コラム

【民法改正】契約不適合責任

2020.09.16[契約]




【「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へ】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
契約においてのルールを中心に、民法は4月に改正されました。
この改正によって、大幅に見直されたもののひとつが、
売買における、売主の責任です。

たとえば、

買ったものになんらかの不具合があった場合
注文したものと違うものを引き渡された場合


買った人は売った人に対して、

返金やディスカウント、損害賠償

といった、対応を求める場合があります。
買った人が売った人に求めるこれらの対応を、
以前は、「瑕疵担保責任」と呼んでいました。

しかし民法が改正した4月以降、
法律上は、
「瑕疵担保」という言葉は、
今後使うことがなくなりました。
代わりに、
「契約不適合」という言葉を
使うこととなります。


【契約不適合責任】

売主は、
売買契約の内容に適合した目的物を、
責任をもって買主に引き渡します。

「契約不適合責任」とは、
契約において、引き渡された目的物が、
買主にとって、
その種類・品質・数量にかかわらず、
「契約内容と違う」と判断
された場合、
売主が負う責任を言います。



【契約不適合責任の効果】


契約不適合責任という規定に改正されてから、
担保責任は具体的にどのように変わったのでしょうか。

改正前の「瑕疵担保責任」と比較すると、
買主が売主に要求できる権利の範囲が
格段に広くなりました

まさに、
買主をさらに救済するために生まれ変わったルール
と言えます。

①対象の契約
契約不適合責任は、

売買契約
請負契約
などの有償契約

を対象とした場面で問題が発生します。
(民法559条)

また、宅建業者以外の者に対しては、
自ら売主となって
宅地や建物を売却する宅建業者
にも影響があると考えます。
※請負契約の性質に反する契約は除きます。
※商人間の売買においては、商法526条が適用されます。
   ⇒e-GOV


②対象の物
改正前までは、対象となるものを
固定されたものである特定物だけに限られていました。
改正後は、その種類・品質・数量にかかわらず
対象となります。


※法律上、不動産はすべて特定物としてあつかわれます。

③不具合

なんらかの欠点や欠陥があることを、
法律上では、
瑕疵と呼んでいます。

責任を求める場合は、
改正前は、この瑕疵が、

契約締結のときまでに生じたもの
「原始的瑕疵」と呼びます)
である場合にかぎられていました。
また以前のルールでは、

「隠れた瑕疵」というものも認識されていました。

改正後は、
契約を履行するときまでに生じた瑕疵

であれば、
契約締結後でも
売主は契約不適合責任を負います。
また、

「隠れた瑕疵」という概念は通用しなくなりました
※契約の履行とは、たとえば物の引渡しなどが該当します。

④買主が権利行使できる期間
改正前までは、
瑕疵を理由とする損害賠償請求等の権利行使は、
買主が不具合の事実を知ってから1年以内
しなければならない

とされていました。

これに対して、改正民法では、
契約不適合を理由とする権利行使については、
買主が契約不適合を知った時から1年以内
「通知」すればOK
となりました。(民法566条)
たとえば、買主は、
1年以内に通知をした証跡を残すため、
内容証明郵便などで通知書を送ることで、
権利を行使できます。
※時効によって消滅する可能性があるため、
 無期限に権利を行使できるとは限りません。
 (民法166条1項)
※売主が不動産業者の場合にかぎっては、
 契約不適合責任の期間を2年以下にしたり、
 免責することはできません。


なお、売主が
契約不適合につき知っていた(=悪意
または
著しく注意義務を怠った結果知らなかった(=重過失
場合には、
この、1年の期間制限にはかかりません
(民法566条ただし書)

⑤買主が請求できるもの
改正前まで、買主が請求できる手段は、
解除損害賠償のどちらかだけでした。
改正後は、これら2つに加え、
追完(補修)請求代金減額請求
ができるようになりました。
(民法562条、563条、564条)
※損害賠償を請求するためには、
 売主にその損害賠償をするだけの法的責任があること
 (帰責性と言います)が必要です。
 (民法415条ただし書)


<買主が行使できる4つの請求>


<法改正前後の請求>

※請求する損害賠償の範囲は、
 契約が有効だと信じたことによる損害
 (信頼利益)に加え、
 契約がただしく履行されなかったために被る損害
 (履行利益)
 もカバーされます。(民法416条)

⑥買主が請求できる場合

改正前は、買主が請求できるシチュエーションは
売買目的物にれた瑕疵がある場合
買主がその瑕疵について故意なく何も知らなかった(善意無過失)

と限られていました。
改正後は、その

契約の内容に合しない場合
であれば
買主が瑕疵を知っていた(悪意)
としても、
買主は売主に対してさまざまな請求が
できるようになっています。

※法律上、事情を知らないことを善意、
 事情を知っていることを悪意、と言います。


⑦想定事例
契約不適合責任が問題となると想定されるケースを
リストアップしてみました。




【契約不適合責任が契約書に明記されていますか?】

これまで説明しました、
改正前と改正後のルールのまとめると、
以下の図のようになります。


従来の瑕疵担保責任のルールから変更があることを
知らずに契約書が作成され、契約が締結されてしまうと、
買主は思わぬダメージを受けることになります。

買主は、
売買目的物にどのような不備が存在し、
その不備にどんな責任を負うことになるのか、
責任範囲をよくチェックすることが大切です。

売主は、
契約締結前に、売買目的物の現状を細部まで把握して
契約書や重要事項証明書に反映する必要があります。

契約は、あくまでも当事者の意志が優先されるため、
改正部分をふまえて、当事者が納得できる形で、

必要に応じて修正したり、
特約を付けることで契約を調整できます。

民法改正はこのほかにも、
契約にかかわる変更がございます。
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