コラム

業務を「委託する」

2020.05.13[契約]



【業務を委託するということ】


こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。

企業がビジネスを展開していくにあたって、
また、一般の皆さまでも、サービス提供のご依頼を受けるにあたって、
通常はさまざまな契約が結ばれます。

契約とは、
当事者が権利・義務についての「法的な拘束力を持つ約束ごと」と言えます。

企業や事業主、フリーランスの方がビジネスで結ぶ契約のひとつとして、
業務委託契約が挙げられます。

業務を「委託」する、ということは、どういう意味合いを持つのでしょうか。
今回は、業務委託契約について、ご紹介したいと思います。


【業務委託契約とは?】


業務委託契約とは、
「一定の業務を遂行することを、他人に委託する契約」
と言えます。

委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。(民法第643条)

この契約の重要な柱として、以下の3つが挙げられ、
それぞれの条項に期限や責任の有無などが、具体的に肉付けされます。

①業務(内容、指示系統)

受託者は、契約に基づいて決まった業務を実施する義務や責任を負うことになります。

ここで、

委託者からのリクエストが過度になってしまう
オペレーションのコントロールがきかなくなる


といったリスクを防ぐために、業務内容が具体的に定義されます。

定義することが難しいといった場合は、
覚書や資料の添付で補完します。

具体的な業務内容に加え、
契約期間や業務完了の期限、ミーティングや作業報告、指示系統が設定され、
委託者が受託者の業務遂行状況をウォッチできるような仕組みを作っていきます。

②成果物

お菓子の流通やシステム開発など、
一定の結果が要求される業務の場合、
できあがるもの=成果物
を明記することが必要です。

これは契約を結ぶうえでの目的にもなる、重要な要素となります。
この成果物には、お金や価値=財産権が発生します。

成果物にも、業務内容と同じように、
引渡しの期限や権利の取扱方法などを決めておくことがベターです。

③対価(報酬の有無、種類)

委託された業務に対して、受託者が業務を遂行し、成果物が提供された場合、
委託者からは何らかの対価が支払われます。

発生するその対価の詳細は、明記しておく必要があります。
対価は、どのような形で支払われるのか、いくらなのか、
また支払手順や期限も設定されます。
報酬は、原則後払いと規定されています(民法624条、633条、648条2項)
 が、契約によって、前払いにすることもできます





【業務委託契約の2つの要素】


業務委託契約は、

 委任
 請負


の2つの要素を持つと言われています。

委任と請負は、以下のような違いがあります。


請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。(民法第632条)

つまり、
受託者が委託業務をおこなうにあたって、
一定の結果を達成することまでが合意されているのか、
がどちらの要素かを見極めるポイントとなります。

契約の中には、「準委任」
という契約もあります。

この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。(民法第656条)

これは、法律行為ではない「事実行為」をおこなうもので、
法律行為をおこなう「委任」と違うものとなります。

(例)医療行為、システムの保守、コンサルティング

※2020年4月の民法改正により、
 請負契約における
 納品物が欠陥品だった場合、
 依頼者は契約不適合責任を追及できます。
 具体的には
 修理や代替品の請求
 代金減額や契約の解除
 損害賠償請求が可能です。
 契約不適法責任については、

 こちらのコラムで詳しくご紹介しています。
 


【業務委託契約書における注意点】

業務委託契約を結び、その契約書を作るうえでは、
いくつかの注意点があります。

a. 契約の性質
結ぶ契約が「委任」と「請負」のどちらにあたるのか
を見極めることが大切です。
それぞれの性質に関わる確認ポイントとして、
以下のものが記載されるかを確認することが重要です。
 委任:善管注意義務
 請負:提供する成果物の詳細、瑕疵担保責任


b. 費用と報酬
業務遂行のプロセスごとに発生する、費用や報酬は、誰がどのように負担するのか。
費用においては、発生理由(=なに費にあたるのか)、受託者の負担で問題ないか、
突発的なトラブルがあった場合に、報酬とは別に委託者に請求できるのか、
を確認することが重要です。
 委任:報酬はあまり重視されない(業務遂行のプロセスが重視されるため)
    必要費用は、原則委託者の負担(民法649条、650条)

 ※「商人」に委託をした場合には、合意の有無にかかわらず、
   報酬の支払いが必要です(商法4条1項、512条)

 請負:必要費用は原則受託者の負担

c. 契約の解除

不測の事態やトラブルに備えて、契約の解除ができるかは、非常に大切です。
契約の解除がしやすい内容になっているかによって、権利上のリスクも認識しておくべきです。
 委任:委任者・受任者ともに、いつでも解除可能(民法651条1項)
 請負:委託者は、仕事を完成しない間、自由に解除可能(民法641条)
    完成した物に欠陥があり、そのために契約の目的が達成できないときも、解除可能(民法635条)
    受託者は、委託者が破産手続き開始を受けたときは、解除可能(民法642条1項)。



【業務委託契約書は記載事項をキチンと確認しましょう】

業務委託契約は、
業務内容や権利関係といったいろいろな要素を含むため、
「請負契約」と「委任契約」の2つに正確に区別することは難しい場合も多いです。

業務委託契約書の作成においては、その条項や内容から、
どちらの契約に属するかが判別できることが非常に大切です。

また、契約違反におけるペナルティがあまりにも高額など、
契約条項の内容が、社会通念上許されないと判断されれば、無効となり、
契約書も最初から作られなかったと取り扱われるおそれもあります。

そのため、当事者双方が十分納得できるような内容になるよう、
注意する必要があります。

これら、契約ルールのもととなっている民法は、
4月1日より、改正版が施行されており、
前提条件や時効期間の変更がすでに始まっています。

事業年度の節目として、新しい契約をむすぶ、
または見直す機会も増えるかと思われます。
WINDS行政書士事務所では、
業務委託をはじめとした契約全般につき、
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