コラム

【国際相続】PROBATE手続き

2020.12.23[遺言相続]




【国で違う遺産分割の方針】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。

私たちのあいだで、
もっとも身近で親密な関係のひとつに、
親族関係があげられます。
親族は、年月を経て、親から子へ、子から孫へと、
その財産を相続していきます。
ときには、
親族同士で遺産分割協議をすることもあります。

この、遺産分割をするうえでは、
国ごとにその方針が次の2種類に分かれています。



日本では、①包括承継主義を採用しています。
相続スタートの時点で、
負債をふくめた被相続人の保有財産を、
相続人の間で分配する手続きをおこないます

遺言書がある場合は、その内容に沿って、
遺言書がない場合は、
相続人間で作成した遺産分割協議書に沿って
財産を移転することになります。



これに対して、
②管理清算主義をを採用している国では、
相続人が財産を譲り受けるうえで、
先に遺産分割はしないで、
PROBATE(プロベート)
という手続きを踏むことになります。






【PROBATE(プロベート)とは】

PROBATEとは、

相続前に、
「裁判所」が、
被相続人の財産を検認する
国際相続手続き

をいいます。

資産が少額など、条件によっては、
PROBATE手続きが不要な場合もありますが、
もしその国でPROBATEが必要と判断された場合は、
遺言書の有無に関わらず、手続きが必要です。
※PROBATE手続き上は、
 「公正証書遺言」であることがのぞましいと考えます。
※遺言書の方式については、以前のコラムでもご紹介しています。

 こちら

被相続人が死亡すると、
遺産はいったん遺産財団(エステート)に入ります
そのため、遺産はすぐに相続人には移転されません。
原則は、被相続人に相続税の納税義務が発生する方針ですが、
故人は死亡してしまった以上、納税はできません。

そこで裁判所は、
相続が始まる時点で、
被相続人の遺産を管理する
「人格代表者(Personal Representative)「遺言執行人」
を任命します。

債権債務の清算を終えて、これらの者が、
遺産税の申告納付を行ったうえで、
残った財産が遺産として、ようやく相続人に分配されます。

これらの手続きには、
およそ1年から3年もの期間を要します。




【PROBATEにおける注意点】

PROBATEは、
日本の相続手続きや考え方とは違うため、
注意すべき点がたくさんあります。
いくつか代表的なものをピックアップしてみました。

①納税が必須
 PROBATEの採用国では、物納制度が存在しません。
 そのため、税金を支払うための資金が必要です。
 たとえば、アメリカでは、
 9か月以内に現金で納税するルールとなっています。


②膨大な手続き期間
 相続人への遺産分配が完了するまで、
 多くの手続きが発生し、
 裁判所でも、証拠の精査と検証作業が進められます。
 裁判所や税務当局の許可を得て、
 遺産が分配されるまでには非常に長い期間を要する
 ことを覚悟しなければなりません。

③相続財産を自由に処分できない
 PROBATEが終了するまで、
 遺産は裁判所の監督のもと管理凍結されます。
 自由に遺産の所有権を移転や、売却や名義変更など
 処分は、簡単にはできません。

④複雑な手続き
 国によって、法律や手続きの内容は異なりますが、
 PROBATEも同じことがいえます。
 それぞれの国の言葉でコミュニケーションをとり、
 現地の言葉に翻訳した死亡証明書や宣誓供述書など
 多数の書類を用意
しなければなりません。
 また、場合によっては、
 アポスティーユ認証を受ける必要があります。
 これらの手続きが終了するまでには、
 相当の労力を要します。
 アメリカなどは、州ごとでも法律や手続きが違い、
 各州に不動産などがある場合は、
 州ごとにPROBATE手続きをおこないます。
 ※宣誓供述書やアポスティーユについては、
  以前のコラムでもご紹介しております。
  ⇒宣誓供述書
  ⇒アポスティーユ

 
⑤プライバシーが確保できない
 相続人や、負債を含めた遺産を確定するうえで、
 被相続人の遺言書や財産内容、個人情報、
 相続人情報が公開
されます。
 そのため、
 プライバシーの確保が難しい場面が発生します。


【国際相続は手続きが煩雑】

PROBATE手続きは労力と時間、費用がかかり、
相続人にとっては
経済的・精神的負担を強いられることが予想されます。

国をまたいだ相続によって、
PROBATE手続きが必要と判断された場合は、
事前に手続きの内容を認識して、
PROBATE手続きを軽減できないか、対策を検討することが必要です。
一定の事前対策をおこなえば、
 PROBATE手続きを軽減したり、回避することが可能です。
 当事務所までお問い合わせください。


海外にある財産の相続手続きが必要となってしまった
または
今後国際相続に関わりそうで事前に準備したい
という皆さま。

WINDS行政書士事務所にて煩雑な手続きのサポート、
手続き全般においてのご相談をお受けいたします。
是非ご相談ください。