コラム

「販売スタッフ」のVISA

2021.04.14[VISA]




【外国人の販売スタッフ

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
日本に在留する外国人が仕事をするためには、
就労VISAが必要です。
就労VISAは、
職業や仕事の内容によって、さらに種類が分かれます。
※VISAの種類については、
 当事務所ホームページにてご紹介しています。
 ⇒こちら


これについて、
外国人を雇用する事業者の皆さまから、

外国人の仕事の内容が、
どの就労VISAに当てはまるかわからない


というお悩み、ご相談をいただきます。

その中でも多い職業のひとつに、

販売スタッフ

があげられます。

VISAの種類と要件に沿って、
販売業務を行う外国人は、
どのようなVISAを取得すべきでしょうか。




【販売スタッフのためのVISA】

商品を販売する業種は、小売業にあたります。
小売業者の代表的なものとして、

デパート
スーパーマーケット
コンビニエンスストア
家電量販店
セレクトショップ


などがあげられます。

一般的に販売スタッフとは、
小売業者に所属する従業員を指します。

小売業者に所属する外国人が
販売スタッフとして就業する前提で、
まず皆さまが想像すると思われるVISAは、
「技術・人文知識・国際業務」VISA
に代表される、就労VISAではないでしょうか。
※「技術・人文知識・国際業務」VISAについては、
 以前のコラムでもご紹介しています

 技術・人文知識・国際業務VISAの取得
 就労機関カテゴリー区分の変更

しかし、
販売スタッフの仕事は、
このVISAに該当すると判断されません。


販売の仕事は、

単純作業(アルバイトやパート業務)
とみなされ、
就労VISAに必要な
専門的技術的な知識や素養とマッチしない


と考えられているためです。

単純作業とみなされる仕事は、

接客
レジ打ち
倉庫などでの仕分け
在庫管理
製品組み立て
機材のセットアップ


のようなものがあげられます。

この場合は、就労VISAではなく、
現在持っているVISAに加えて、
資格外活動VISAを取得して、
週28時間以内で就業
することになります(=包括許可)。
※資格外活動VISAの活動範囲については、
 以前のコラムでもご紹介しています。
 ⇒こちら


資格外活動VISAを持つ外国人は、

アルバイトやパートをする
留学生

外国人や日本人の配偶者、家族

が該当します。

その一方、

「永住者」「定住者」「配偶者等」
 

などのVISAを持つ外国人は、
職種や業種に制限なく、仕事ができます。


販売スタッフとして採用できる外国人が持つVISAを
次のように整理してみました。




【販売スタッフの「正規雇用」の可能性】

しかし、事業者さまの中には、

販売業務を担当する外国人を
アルバイトではなく
正社員として迎え入れたい


という方もいらっしゃるかと思います。

そこで、
販売業務をメインの仕事内容として
就業頂くことはできませんが、
総合職や営業職の担当者として
販売業務の管轄部署に迎え入れる

ことによって、
「技術・人文知識・国際業務」VISA
を取得できる可能性があります。


総合職を前提としたVISA申請では、
外国人自身や業務の内容が
「技術・人文知識・国際業務」VISA
にフィットするか
を見極めることが必要となります。

見極めポイントとして、次の3点をあげてみました。

①外国人の経歴
外国人が総合職の仕事を
問題なくおこなえる証明として、
一定の、

学歴⇒専攻科目(商学やファッション、マーケティング)
職歴⇒実務経験


を主張します。
もちろん、学歴や職歴が完全に合致するか、
判断が難しい場合もあり、
その際は当局へ丁寧に説明することが必要です。
⇒当事務所までご相談ください。

②就業先の仕事内容や顧客ターゲット
勤務先となる事業者や職場が、
その外国人を雇い入れる必要性が問われます。
販売業務を担当する部署であれば、たとえば、

外国人の観光客やお客さまが多く、
外国語で接客や営業をする機会
その外国人と同じ国や地域の従業員との
母国語のコミュニケーションによる業務円滑化


といったものです。
外国人スタッフの職務内容と
外国人スタッフの学歴、職歴が
法令規則にマッチすれば、
「技術・人文知識・国際業務」VISA
の取得が認められる可能性が高くなります。


