【遺産争族にしない】遺言書の「付言事項」
2025.01.22[遺言相続]

【遺言書の効果がアップする記載事項】
こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
万が一に備えて、
自分の財産や手続きを大切な方に託す
行為のひとつとして、
遺言書をのこすことが挙げられますが、
その内容が現実的、事務的に終始するだけでは
当事者全員の納得を得るのは難しく、
味気ない印象も否めません。
そこで役に立つのが、遺言書のなかの、
付言事項
です。
付言事項を加える、
また記載を工夫するだけで、
争いやトラブルを防止したり
当事者が納得して次に進むこと
にもつながる、有効なものです。
遺言書上、
メインとなる法定事項との違いや
付言事項の項目、注意事項などを紹介します。

【付言事項とは】
付言事項とは、
遺言書に追記できる項目で、
自分の希望や想いなどをメッセージにした、
いわば手紙のようなものです。
この事項には、法的な効力がなく
遺言書への記載も必須ではありませんが、
遺される方々に対しての感謝や
遺言書をのこすまでの経緯や理由など
を伝える方法として役立ち、
私も記載をおすすめしています。
本コラムでは
「付」言事項とご紹介していますが、
「附」言事項という漢字の使い方もありますが
両方とも、読み方も意味も変わりませんが、
前者の漢字で記載する割合が多いです。
遺言において、付言事項は
大きくふたつの効果を発揮します。
①争いやトラブルの低減
付言事項が遺言書にあることで、
遺される方々同士の争いや揉めごとを
防ぎ、減らすことに最大の効果がある
考えます。
たとえば遺言で
法定相続と異なる割合を指定して
相続する遺産の割合が少ない相続人が
発生する場合、
その相続人の不満を生み
揉めごとのきっかけとなるおそれがあります。
そのようなシチュエーションを想定して、
付言事項として
相続割合設定の理由などを記載することで
すべての相続人の理解を促し、
不満の解消につなげられるでしょう。
②遺言者の率直な想いを届けられる
法律的に記載が決められる遺言事項とは違い
付言事項は自由に文章を作成できるので、
遺される方々に対して
遺言者自身の素直な気持ちや想いを
ストレートに伝えることができます。
やってほしい/ほしくないこと
葬儀や納骨の方法を記載できれば、
後々のスムーズな相続手続き
遺言者の気持ちが尊重さる
関係者同士の円満な関係の維持
などにつながります。

