コラム

【これからの事業発展のために】BCPの策定

2022.05.18[事業支援]





【取り巻く環境に対する事業対策】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
事業者が事業活動を継続していくうえで、
さまざまな緊急事態に備えておく必要があります。
特に、島国である日本では、
設備やオペレーションだけでなく、
災害やウイルス感染、有事など、
あらゆる事態に直面することが想定されます。
それら事態の影響による損害を最小限に抑えて、
事業を継続していくことは、
事業者にとって非常に強みになります。
そのために、事業者が策定すべきなのが、

BCP

です。




【BCPとは】

BCP(Business Continuity Planning)とは、
さまざまな緊急事態における
事業者の事業継続計画をいいます。
BCPを作成する目的としては、
事業所が遭遇するおそれのある
さまざまな危機的な状況に備えて
損害を最小限におさえつつ、
事業者で重要と考える
「事業の継続」
「オペレーションの早期復旧」
を図ることです。

緊急事態は予期せず、突然発生します。
事業者の経営基盤が脆弱であった場合、
廃業
事業の縮小
スタッフの解雇
などの状況に追い込まれてしまいます。


そんなとき、事業者は、
自分の事業を守るために
迅速かつ有効な手段を
とらなければなりません。
そのために、
平常時からBCPを用意しておく
ことは重要です。

近年、日本では、
2011年の東日本大震災をはじめ、
2022年現在でも、
新型コロナウイルス感染拡大
北朝鮮によるミサイル発射
ロシアによるウクライナ侵攻
南海トラフ地震予測

といった様々な脅威にさらされています。
これらから、BCPの社会的重要性は
ますます高まっています。


事業を継続していくために、
BCP策定が重要視される理由としては、
そのアプローチのベクトルにあります。

実は以前から、
事業者によって備えられてきたものとして、
防災対策存在していました。
この対策では、万が一の事態に備えて、
緊急連絡網や災害時の避難経路の確保など
早期復旧までの措置は
ある程度とられてきましたが、
事業継続という観点では、対応に限界
があり、事業者の策定としては
決して十分なものではありませんでした。

これに対してBCPは、
事業を継続することを明確な目的として策定
し、具体的な行動指針も示します。

こうして予防策をとりながら
万が一の事態に見舞われたとしても、
早急にリカバリーを実現し、
事業を中断することなく継続できれば、
クライアントや取引先、
株主の信用をキープ
できます。
結果、
事業マーケットで高い評価が得られ、
事業者ブランド価値の維持と向上
社会的な信頼が得ることもできるわけです。

※内閣府でも、2005年に事業継続ガイドラインを公表し、
 以降、積極的にBCPの策定を推奨しています。
 ⇒第4版

 https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/pdf/guideline202104.pdf

BCPは、
ただ策定するだけでは終わらず、
日々の事業活動でふれる
さまざまな変化に応じて
現状分析とサイクル的な対応改善をもって、
次なる戦略へとつなげることが大切といえます。





【BCPの策定ステップ】

まずはBCPという計画を
ひと通り作成することが大切です。

BCPは、各フェーズをふまえて、
段階的に策定を固めていきます。



STEP1:策定目的の設定
最初は、
経営理念や基本方針を確認し、
事業者としてあるべき姿や経営ポリシーなど
原点に立ち返ります。
また、雇用者として
スタッフの生活や命を守る責任
クライアントや市場への供給責任を果たし、
信用を守ることを再確認します。

STEP2:重要業務のピックアップ
事業者にとっての
メイン事業(=中核事業)を明らかにします。
メイン事業は、

売上の高い事業
安定している事業
納期や対応遅延によるダメージが大きい事業
事業者の評価や信頼維持のため重要な事業


など、
事業者の営業活動の観点から、
非常に大きなウェイトを占め、
緊急事態が発生したときには、
その継続や復旧の優先度も高いはずです。

また、
平常時よりも
マンパワーや情報ツール、リソースが
極めて少なくなったときに困る事業

として洗い出すことも有効です。
※(例)WINDS行政書士事務所
 法務サービスや経営コンサルティング業として
 大きく比重を占めるサービスは?
 インターネットが使えなくなったとき
 対応方法を検討するサービスは?
 ウイルス感染拡大で影響のあるサービスは?


事業者の取り扱っているのは
モノなのか、サービスなのか
その事業はどこからでも供給できるのか
エリアならではのオリジナル事業なのか


などといった視点から
優先的に選ぶべきと考えます。

STEP3:潜在リスクのピックアップ
STEP2で中核事業が明確になったら、
事業継続上、おそれのあるリスク
を洗い出します。

事業者にとって、
いろいろな災害や有事を想定して、

発生すると困ること
このままにしておくと良くないと思うこと
現状なんとかしなければと認識している課題


を明確にして、
対応策を導き出すきっかけを把握します。
※(例)WINDS行政書士事務所
 事務所の入っているビルが火災

 
事務所のある東京都で大規模地震発生
 代表行政書士がウイルス感染

STEP4:リスクの優先順位付け&対応策策定
STEP3で想定されるすべてのリスクに、
同じように対処するのは
現実的には難しいと考えます。
そこで、
事業者が持つ限られたリソースを
効果的に投入するために、
それぞれの潜在リスクに優先順位をつけ
優先度の高いリスクに絞って
BCPを策定します。

このSTEPのキーポイントと考えられるのは、
リスクの発生頻度深刻度です。
年、月、週、日別の想定発生頻度
実際発生した場合の見込みダメージ
といった軸で、総合的に判断していきましょう。
※(例)WINDS行政書士事務所
 火災リスクに備えてデータのバックアップ
 紙書類の電子化、データをクラウド化
 使用するPCをデスクトップから
 持ち運びできるノート型へ切り替え
 リモートワーク稼働の実現