③販売業務現場での職務内容
通常は、
店舗販売スタッフ業務のみでは、
就労VISAの許可を得ることは難しいです。
しかし、
事業者や業界の個別の事情が考慮され、
許可が認められる場合があります。

個別の事情としては、
たとえば、以下のようなものが該当します。

仕事の内容
母国語を含めた外国語を使う頻度
会社や店舗エリアの特性
店舗の規模、ランク
外国人顧客の客数や国籍
季節の変動傾向
インバウンド対象の広告や販促企画立案
お店や商品のマネジメント業務の割合


こういった事情を主張、証明した結果、
出入国在留管理局側の「総合的な判断」によって、
「技術・人文知識・国際業務」VISA
が認められる可能性があります。




【事業者側で気を付けるべきポイント】

販売スタッフとして、
外国人が就労VISAを取得できた場合、
その後においても、
雇い入れる事業者は次のような点を注意すべきです。

①担当業務の明記
内定の結果、勤務先で発行される
労働条件明示書や雇用契約書には、
担当業務を明記します。
それ以外の業務は、
あくまで付随的なものであることを
明示すべきと考えます。

就労VISAを申請する場合、
通訳業務も発生する場合は、
職場環境や販売業務の状況について、
具体的な説明を求められることが多い傾向

にあります。

これは、通訳自体が、
同僚との業務連携や
お客さまに対するサポートの域を出ない

ことや、
通訳業務スタッフは接客すべきでない
と判断されることにあります。

②人事異動
小売業を営む事業者が、
販売スタッフの外国人を別部署に人事異動させたり、
反対に、
営業や経理などの別部署スタッフ外国人を
を販売部門に転属させる場合は、
仕事の内容を変更することになります。

この場合は、
同じ「技術・人文知識・国際業務」VISA
であったとしても、VISAの変更申請が必要

と考えます。
※配属場所も変更する場合は、
 「企業内転勤」というVISAへの変更も必要です。


また出入国在留管理局では、
VISA申請においての後追い調査
をすることもあります。

たとえば、
経理業務担当と申請し、
就労VISAを取得した外国人が、
その後なんの申請や届出をせずに
担当業務を接客に変更
し、
それが後追い調査で発覚した場合、
外国人の就労VISAが取り消されるほか、
事業主も不法就労助長罪に問われる可能性があります
ので、注意したいところです。

③VISAの「資格該当性」
就労VISAは、
「技術・人文知識・国際業務VISA」のほかにも、
仕事の内容によってさまざまなものが存在します。

事業者が外国人の雇用を検討するうえで、

就労VISAの取得が難しい
小売業・販売員を正社員登用できない
産業界全体で日本語能力の高い
外国人販売スタッフのニーズが高い


といった理由がある場合、目線を変えて、
選択するVISAの種類を再検討してみる
こともおすすめできます。

たとえば、

日本の大学卒業
日本語試験N1レベルの日本語能力
を満たす外国人留学生


といった、
習得スキルや応用能力の活用が
期待される人材は、

「特定活動(本邦大学卒業者)」VISA
を取得して、
日本語能力を生かした業務につくことも
認められています。
※「特定活動」VISAは、
 ほかの在留資格に該当しない活動の受け皿
 として設定されているVISAで、
 取得要件や経緯によって、
 46種類に分けられます。


VISAによって、
求められる要件や提出書類が変わります。
採用する外国人の持つべきVISAの選択には
十分に注意したいところです。

WINDS行政書士事務所でも、
申請サポートだけでなく、
外国人が取得すべきVISAのご相談についても、
お受けしておりますので、お気軽にご相談ください。