひとつが、

資金繰り

ではないでしょうか。

資金繰りの手段としては、
出資者からの投資
スポンサーさまからの協賛金
金融機関からの融資

などがありますが、
事業者自身が事業計画を立てて
補助金を受ける

ことも、ポピュラーな方法です。

補助金は、
官公庁や商工会議所など
公の組織や団体に申請をおこない、
審査に通ることが必要ですが、
申請や補助金のながれを
理解していないことによって、
大きなダメージを受けるリスクがあります。
※以前のコラムで
 補助金の特徴についてご紹介しています。
 ⇒こちら


今回は、補助金申請にあたって
あらかじめ知っておくべきリスク。
すでに運用スタートしている
小規模事業者持続化補助金低感染リスク型枠
をモデルに、のぞいてみましょう。




【申請に立ちはだかるリスク】

行政書士として、
補助金の申請をする前に、
把握しておくべきと私が思うリスク
5つ、ピックアップしてみました。

リスク①制度要件のアンマッチ
補助金制度は、
制度目的交付対象者が定められています。

小規模事業者持続化補助金低感染リスク枠
の交付対象者と制度目的は、
次のように定められています。





これらがわかったうえで、
もうひとつ、気になるのが、
対象事業です。
小規模事業者持続化補助金低感染リスク枠
では、
次の3つを柱とした事業とされています。



したがって、申請が、

自分または自社が補助対象にある

制度目的にかなった事業を
おこなっている
or
おこなう計画がある


という要件にフィットしないと、
補助金の審査にパスすることは
難しいでしょう。

②資金繰りオーバー
申請者が補助金の申請をおこない、
審査にパスした後に発生するリスク
となります。

融資の場合は、
申請後の審査も比較的スピーディで、
要件上問題がなければ、
事業実施前であっても数日から数週間で
指定の口座に振り込まれる
つまり、
事業より前払いでお金が受け取れます。
※融資は補助金とは違い、
 返済と利息の支払いが必要です。


これに対して、補助金の場合は、
計画している事業を申請するだけでなく、
実際に事業を実施し、
その実績を報告してから支給される、
つまり、事業より後払いでお金を受け取る
ことになります。
返済は不要ですが、
事業実施後に
事業実績報告をしなければならず
最終審査後、実際に補助金を受け取るまで
相当期間かかります

※制度によっては、
 申請してから補助金を受け取るまで、
 MAX1年程度かかることもあります。


したがって、
申請してから補助金を受け取るまでに
相当な期間があることを念頭に置かないと、
資金繰りが難しくなり、
経営リスクが高まってしまいます。

③煩雑な申請作業
補助金には制度目的に合わせて
いろいろな種類があり、
申請手順必要書類
が定められています。

小規模事業者持続化補助金低感染リスク枠
の場合は、
完全オンライン申請
となっており、申請するために、
事前にGビズプライムアカウントを取得
しなければなりません。

<事務局ホームページより参照>

※Gビズプライムアカウントは、
 行政書士などの専門家名義ではなく、
 申請者である事業者さまのアカウント
 です。


また、必要書類は、
申請者のオフィシャルな書類
だけでなく
申請書をはじめとした
所定のテンプレートからも
作成してそろえる必要があります。

小規模事業者持続化補助金低感染リスク枠
の必要書類は、
次のように定められています。

<事務局ホームページより参照>


そのうち、事業計画書は、
計画された申請事業の内容を
簡潔に、説得力をもたせてまとめること
が必要となり、
まとめる作業も一定の時間を要します。

小規模事業者持続化補助金低感染リスク枠
で用意されている
経営計画及び補助事業計画
という書式は
必須記入項目のほか、
さらに
作成枚数の制限や指定フォント
など、
非常に細かく約束ごとが定められています。
この書類を仕上げるだけでも、
相当な手間と配慮が必要であることが
想像できますね。

<経営計画及び補助事業計画の記入例>


計画している事業において、
審査にパスするだけの説明が足りない
見込費用が確認できていない
計画自体がはっきりしない

といったことがあると、当然、
申請書類は完成せず、
申請不備や不採択のリスクも高まる

ため、手間はさらにかかってしまいます。

ちなみに、
申請のときに提出すべき
必要書類に不足や不備があった場合は
その時点で不採択となります。


④満額補助の保証なし
各補助金制度には、補助額や補助率、
補助対象経費が定められています。
補助金申請で審査にパスした場合、
申請事業の実施期間が設けられ、
その期間内に経費を払い、
事業を実施します。

