コラム

外国人犯罪とVISA

2022.10.19[VISA]





【VISAが危ない!外国人の犯罪】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
在留外国人の犯罪が今、注目されています。
その検挙数は
2004年をピークに減少していましたが、
2016年から5年連続して増加しています。
この期間にはコロナ禍も含まれており、
慣れない異国の生活に加えて
未曾有の事態も要因のひとつ
と推測することもできます。

検挙された外国人は在留外国人全体の一部
であることはわかっているものの、
事態は深刻ですね。

<令和3年度版犯罪白書>




日本に在留する外国人がもし
法に触れ、その事実が発覚した場合、
法律や刑事手続きにしたがって
処分を受けなければなりません。
その最たるケースが、
犯罪を犯し、逮捕や起訴されることです。
これらの処分を受けると、
今後の在留生活に重大な影響をおよぼします。

外国人が逮捕された場合の
刑事手続きや強制送還の有無、
保有しているVISAの取扱いに関しては
十分に注意しなければなりません。




【外国人の逮捕とVISA】

外国人は日本に入国し、在留するため、
在留目的や職業などでカテゴライズされた
VISAを選び、許可申請をします。
VISA申請の結果、
許可を得た外国人はVISAを保有し、
正式に在留が認められることになります。
※VISAの種類については、
 
こちらのページでご紹介しています。

では、もしも外国人が、
在留中に逮捕されたり、勾留を受けた場合、
その身柄やVISAはどうなるのでしょうか。

外国人が被疑者として事件に関わっている場合、
逮捕や身体拘束が認められる傾向が高いです。

日本では
日本人であろうと外国人であろうと
日本国内で犯罪を犯した者には
日本の刑法その他の法令を適用する

と定めています。
(これを、属地主義と呼んでいます。)

この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
(刑法第1条)

この編の規定は、他の法令の罪についても、適用する。ただし、その法令に特別の規定があるときは、この限りでない。
(刑法第8条)


さらに、憲法では、
適性な手続きを保障していますので、
外国人が日本国内で犯罪を犯した場合は
日本人と同じように、日本の法律で、
刑事手続きや裁判を受ける

ことになります。

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
(憲法第31条)


ただ、逮捕や勾留をされたとしても
そのステータスは、
犯罪をおこなったという容疑を
かけられているに過ぎず、
無罪も推定される状態に留まる

ため、
この段階では
VISAを喪失することはありません。

起訴されたことに関しても
考え方は同じで、
裁判の結果が出ていない段階では
VISAの喪失はありません。





【VISA申請は必要】

しかし、
外国人が保有するVISAの期限となると、
注意するポイントが異なります。

外国人のVISAに関しては、
刑事手続とは別に
出入国管理及び難民認定法=入管法
が適用されます。
そのため、
逮捕・勾留中に
VISAの有効期限=在留期限が切れてしまうと
その日から
オーバーステイ=不法残留、不法滞在

になってしまいます。

したがって、
身柄拘束中に在留期限を迎える予定のなか
期限までに在留期間の更新をしなければ
日本での適法なVISAはなくなり
VISAを失ってしまう

だけでなく、
入国管理局の施設に収容され
保釈も認められない
おそれがあります。

そうなると、
釈放や不起訴処分、無罪になったとしても
オーバーステイを理由に
強制送還されてしまう

おそれがあるため、
在留期間の更新申請は絶対に必要です。

在留期間の更新を含むVISA申請は、
外国人本人または代理人が入国管理局に出頭して
おこなわなければなりませんが、
外国人本人が逮捕・勾留されている場合は
行政書士または弁護士が代理申請可能です。
※すべての行政書士または弁護士が
 無条件に代理申請できるわけではなく、
 地方入国管理局長に事前に届け出た者に
 限られています。

⇒当事務所にご相談下さい。

特に
逮捕や勾留を受けた外国人のVISAが、
短期滞在など在留期限の短いものである場合は
在留期限が間近であるケースが多いので
オーバーステイにならないよう、
十分気を付けたいところですね。




