コラム

【飲食店要チェック!】風俗営業における「接待」

2022.07.27[風俗営業法]





【風俗営業の許可基準「接待」】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。

深夜帯のお酒の提供や、
ゲームができるお店
を営業するためには、
警察署に風俗営業の申請をおこない、
当局から許可を取得します。
こうしたスタイルのお店の営業を
ご検討のお客さまから、
よくご相談を受けるもののひとつとして、
接待の基準
があげられます。

いわゆる、接待をするかどうかは、
公安でも厳しく取り締まりがされています。
昨今では、
コンセプトカフェやゲイバー
ガールズバーやボーイズバー
などの逮捕、摘発が相次ぎ、

そのほぼすべてが
接待をしてしまったことによる
風俗営業法違反、無許可営業

によるものです。

申請のときにも、
認める場合とそうでない場合で
営業スタイルも大きく変わりますが、

接待の定義が大変わかりづらい
ここまでは接待にならないからセーフ?


とのお問い合わせやご相談が後を絶ちません。

接待にあたる行為を
お店がしようとしているのか、しているのか
をしっかりチェックすることで
無許可営業や警察の抜き打ちの立入検査など、
望まないトラブルは避けたいところです。




【接待するという行為】
 

お店のなかで摂待をする
というと、
一般的にはオーダーを聞いたり
サービスを提供する
など、顧客満足度をアップする
ということを思い浮かべる方が多いかと思いますが、

風俗営業法では、その定義が異なります。

風俗営業法で定義される
接待とは、
「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により
 客をもてなすこと」

を指します。

もう少しわかりやすく説明するとすれば、
飲食の提供はもちろん、
お店の積極的な会話やおもてなし
によって
いい気持ちになりたい、過ごしたい
という特定のお客さまの期待にこたえる
スタンダード以上のサービス

ことといえましょう。

風俗営業法で定義される
この接待をするお店は、
営業するために許可が必要となり
許可を得たお店は法律上、
接待飲食店となります。


※風俗営業の種類については
 ホームぺージでもご紹介しています。
 ⇒
こちら

接待飲食店として営業するためには、
ハードな要件をクリアする必要があります。

そのなかのひとつ、
接待
料金を支払って
顧客の要望を最大限満たす代表的な行為

として考えられていて、
風俗営業法のかかげている
夜の街や繁華街の営業の適正化と健全化
という目標達成のための判断基準
となっています。

この接待をするかどうかが、
お店の営業スタイルを決定し
接待飲食店営業の許可要件となっている
ことを、覚えておきたいところです。



ちなみに、
出店エリアや面積、営業時間
といった基準をクリアしないお店は、

ショットバー、スナック、ガールズバーなど
に代表されるように、

接待飲食店とならない営業をする
選択肢をとります。


※接待飲食店は
 深夜営業が禁止されています。
※風俗営業のための要件を満たさない営業
 や無許可営業をおこなうと
 
営業停止や顛末書の提出
 
2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金
 その後5年間風俗営業の経営に関与NG

 など、厳しい罰則が用意されています。
ガールズバーやボーイズバー
 コンセプトカフェ

 などの店舗は、
 キャバクラやホストクラブが
 深夜営業できないことの抜け道として
 深夜酒類提供飲食店営業で営業
 しているのではないか
 と当局からマークされています。

 ⇒コンセプトカフェ逮捕の報道
 
ちなみに、
接待を伴わない高級飲食店の場合は、
顧客に対する会話やサービスが
いわゆる
慰安や歓楽をメインにした目的ではなく
料理や酒を中心にしたサービスを楽しむ空間
ととらえられる
ため、
風俗営業法上の接待にはあたりません。

また、
ダーツバーやDJブースを設置したクラブなどは
特定遊興飲食店と呼ばれますが、
風俗営業法上の接待は認められません。




【警察の定義する接待】
 
お店の営業スタイルによって、
さまざまな接待パターンが考えられます。
それでは、
チェックする側の警察署が定義する
接待とは、どのようなものでしょうか。

まず、接待においては
警察庁の解釈運用基準で
3つの軸となる解釈基準が設定されています。

①客が飲食以外のサービスを期待してる
②特定客やグループ客に対してのサービス
③積極的なトークやサービスの提供

特定の客やグループに対して
 お店が単なる飲食行為に
 通常伴う役務の提供を超える程度の
 会話やサービス行為等を積極的に行い、
 客側もこれを期待して来店する場合、
 「接待」に該当
 (風俗営業法運用解釈基準より)


さらに詳細な基準が、
次の6つにカテゴライズされています。



①談笑・お酌
特定少数の客の近くにはべって
継続して談笑の相手となったり
お酒などの飲食物を提供し続ける

行為は接待にあたります。

座席やバーカウンター席で
隣に座るのはもちろん、
席越しや
お店の中をラウンド(見回る)しながら
顧客と会話して楽しませることが
代表的なアクションです。

この談笑においては、
あまりにも有名な事例として
カウンター越しの会話
があげられますが、
この場合も
お客さんのそばに座って話し込むような疑い
が持たれやすいです。
これに対して、
客の飲食行為の確認範囲でのお酌
飲食物の提供後、客が速やかに退場
店内で待機していた客のオーダーを受け
飲食物の提供しかしない
社交辞令的な挨拶や世間

といった行為は
接待にはあたりません。

②ショー、ライブ
ダンスや歌唱などのショーケース、ライブ
については、
特定の少数客に対して
その客のためだけに供している客室
or客室内の区画された場所において
ショー、歌舞音曲などを見せ、聴かせる

