コラム

【2023年4月最新版!】技能実習運用要領の改正

2023.05.03[VISA]




【4月から改正!技能実習ルール】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
1993年の創設以来、
外国人のスキルアップと
海外諸国の発展に寄与してきた、
技能実習
この制度で在留している技能実習生は
およそ32万人にまでのぼりました。

<法務省:技能実習生の在留状況>


また、現在は
新ルールへの移行が叫ばれ、
昨年から毎月
有識者会議で活発な意見
がかわされていることは
記憶に新しいところです。
NHKの報道

こうした動きがあるなか、
4月より、
技能実習運用要領
全体にわたって改正されました。

実習生や実習機関、監理団体と
技能実習制度に関わる
すべての皆さま全体に影響がおよぶ
今回の改正内容を解説します。




【技能実習運用要領とは】

技能実習運用要領とは、

技能実習生が
適切に正しくスキルを習得するため、
実習生を受け入れる実習機関が
スキル指導の際に守るべきルール

で、
2017年11月
技能実習法とともに制定されました。

技能実習制度自体の目的である
開発途上国に対するスキル伝達
を通した国際社会発展への貢献

という、
先進国としての我が国の役割
を果たすために欠かせない
ガイドラインとなっています。

運用要領を確認することによって、
企業や団体が
技能実習計画の認定を受ける

にあたり、
また
監理団体が実習機関をサポートする
にあたり、
実習やスケジューリング、諸手続き
をスムーズにおこなえます。
※技能実習の認定計画については、
 以前のコラムで詳しくご紹介します。
 ⇒
こちら




【改正ルールのSTARTは今年4月から!】

これまでも技能実習運用要領は
毎年のように改正されてきましたが、
今回の改正は、
技能実習のスムーズな実施
実習生の在留生活の充実
実施機関と監理団体の連携強化

をより実現し、
技能実習制度の未来を
さらに明るいものにする内容
となっています。

運用内容の改正は
非常に多岐にわたっていますが、
今回、私が行政書士の目線で
技能実習の運用上、特に重要
と思われるものを
厳選してピックアップしました。



①安全衛生関連業務ロジックの明確化
技能実習は
年間単位でスケジューリングされ、
その内容も、
次のように業務が区分されています。



このなかの
安全衛生関連業務についてはこれまで、
各業務の1割以上の算定基準
があいまいでしたが、
今回の改正で、

安全衛生関連業務
/安全衛生関連業務+それ以外の業務


と、
算定基準が改めて明確に
なりました。

②実習生の一時帰国日数カウント
技能実習2号を修了し、
3号へレベルアップする実習生は、
3号実習スタートから1年以内に
1か月~1年未満の期間
一時帰国する

ルールとなっていますが、
改正ルールでは、
この帰国日数に
日本からの出国日は含まれない

ことが明記されました。

たとえば、
実習生が一時帰国のため
3月31日に日本を出国する場合、

一時帰国期間は4月1日からカウントする
こととなります。

③実習の中断・再開手続きの簡素化
やむを得ない事情によって
中断してしまった技能実習を再開
するにあたって、
これまでは技能実習計画を新規に策定して
OTIT(技能実習機構)の認定
を受けなければなりませんでしたが、
4月以降は
中断前に策定した
技能実習計画の変更手続き

だけで済むようになりました。

④転籍先の職種・作業選択の例外
実習生が実習機関を転籍
するにあたっては、
その実習は職種&作業が基本となります。
これまでは
コロナ禍の特例措置をのぞいて
この例外が認められませんでした

が、改正ルールでは、
やむを得ない事情がある場合
同じ職種内
にかぎって
違う作業の実習が認められる

こととなりました。
※変更後の職種・作業にかかる
 技能検定などの受検・合格も不要です。


⑤入国後講習のフレキシブル化
実習生が
技能実習を受けるにあたっては、
入国前後に
日本語や日本の習慣、生活全般
における
講習を受けます。
これまでは、
対面方式での実施が条件
とされていましたが、
改正によって、
入国後講習はオンラインなどの活用が可能
となりました。
※入国後講習期間中に
 実習生を作業に従事させることは
 労働安全衛生法違反となります。


また、講習で使用する実習生手帳は、
冊子のほか、
デジタルデータやアプリケーション形式
も認められます。
実習生の手帳アプリケーション
 が開発、運用されています。


⑥技能実習指導員の配置
技能実習の実施にあたっては、
実習機関が実習指導員を配置します。
その配置として、これまでは、
指導員を現場ごとに配置する
こととなっていましたが、
改正後は、
適切な直接指導は変わらない前提で、
さまざまな現場ごとに複数指導員の配置
が認められることとなりました。
また、
建設現場など、
さまざまな現場に出向いた実習

を想定できる場合は、

1名のみの指導員配置であっても
複数現場の巡回指導

が認められることとなりました。
※シフトの配慮などをはじめとした
 認定計画にしたがった直接指導体制の整備
 は必要です。


指導員を多く設置できない
実習生と指導員の
作業シフトを合わせづらい

といった悩みを持つ実習機関にとっては
このルール緩和で
指導がしやすくなります。

⑦実習生私物収納設備のフォロー
実習生が宿泊施設を利用する場合、
施設内で自分の私物を収納する設備
(貴重品ボックス、金庫など)

を利用することができます。

これまでの運用要領では、
これら設備についての具体例が
明記されていなかった
ため、
実習生が持参したスーツケースの転用
多く見られていました。
私物収納設備は実習機関が用意すべき
ものであるルールを明確にするため、
今回の改正で
設備は実習機関が責任をもって用意し
実習生のスーツケース転用などは認めない