小規模事業者持続化補助金低感染リスク枠
で定められている補助額や対象経費は、
次のとおりです。
これらの条件から外れる経費は、
補助対象外です。


<事務局ホームページより参照>


補助金を申請して、
無事に採択されたとしても、
その後の事業実施報告を、
指定期限内に終わらせなければ、
補助金は支給されません。

※補助金制度によって、
 事業報告、実績報告など、
 ネーミングが異なります。


実際に事業を実施した結果、
予定していた経費が発生したorしなかった
かかった経費が補助対象外だった
提出すべき書類がそろわなった
計画通りに事業が進まなかった
そもそも制度目的に合わない経費だった

といったマイナス要素が発生した場合は、
最終判定を経て
マイナス要素の分だけ補助金額もマイナス
となったり、
想定外に発生した経費も補助対象外
となったりします。
つまり、
事業実績によっては
採択された補助金額が
満額もらえるとは限らない

ということになります。
※実際、汎用的に使われる機材にかかる経費は
 補助対象外とするルールがしばしばあります。


⑤課税対象
忘れてはならないのが、
補助金は課税対象であることです。
そのため、
補助金を受け取った場合は、
その年度に
確定申告しなければなりません。





【リスクの対応方法】

補助金申請におけるリスクに対しては、
事前に把握したうえで
しっかり対策をたてていれば、
なにもこわくないだけではなく
補助金を強力で有効な資金繰りの手段と
して活用することができます。

対応策や心がまえを6つ、
ピックアップしてみました。

①活用制度の見極め
申請者が補助対象
制度目的にかなった事業をおこなっている
またはおこなう計画がある

ことを、しっかり確認していきましょう。

②計画的なキャッシュフロー
申請してから
補助金が口座に振り込まれるまでの間に、
非常に長い期間を要します。
これに対しては、
補助金を受け取れるおおよその時期を
制度ルールで十分に確認
したうえ、
当面の資金繰り方法を十分に検討してから、
申請にのぞまれる必要があります。

その対策のひとつとして、
融資を受けることも、有効です。
たとえば、
日本政策金融公庫の融資プランは
民間の金融機関と比べて、
金利の低さ
無担保・無保証
返済期間の融通
といった面で、
有利な条件が充実しています。
日本政策金融公庫の融資制度

融資と補助金の違いを理解して使い分ける
こともできますので、
もし、
両方の制度要件がマッチするのであれば、
補助金と並行した活用を検討されることを
おすすめします。

③専門家に相談
事業者さまが営業に集中するために
時間を確保できるよう、
あらかじめ申請スケジュールを組んでおく
チャレンジしたい補助金制度や
申請書類の準備方法
に詳しい専門家に
相談、依頼する

といったことで対策できます。
⇒当事務所にご相談ください。

④収支計画の精度アップ
実際に事業計画を策定し、
かかる必要経費を見積もったとしても、
その事業を実施するときに、
費用が想定以上or以下となることがあります。
これに対しては、
具体的な事業を遂行プランを策定し、
かかる経費においても、
見込みMAX額をチェック
補助対象経費であることを確認

するなど、
綿密に計画を立てていくことが必要です。
事業計画書については、
 
以前のコラムで詳しくご紹介しています。
 ⇒こちら


⑤十分な書類準備
採択後の事業実施報告には、
必要な書類をすべて提出する必要があります。
かかった経費には、
見積書、発注書、納品書、請求書、領収証
口座からの出金履歴、クレジット利用情報
成果物の写真

など
経費の情報を書類で示す必要がありますので、
補助金の申請前から帳票類を収集、管理する
ことが有効な手段といえます。

⑥補助金課税の心構え
補助金を受け取った際の課税額
については、
どれだけ多くなるのかなど
事業者さまから多くご相談をお受けしますが
私の考えとしては、
税金のことはあまり心配されなくてOK
とお伝えしています。

補助金額は、
確定申告の際に事業収入として計上
しなければなりませんが、
補助金というのは、
基本的にかかった経費のうち、
一定の補助率で、一定額が戻ってくる
という定率制がメインの仕組みになっています。
※ARTS for the future!のように、
 定額制で全額補助のチャンスがある制度
 もあります。⇒以前のコラム


そのため、もしも、
補助金額=実際の経費が少ない場合は、
トータルコストとしてプラスにはなりにくい

ことがわかっています。
したがって、
補助金にかかる課税額は
心配するほど大きくはならない

という見解を持っています。


【補助金制度は有効な活用を】

補助金の申請をして審査に通ること
また実際に補助金を受け取ることは、
段階としておこなう作業やかかる手間、
リスクがが変わってきます。
補助金の制度をよく理解したうえで
有効にご活用いただき、
申請後の対応にも困らないように
資金繰りや事業を進めていきたいですね。

WINDS行政書士事務所では、
補助金その他の資金繰りや事業計画の策定など
幅広く事業者さまをサポートしております。
次年度の予算に沿って、
今後も制度リリースが控えていますので
お気軽にご相談ください。