コラム

「利用規約」という契約

2021.02.03[契約]





【身近な契約「利用規約」】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。

ビジネスを展開するスタイルとしては、
事業者相互で取り交わされるものもあれば、
事業者が一般のお客さまと取引をすることもあります。

たとえば、皆さまの身近でも、
インターネット上でショッピングをしたり、
ダウンロードしたアプリケーションを利用するとき、
その事業者と契約を結ぶ場面があるのではないでしょうか。
そのときに、利用者が確認するのが、

利用規約

です。


【利用規約とは】

利用規約とは、
消費者や利用者が、
商品やサービスを利用する際の
条件やルールを記載した契約や書類をさします。

利用規約を作成するうえで、
中心となる法律は、次の6つです。



利用規約を作成する事例としては、
以下のようなものが多いです。



利用者はこれらのサービスを利用するにあたって、
規約内容を確認したうえで、
同意を求められる場面が多いかと思いますが、

規約条項は非常にたくさんあり
また小さな文字で記載されていることも多いため
あまり注意して読んでいない


そんな方も、
多くいらっしゃるのではないかと思います。

そもそも契約というのは、
申し込みと承諾という意思が合致すれば、
成立します。

契約の内容は、
サービスの提供者と利用者との間で、
自由な意思で決定することができます。
これを、契約自由の原則といいます。

これは、利用規約に置き換えても同じで、
利用者が規約内容に承諾をすれば、
契約が成立することになります。

このとき、

規約内容をよく理解しないまま
サインや確認のチェックをすると、
利用後に予想していなかった義務があることがわかった


という事態におちいることも十分に予想されますので、
注意が必要です。




【中心法律に沿った重点ポイント】

利用規約を作成するうえで中心となる法律ごとに、
規約に反映させるべきポイントをご紹介いたします。

①民法
 民法上では、

 ・特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引
 ・内容の全部または一部が画一的であることが
  取引者双方にとって合理的
 ・特定の者により準備されたルールをまとめたものが
  契約内容となっている


 の3つの要件を満たした利用規約は、
 契約書(定型約款)と定義されます。
 オンラインサービスの利用規約は、
 定型約款の要件を満たすと考えてよいでしょう。

 昨年4月の民法改正によって、この、
 定型約款の合意や内容表示、変更ルールが拡充
 されていますので、
 改正点をベースにした規約を作成することが大切です。

②消費者契約法
提供者に比べると、ほとんどの利用者は、
利用しようとするサービス自体や、その規約、契約に、
最初から詳しくないのがほとんどではないでしょうか。
そのような状態で、
契約自由の原則をそのままあてはめてしまうと、
利用者側に大きな不利益が生じてしまうおそれがあります。

これに対して、消費者契約法に基づいて、
提供者にとって一方的に極端に有利な規定は無効とする
など、
契約内容にある程度のブレーキをかけて、
利用者に不利益がおよばないようになっています。

利用規約にも、提供者がこのルールを認識している
という内容を記載することが重要です。

③個人情報保護法
商品やサービスの利用に際しては、
顧客に関する個人情報の取り扱いは避けて通れません。

改正前まで、
過去6か月間いずれの日で
5,000人分以下の個人情報しか扱っていない事業者は、
個人情報取扱事業者にあたらない

という例外ルールが存在していましたが、
2017年に個人情報保護法が改正された結果、
このルールは撤廃され、
あらゆる規模の事業者が個人情報取扱事業者にあたる
ことになりました。

提供者としては、
個人情報収集の際の利用目的特定
利用者の同意の確認
個人情報の保護を遵守

を規約に記載することが必要です。

また、規約への記載とは別に、
プライバシーポリシーを作成して、
利用者に伝えるという手段も有効です。
当事務所行政書士も個人情報保護士の資格を保有し、
 適切に個人情報の取り扱いをおこなっております。
 ⇒
当事務所基本情報
※プライバシーポリシーは、
 個人情報保護方針、プライバシーステートメント
 という名前でも呼ばれています。


④特定商取引法
たとえば、提供者が、
新聞や雑誌、WEBサービスなどで広告して、
消費者が郵便やインターネットなどで商品を申し込む取引は、
通信販売に該当します。

この場合、提供者は、
利用者の同意なしで広告やメールマガジンの送信はできないため、
その旨を規約に記載して、利用者の同意を得ることが必要です。

ちなみに、
通信販売はクーリングオフの対象となっていません。
通信販売以外のサービスであれば、
利用規約にクーリングオフの条項を記載しましょう。


⑤資金決済法
アプリケーション内においては、
利用できるサービスを増やすため、
利用者が先にポイントや仮想コインを購入する
(いわゆる課金システム)
といった場面も想定されます。
これを、前払式支払手段といいます。

このとき提供者には、
ポイントやコインの未使用残高が一定金額を超えると、
供託所に預ける(=供託)義務が発生します。
提供者は、資金繰りの観点から、
供託義務が発生しないようにしたい場合、
購入ポイントやコインの有効期限
(=エクスパイア条項)

を規約内に定めることが可能です。
※供託義務の適用を避けるための期間は、
 180日(=6か月)が目安とされています。


また、
購入されたポイントやコインの払い戻しや
現金購入(RMT=リアルマネートレード)
は原則禁止

されていますので、
これらの内容も規約に記載しましょう。


⑥著作権法
利用者が、インターネット上のサービス内で
写真や動画、文章といったコンテンツを作成するとします。
こういったコンテンツは、
UGC(UGC、User Generated Contents)
と呼ばれています。

UGCは著作物に該当し、
UGC作成時点で、利用者には著作権が発生します。
著作権が発生した著作物は原則、
著作権者の許諾なしに、他人が勝手に利用や改変はできません。

万が一、
著作権者に無断で著作物を利用すれば、著作権侵害となります。

提供者が、提供するサービスの範囲内で、
利用者の著作物を利用したい場合は、
著作権の所在を利用規約で定めることが必要です。
※国内外でも利用規約の著作権に関わる判例があります。
 ⇒(東京地裁)

  規約のコピー貼り付けした事業者に対する規約使用差し止め
 ⇒(アメリカ)
  Instagramに対するUGC使用の集団訴訟
   
また、著作権者に無許可で第三者が投稿した場合、
著作物侵害だけでなく、名誉棄損にあたるおそれがあります。
問題のあるコンテンツに対する禁止事項やペナルティ
規約に記載しましょう。



【適切な利用規約を作りましょう】

利用規約は商品やサービスによって内容が異なるものの、
利用規約は契約のひとつです。
当事者の合意形成に至るまでのプロセスが確認できるよう、
適切な規約文を用意することが大切です。

利用者や閲覧者が不特定多数であるサービスにおいては、
インターネット上で確認できるテンプレートを
そのまま安易に転用せず、
サービスや利用者のカテゴリーに応じて
利用規約を作成することをおすすめしています。

WINDS行政書士事務所では、
契約ごとに関する書類作成、リーガルチェックを承っております。
サービスの利用や提供おけるトラブル、サービス運営の障害発生防止のため、
商品やサービスの開始前に、是非ご相談ください。