コラム

【知らなかった?!】ハンコの種類と効果

2022.04.27[日々のあれこれ]





【日本でのハンコの存在感】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
事業者が通常営業をおこなうとき
個人であっても、日々の生活で
買いものや申し込み、契約をおこなうとき
日本で必須アイテムとなっているのが
ハンコです。
最近は、
行政でもスタンプレスを奨励
している傾向が高まり、
許認可申請はだんだんとハンコが不要
となってきてはいますが、
それでも重要な場面では
現在でもまだまだ欠かせないアイテム
といえます。

実は、印鑑にも、
使いみちによっていくつかの種類
が存在し、
それぞれに効果が違う
ということは、ご存じでしたでしょうか。




【ハンコの呼び方】

私たちは、ハンコのことを
印鑑と呼ぶことが多いですが、
実際には、
ハンコにまつわる名称は
次のような違いがあります。

 印章: ハンコそのもの
 印影: 書類に押すハンコの朱肉の跡
 印鑑: 自治体や金融機関に登録した印影



【ハンコの種類はいろいろ】

事業者の場合、
一般的によく使用するハンコは、
次の4種類に分かれます。

①実印
その事業主や法人の代表として
使用されるハンコで、
代表者印、丸印
という呼び方をされることも多いです。
事業主として営業をスタートするとき
法人設立時に法務局に届け出るとき

に必要とされます。

外枠には事業者名や屋号
内枠には役職名
入っています。


※昔から、簡素な実印として、
 シャチハタ印に代表される
 三文判
 
と呼ばれているものもあります。
※法人形態によって、
 内枠部分の記載が次のように変わります。




②銀行印
事業者が
金融機関で預金口座を開設するとき
預金口座から入出金したいとき

に必要とされるハンコです。
古くからは、
手形の発行のときにも使用されてきました。
※約束手形の利用は、
 2026年までに廃止の方向で
 政府が産業界に求めていくことが
 発表されました。

 ⇒NHKの報道

①と非常に似ていますが、
代表者印よりもひとまわり小さい印で、
内枠には
銀行之印という文字が入っている
ことが特徴です。



③社印
事業者が通常営業において
発行する会計書類
(見積書、納品書、請求書、領収証など)
に使用するハンコで、
事業者の意思確認や承諾をあらわしています。
角印、認印
という呼び方をされることもあります。



ちなみに、
私たち行政書士のような士業者

職印(先生印・資格印)
というハンコもよく使います。



④住所印
事業者が契約書や封筒、
領収証などに宛名を記載するとき

に使用するハンコです。
私自身は、
ゴム印と呼んだりもしています。

これら社印を含めた
会社ハンコのすべて=①②③を、
社判
と呼び、

法人や屋号を持つ個人事業主は
必須のハンコ

と言えます。




【ハンコの証拠能力】

ハンコにはそれぞれ種類がありますが、
実は、法律的には
あまり効力の違いはありません。

たとえば、いわゆるシャチハタ印でも、
捺印すれば契約などに合意した
という明確な意思表示になるわけです。

ただし、
ハンコを押す
シチュエーションや方法によって
証拠能力の強さが変わります。




ここで、
サインをあらわす
「署名」「記名」という
2つの言葉がありますが、

 署名:本人の直筆サイン
 記名:ゴム印や端末での氏名入力


というはっきりとした違いがあります。

直筆となる署名は、
筆跡鑑定によって
当事者が書いたものかをチェックされ、
非常に証拠能力が高い行為として
認知されています。

さらに、
「捺印」「押印」は、

 捺印=署名捺印
 押印=記名押印


と略して呼ぶこともでき、
厳密には定義に違いがあります。

したがって
契約や申し込みが成立するとき、

サインするかしないか
サインは手書きか入力か

ハンコを押すか押さないか


の3つによって
証拠能力の強さが変わってくる

ことを念頭に置いて
申し込みや契約手続き
をおこなった方がよいでしょう。




【書類に沿ったハンコルール】

ハンコを押す対象書類はさまざまなものがあり、
その押し方もケースバイケースです。

書類や目的に応じた捺印方法を
事前に知っておくと、
日常生活はもちろん
ビジネスシーンでも大変便利です。

CASE1 実印
契約書への合意を表現するルールで、
合意内容の引き抜きや改ざんを防ぐ
契約印としての目的があります。

複数枚で構成される契約書が
一連のものであることを証明するため、
全ページにまたがるように捺印します。
袋とじの場合は、
表紙の表裏両面、製本テープにまたがるように
捺印します。



CASE2 割印
複数枚の書類がワンセットである証明のため
のルールです。
契約書の場合は、
原本と写しを少し重なるように並べ、
2枚をまたぐように捺印します。
領収書のように切り離せるタイプの書類は、
切り取り部分の左右をまたいで捺印します。



CASE3 消印
貼られている印紙の再使用禁止
を目的に
領収証に頻繁に使われるルールです。
書類と印紙に重なるように捺印します。
※捺印ではない署名消印も認められていますが、
 「印」と記載したり
 2本線で斜線を入れてしまうと
 消印として無効となります。




CASE4 訂正印
書類を訂正する目的に採用されます。
法人・個人問わず、
よく使われるルールではないでしょうか。

契約書の場合は、
訂正箇所に訂正線を引いて

「削除〇字、加入〇字」
のように追記し、
その訂正箇所の近くに捺印します。




CASE5 捨印
書類内容に間違いがあれば、
訂正してもOK
と契約者の意思表示
目的としたルールです。
書類の欄外に事前に押します。

安易に捨印をすると
当事者の都合で勝手に
書類内容が書き換えられてしまうリスク

が発生しますので、注意しましょう。





【やっぱり生活に欠かせないハンコ】

ハンコを押す行為は、
契約内容やステータスを確認できる
重要な証拠になります。
現在はスタンプレスの波が進んでいるものの、

契約や申し込み、事実証明においては
まだまだ重要な役割を果たしており、
法人、個人、国籍を問わず、
日本でのビジネスや生活において
知っておいて損はない知識
といえるでしょう。

ハンコの種類や捺印の意味を
よく理解して、
日常におけるトラブルを予防し
ビジネスにおいても有効な展開となるように
ととのえておきたいものですね。