【退去強制事由の存在】

逮捕・勾留、起訴だけではVISAを失わない
としても、安心はできません。

入管法では、退去強制事由を定めています。
※退去強制事由については、
 以前のコラムでご紹介しています。
 ⇒
こちら
 
たとえば、
在留期限を迎えていなくても、
起訴され、刑事裁判で有罪判決が下されると
VISAを保有していないものと同じ扱い
となり
入国管理局によって拘束された後、
強制送還される可能性
があります。

外国人が
刑事裁判において強制送還させられるのは、
犯した罪と持っているVISAによります。


このチェック基準としては、2段階あります。

ひとつは、
無期または1年を超える懲役があったか
禁錮の実刑(刑務所への収容)となったか

です。

外国人がこのいずれかに該当すると、
保有しているVISAの種類に関わらず
刑期終了後に入国管理局により収容され
強制送還
となります。

もうひとつは、
刑期が1年以下であった場合
入管法「別表第一」にカテゴライズされる
VISA(活動類型資格と呼ばれています)
を持っているか
一定の罪に該当するか

です。

該当のVISAは以下のものです。


※退去強制事由に該当する犯罪
 については、
 以前のコラムでご紹介しています。
 ⇒
こちら
 
仮に執行猶予付き判決を受けた場合
判決宣告時には釈放され帰宅できます
が、
判決が確定すると入国管理局に収容
されてしまいます。

外国人が
退去強制事由に該当するかどうかは、


 保有しているVISAの種類
 容疑の内容
 起訴されたか不起訴か
 判決は刑の宣告だけか確定か
 裁判の結果は有罪か無罪か


これら5点をチェックしてみましょう。




【前科外国人の帰国】

日本であっても、外国であっても、

国家は
自国民を保護する責任があり、
国際慣習上
自国民の送還者を受け入れる義務がある


と、一般的に理解されています。

そのため、
前科を受けた外国人は、
強制送還、自主的な出国
いずれでも
その母国の国籍を持つ限り、
帰国することができます。


ただ、
帰国できることは
絶対的に保障されているものではなく、
最近では
強制送還される外国人を拒否する国も
複数存在するようです。
日本経済新聞のニュース

信じられないような話ではありますが、
各国の出入国管理は
その国の方針によって対応され
主権への関わり方も国によって違うため
日本や他国が干渉ができないところもあります。




【困ったときはVISAのプロに相談しましょう】

もしも在留外国人が
刑事事件で起訴され
懲役刑や禁錮刑を受けた場合、
退去強制事由を根拠にした
強制送還や再入国困難など
重いデメリットが待ち構えています。
退去強制事由にまで至らない罰金刑など
であっても、
今後のVISA申請に大きな影を落とすリスクは
見過ごせません。

万が一
逮捕や起訴となってしまった場合は、
持っているVISAと在留期限を
すぐに確認して
オーバーステイだけはとなることだけは
なんとしても避けなければなりません。
そのとき持っているVISAを更新するのか
在留特別許可を求めるのか
という選択肢も十分に検討していったうえで
VISA申請を検討する必要があります。

逮捕や起訴の内容と結果によっては、
後々日本にいることが難しいことも
考えられます。
それでも、将来的に
日本に再上陸しやすい状況を整えてから
出国することをを目指したいところです。

こうした対応にすぐに進めるよう、
選択肢とメリット・デメリットなど、
VISA申請のプロから
アドバイスを受けることも非常に重要です。

WINDS行政書士事務所は、
外国人のVISA申請や要件に関するご相談、
実務に幅広く対応しています。
在留外国人が刑事事件に巻き込まれた場合は、
持っているVISAを失わないよう、
ベストを尽くします。
該当する外国人や関係者の皆さま。
どうぞ当事務所までご連絡ください。