行為は、接待に該当します。

対して、
不特定多数の客に対し、
同時にショーや歌舞音曲等を見せる
or聴かせる行為は接待ではありません。

ホテルのディナーショー
がこれにあたります。

この場合の判断ポイントは
対象の客が
特定(常連客、VIP客など)か
不特定(一般客)か

仕切られた場所(個室、VIPルーム)か
となります。

③歌唱、カラオケ
特定少数の客の近くにはべって
その客に対し歌うことを勧奨し
歌う客の歌に手拍子をとって
拍手をし若しくは褒めはやす
or客と一緒に歌う

行為、は接待にあたります。

客の近くにずっといることなく
一定の距離をキープして
不特定の客に対して歌う
などであれば接待にはあたりません。


同様に、
不特定の客の歌に対し拍手をし
若しくは褒めはやす
カラオケのオーダーを受けたり
歌の伴奏のため楽器を演奏するなども
接待にはあたりません。


④ダンス
特定の客の相手となって、
特定客のボディに接触しながらダンスをさせる
or特定少数客の近くにいて
それらの客たちと一緒に踊り続ける

といった行為は、接待にあたります。

ちなみに、
クラブイベントでの
コレオグラファーのワークショップ
のように
ダンスを教授する十分な能力を持つ者が
その場にいる客に
ダンススキルや知識を修得させることを目的に
客にダンスを教える行為は
接待にはあたりません。

※客自身が踊るクラブ・ナイトクラブは、
 特定遊興飲食店営業の届出が必要です。
 (風俗営業法第2条11項)


⑤ゲームや遊戯
特定の少数客と一緒に
遊戯、ゲーム、競技などをする

行為は、接待にあたります。

客ひとりや、
客同士でこのような行為
(コールや飲み会ゲーム)をするのであれば
すぐには接待とは判断されません
が、
その場の顧客とお店のスタッフの関わりかた
によっては
接客と判断されかねない場面もある

ので、気を付けましょう。
 
⑥その他
客と身体を密着させたり
手を握る等客の身体に接触する
客の口許まで飲食物を差出し、飲食させる

行為は、接待にあたります。
この行為に派生して、
チェキ撮影、ツーショット撮影
も同じく接待にあたります。

ただし、
社交儀礼上の握手や
酔った客を介抱のために必要限度で接触する
などは、接待とはなりません。





【接待をともなう営業の対策】

風営法上の接待に該当しない営業をしたい
という飲食店の皆さまのために、
私が取るべきと考える対策をご紹介します。

①席数、スタッフ数

お店の席数に対して
キャストの人数が多い場合
接待に該当する可能性が高い

と評価されます。

たとえば、
飲食物の提供をメインのサービス
としているバー
で、
席数が10席あるなか、
キャストさんが7名以上いれば、
客に対してほぼマンツーマン体制
受け取られ、接待とみなされます。
飲食物を提供するために
必要以上の人数が出勤している場合には、
接待要員で出勤している

と評価されるためです。

これについては
明確な人数基準はありませんが、
飲食物の提供とお店の回転をうながすために
10席に対しては3人以下におさえる
ことをおすすめします。

②指名、ドリンクおかわり
キャバクラやホストクラブによくある
指名やチェンジ、ドリンクバックなどのルール

の存在は、
特定の客にキャストがつきっきりで談笑する
との判断がされ、接待とみなされます。
これに対しては、
特定客だけにしか継続的なサービス
をするのではなく
どの客にも公平なサービス対応をする
特定客にはべらない

ということを徹底するとよいでしょう。

③接待NG
もっとも安全で確実な対策としては、
当局の定義する
接待と疑われる営業行為をしないことを徹底
することに尽きると考えます。

私自身は、
接待における無許可営業では
警察がイエローカードとして
事前に注意や指導をしてくれている

ケースをよく耳にします。
逮捕・摘発されてしまう店は、
事前の再三の注意や指導にもかかわらず、
同様の接待を続けていた店
であることが多いです。
もし、営業中に
警察から事前の注意や指導があれば、
風俗営業法上の接待に抵触しないかを
確かめ営業体制・制度を変更しましょう。
※エリアや時期によって異なるので、
 逮捕・摘発になる前に
 必ず事前注意が入るというわけではありません。

そのうえで、もし、
接待に該当する行為が
お店の売り上げに直結するような場合
は、
風俗営業の申請を検討する
という選択肢も視野に入れたいところです。
風俗営業許可を得ると、
深夜営業はできなくなりますが、
ガールズバーなどでも
キャバクラと同レベルの接待ができます。




【飲食店は接待の認識がマスト事項】

現在でも
さまざまなスタイルの飲食店が誕生し、
接待ビジネスは今後さらに多様化する
と考えます。
その取り扱うサービスも
現在のトレンドを幅広く反映されている
と感じます。
また同時に、
当局の取り締まりや世間の風当たりは
ますます厳しくなることが予想されます。

接待すること自体は、
決して問題行為ではないのですが、
規制する法令が存在している以上、
営業する事業者は、
もはや知らなかったではすまなくなっています。


風俗営業法で定義される
接待をしっかり把握することで
警察の運用ルールにそって
お店の接客をシミュレーションしていき、
お店の営業に接待が入っているのか
営業実態の確認を十分にしていきたいですね。
それぞれの飲食店を営む事業者の皆さまが
お店の営業スタイルを確立し、
適切な運営をしていくこと
を願ってやみません。

WINDS行政書士事務所では、
飲食店営業、風俗営業の許可に関わる許認可申請において
幅広くサポートしております。
どうぞお気軽にご相談ください。