※BCPをより精度の高いものとして使うために、
「BIA(=Business Impact Analysis:ビジネスインパクト分析)」
の導入も効果的です。

(図)BIA

STEP5:実現可能策の策定
BCPの最後の仕上げとして、
事業者が決めた対応策を
誰がどうやっておこなうのか

まで決めておくことが、非常に大切です。

災害や有事における緊急時には、
現場での混乱も予想されます。
とっさの対応を迅速におこなえるように
決定権限者や指示系統、対応作業の詳細
まで具体的に決めていきます。
リスクと同じ事態が現実に発生してから
平常時に戻るまでのタイムスパンも
長いものになることも予想されます
ので、

人的リソース
施設・設備
資金調達
体制・指示系統
情報


の5つの視点で
きめ細かく決めていきます。




【事業リカバリーまでのプロセス】

策定したBCPは、
絵に描いたモチとなってはならず、
実行可能なものとして機能すべきですので、
具体的で実践しやすいBCPとして
活かしていかなければなりません。

策定したBCPにおける課題や注意事項
となるものは、次のようなものがあげられます。



BCPで策定した対応策を、
実行に移すシチュエーションを経験する
のが1番よいのですが、
そのような事態の発生は、本来避けたいもので
あまり好ましくありませんね。
そこで、
事態発生から対応策の実施
平常時までのリカバリーまでを
できるだけ明確にイメージする

ことが必要となります。



PHASE1:被害状況の確認
まずは、
どのような被害が発生しているのかを
現状を正しく把握、理解する必要があります。
最優先事項としては、
スタッフの安否確認
があげられます。
対応策の初動を早くするうえで
安否確認の連絡フローを構築が欠かせません。
たとえば、
安否確認連絡をシステム化することとなれば、
各スタッフの置かれた状況登録や
自動集計といった機能がはたらき、
収集情報を組織単位で
スピーディかつ適切に共有できます。
さらに、連携手順を肉付けしていけば、
必要手段や共有すべき情報を事前に取り決め
事業者が一丸となった協力体制
を整えることができます。

PHASE2 代替手段でフォロー
次に必要なこととして、
緊急事態で受けたダメージに対する応急措置
をとることがあげられます。
発生した事態の規模が大きく
すべてのリカバリーが見込めない場合
であっても、
不足しているリソースを
ある程度のレベルで代替できる仕組みを
事前に構築
しておきたいところです。
そのためには、
業務遂行に必要なモノや人、情報
を事前に把握
して、
緊急時の代替手段を認識
しておきます。



緊急事態に対する
こうした代替手段としては、
最近定着してきた
リモートワークも有効な一例となります。
外部から安全にアクセス環境が確保できれば、
スタッフ全員が出社しなくとも
安全な場所から業務の継続が可能となります。

PHASE3 リカバリー作業
最終的に目指すべきなのは、
事象発生前の元の状態にすることです。
そのためには、
ダメージを受けた事業を復旧
平常営業に戻す手順を整備します。

現在、
事業者が営業していくにあたっては、
やはり情報システムが
ツールとして欠かせません。
インターネット回線を確保して、
リモートアクセスできる
データセンターサーバーの維持
は必須となっています。
こうしたシステム環境に
なんらかの影響が出た場合は、
その完全復旧のために、
施設や設備などのハードウェア
サーバーやネットワークなどのソフトウェア
両方のリカバリーが課題といえます。
たとえば、
平常時から、
設備やシステムの設計や設定環境
を正確に確認
し、
緊急時でもデータが保護できるように
ログなどの稼働情報収集
データのバックアップ

といった対策を行う必要があります。

今までも、
バックアップ回線の確保
ネットワークの二重化
遠隔地に複数のデータセンターの用意
といったインフラの整備は
大きな課題となっていたものの
中小事業者としては
完全な解消が難しい場面が多いものでした。
しかし現在は、
信頼性が高く安全なクラウドサービスも登場し、
安全で効率的に通信インフラをキープ
することが可能となっています。




【BCPが示す未来予想図】

想定していなかったときに
思いもかけないことが起こる。

事業を進めていくうえで、
このようなことは十分にあり得ます。
最初からあらゆる事態を想定して、
起こり得るリスクを全部網羅し
完璧な計画の策定は理想ですが、
ほぼ不可能といっていいでしょう。

完璧を求めるあまりBCPの完成が遅れ、
事象が発生した時に
なんの対応もできなかった

といったことにならないように、
事業者にとっての
最優先事項を
できる範囲から
少しずつ進めていく

ことがベターです。

BCPに基づいて、
事業者だけでなく
スタッフも自主的に判断し行動
するために、
対応プロセスを十分に理解し
平常時でも常にリスクを意識できる体制
を作り上げることができれば、
組織としてのモチベーションアップ
にもつながりますね。

事業の状況や社会の状況は
常に変化を続けていますので、当然、
策定したBCPとビジネス実情のずれ
が生じることもあるでしょう。
また、
策定で備蓄した備品や施設の経年劣化
もあります。
備蓄品の点検や避難訓練は定期的に行い、
策定したBCPも
定期的な見直しやダブルチェック

などをしていくことで、
BCPはより良いものになっていくはずです。




【BCPで安定した事業展開を】

BCPは、緊急時において
事業者のビジネスを守ってくれる
強い盾になりますが、
策定するうえでは
最初からパーフェクトな計画を目指さず
現実的にできることから積み上げていく

ことも大切と考えます。

深刻なリスクに直面しても
冷静に速やかに対応するために、
積極的に策定に取り組みたいですね。

WINDS行政書士事務所では、
日常に潜む事業者さまのリスクと対応策を
一緒に考え
BCP策定のサポートを承っています。
どうぞお気軽にご相談ください。