ことを明記しています。

⑧水道光熱費の変動ルール化
実習生が利用する宿泊施設で
生活をする以上、当然ながら
水道光熱費の発生が見込まれますが、
エネルギー費の高騰などの理由で
最近値上がりが見られています。
これらの背景から
実施機関が控除費用として
水道高熱費の値上げをする場合
は、
事前に実習生に説明して
理解していただくことがのぞましい

旨、改正版で追記されています。
※宿泊施設概要については、
 実習生が同意したうえで署名する
 意思確認書が新設されています。


⑨フルタイム社員の詳細定義
運用要領上、
実習実施機関でのフルタイム正社員は
常勤職員との名称で呼ばれています。
常勤職員はこれまで、
正社員
正社員と同様の就業時間で
継続勤務する日給月給者

と定義されていましたが、
今回の改正で次の定義が加わりました。



⑩実習困難における手続きの充実
実習生が実習生活を送るうえで
病気やケガ、妊娠などあった場合、
実習を中断して実習終了時期が延期
することがあり得ます。
その際の手続きとして、
これまでは
新規に認定計画を作り直して
改めて認定を受けなければならず、
中断後の再開においては
監査時に制度の説明にとどまっていました

が、
今回の改正で
新たな指定書類が用意され、
新規の認定計画申請をせずとも、
変更認定のみでOKとなりました。

そのほか、
実習者の各シチュエーションによって
手続き運用も現行ルールに
一部追加となります。


実習中断の理由や再開までの経緯
 を記載する理由書
の提出は
 これまで通り必要です。
※再開時には事前に定められている
 人数枠基準を満たす必要があり、
 特例は認められません。
妊娠によって
 技能実習を中断ではなく、
 打ち切りとした場合、
 認定取り消しとなります。
※妊娠がわかり、
 出産のため帰国をする場合は、
 再入国手続きに加えて、
 妊娠などに関連した
 技能実習期間満了前の帰国についての申告書
 コピーの提出
も認められます。
※数日程度の療養による中断は
 認められません。


⑪帰国旅費負担先と範囲の明示
技能実習終了後、
実習生が帰国をするときに発生する、
フライトチケット代などの帰国旅費
監理団体が負担する
ルールとなっていますが、
今回の改正を機に、
実習「終了後」の帰国の場合
と改めて明記されることとなりました。

ちなみに帰国旅費とは、
フライトチケット料金だけでなく
日本での住所から空港までの交通費
も含まれます。
※帰国のために受けるPCR検査代
 実習生負担でもOK
 と考えられますが、
 技能実習制度に沿った必要措置
 として
帰国を余儀なくされる
 ことから、
 監理団体が負担する必要があります。
※特定技能移行のために、
 特定技能準備などの特定活動VISA
 を取得している場合、
 当該費用は、実習機関が負担します。


監理団体
実習生が帰国フライトのため
空港に向かう際の同伴までは
求められません
が、
実習生が
できるだけスムーズに帰国できるように
移動には十分配慮すべきです。

⑫実習生からの相談体制の整備
実習生からの
実習や日常生活に関する相談や悩み
に対する
アドバイスやカウンセリング対応は
監理団体が対応
します。
その対応体制についてはこれまで、
実際の相談対応の時間帯までは
はっきりと定められていませんでした

が、今回の改正によって
夜間や休日の対応も想定した体制
を組む必要性
が要領に明記されています。

また、相談を受けるときは、
通訳を活用し、
相談や対応の内容は
相談対応記録書に具体的に記載

することがベターとされています。

⑬業務運営規定掲示範囲の拡大
運用要領上、
監理費のリスト運用運営規程類
監理団体オフィス内の
閲覧しやすい場所に掲示

することになっていますが、
今回の改正で、
6月以降は
インターネット上での公開が義務

となりました。
※インターネット上での公表
 を求められないケースもあります。

 ⇒当事務所までご相談ください。

⑭地域共生サポートの明示
監理団体のサポートのひとつである
実習生に対する日本語学習のサポート
について、
学習サポートを実習実施者がおこなう場合は、
監理団体がそのバックアップをする
こととなっていますが、
これまでは
その具体例があいまいであったため、
バックアップが不十分と感じる実習機関から
不満や意見が噴出
していました。

改正版では、そうした声をくみとり、
次のように
日本語教育サポートをする実習機関に対する
バックアップ内容を具体的に明記されています。


※単なる日本語学校の紹介
 実習中の日本語だけの時間を設定
 職員との日常会話の機会を増やす

 などにとどまる対応だけでは、
 日本語学習サポートとはいえません。


また
地域社会との交流機会などのアレンジ
アレンジをする実習実施者のサポート
についても、
次のように具体的明記がなされています。


※単なる一般人向け(日本人向け)
 イベントの周知などに留まる場合は、
 地域社会との交流機会をアレンジ
 する実習実施者
 をサポートしたとはいえません。



※単に実習生と和食を食べに行く機会の設定
一般人向け(日本人向け)
 イベントの周知などに留まる場合は、

 日本文化を学ぶ機会をアレンジする
 実習実施者をサポートしたとはいえません。





【技能実習のこれからを照らす改正】

新制度移行に関する協議と同時期に
おこなわれた今回の運用要領改正は
単なる実習ルールの見直し
だけにとどまらず、
実習生や実習機関の
将来がさらに明るくなるもの
となっているように感じます。

実習生がで正しくスキルを身につけるため、
実習生と実習機関を守る
技能実習運用要領の最新内容は
しっかり把握しておきたいところです。


最新版の技能実習ルールの内容や
内容に沿った手続きがわからない
という皆さま。
WINDS行政書士事務所は
最新ルールと対応実績をもって
皆さまをサポートします。
どうぞお気軽にご相談ください。