【遺言事項との違い】
相続財産がある場合、
通常は、法定相続または遺産分割協議のうえ
各相続人に相応に等分されることになりますが、
遺言書があることで
相続処理方法を事前に決めることができます。
この遺言書上のメイン記載事項を
法定遺言事項と言い、
次のように定められます。
これらの記載は法的な効力が発生し、
直接的に相続手続きに影響がおよびます。
そのため、
不備なく慎重に記載しなければなりませんが
その内容のほとんどが
処理方法や手続き方針となるため
少し冷たい印象も否めず、
その遺言内容が法定遺言事項だけだと
さまざまな感情を秘める相続人の全員が
必ずしも納得するとは限りません。
対して付言事項は、
法的な効力はないものの
型にはめることなく自由な記載で
相続人の想いにもせまる
というメリットがあります。
【付言事項の書き方や記載項目】
付言事項は、
通常、法定遺言事項を書き終えた後
遺言書への署名・捺印前に
最終事項として記載
することが通常です。
その内容は
遺言者に自由に委ねられますが、
遺言書のメインはあくまで法定遺言事項
であることを考えて、
その記載はコンパクトにまとめるのがベター
と考えます。
もし、あふれるほど
たくさん記載したいものがある場合は
個別に手紙などを用意すると良いでしょう。
具体的な記載内容としては
次のようなものが多いです。
※遺留分については、
こちらのコラムでご紹介しています。
一方、次のような
ネガティブな記載は避けたいところです。
たしかに
なにを書いても自由で法的効力もないですが、
ネガティブな記載で遺言書を締めくくっても
遺された方々が嫌な気持ちになったり
ショックを受けるなど後味が悪くなる
ばかりか、
手続き後のいわゆる「争族」を引き起こし
裁判沙汰となるリスクもはらんでいますので、
ポジティブな内容を記載したいところです。
【付言事項に伴う注意ポイント】
遺言書に付言事項を加えるときには
次の点にも注意したいところです。
1⃣法定遺言事項とは内容を区別
遺言書を残す1番の目的は
相続財産の処理方法を確定する
ことにあります。
その効力は、
法的遺言事項として記載されるもの
だけに発生しますが、
付言事項は
遺言書の法定効力をアシストする
遺言書のエピローグ
という位置付けとして、
法的遺言事項とははっきりと区別し、
遺される方々の今後や、感謝の言葉など
遺言者ご本人の想いを記載し
遺言書の本来の目的を果たしたいところです。
2⃣想いの強いものを厳選記載
付言事項の
記載ボリュームは多過ぎないようにする
ことを
おすすめするようにしています。
いろいろと想いをめぐらせることがある
と思いますが、
付言事項が多過ぎると
伝えたいことがブレたり
強く伝えたいことが曖昧になるなど
遺言書本来のの役割を果たせなくなる
おそれがあるためです。
たくさん書きたいことがある場合は、
そのなかで
もっとも遺言書にのこしたい内容を厳選し、
遺言書への記載から外した残りの記載は
お手紙やエンディングノート
録音や録画などのデジタルデータ
などを活用するのも良いでしょう。
3⃣ビジネスライクよりも想いを大切に
付言事項は、
記載も形式に縛られず自由で
決まりがないからこそ、
どのように書けば相手にしっかり伝わり
理解してもらえるか
が問われます。
たとえば、
遺産の分割方法について納得してほしい
などと思う場合は、
その理由を理解してもらえるように
意識して記載すべきですし、
埋葬方法を指定する場合は、
場所や葬儀内容の詳細まで記載することで
遺される方々にとって誤解のない理解
につながります。
あくまでも
お願いや、伝えたいこと、今後の助言などに
フォーカスし
事務的でなく、誤解を生まないように工夫
して記載しましょう。
4⃣遺留分の記載は状況整理で検討
付言事項で記載すべきかどうか
慎重なご検討をおすすめしたいのが、
遺留分についてです。
遺留分についての知識の有無だけでも
相続人への記載アプローチは異なる
と思われます。
仮に、遺言書上、
遺留分の侵害割合で財産配分を指定する場合は、
特定の相続人向けに対する配分が
故意に少なくなると
その相続人は心証を悪くする
ことも想定されます。
またたとえば、
「遺留分を請求しないでね」と伝えたとしても、
その遺言者の気持ちを深く理解、納得
してくれるかどうかはその相続人による
ところもあるでしょう。
その結果としては、
遺言者の気持ちを受け止めてくれるかどうか
を考えながら、遺留分関連の記載をすべきかを
ご検討いただくのも良いでしょう。
※遺留分については、
こちらのコラムでご紹介しています。
5⃣遺言書の形式による記載方法の違い
遺言書は、
大きく3つの方式に分かれます。
※遺言書の方式については、
こちらのコラムでご紹介しています。
たとえばこのなかで、
公正証書方式を選ぶ場合は、
公証人が作成するので
記載ルールはあまり気にせずに済みますが、
自筆証書遺言を選ぶ場合は、
法律上有効とするため
法ルールにしたがって記載
しなければならず、
遺言者が自分自身で記載する必要があり
付言事項も例外でなく自書が求められる
⇒パソコン入力NG
ことに注意しましょう。
※財産目録の作成は、
自筆証書遺言書上パソコン入力でもOKです。
<法務局:付言事項のパソコン作成NG>
6⃣法定遺言事項と内容を合わせる
当たり前だと思われるかもしれませんが、
遺言書作成において
付言事項はあくまで
法定遺言書と内容を合わせる
ことが、非常に大切です。
もしも、法定遺言事項と内容が違うと
錯誤無効が疑われてしまい
遺言書自体も無効となるおそれがあります。
いろいろと付言事項を書き足しているうちに
法定遺言事項と内容が変わってしまった
といったことのないよう
十分に注意しましょう。
ちなみに、
後々の相続税申告手続きにおいて
税理士等専門家による書類作成
がおこなわれた場合
取得財産に応じた相続人の納税額確定のため、
また内容によってはその後の意見聴取対応に備えて、
申告書に遺産分割協議書や遺言書を添付
する場合があります。
法定遺言事項と付言事項の内容が
アンマッチが発覚し、税務調査
などを引き起こすことのないようにしましょう。
※国税庁:書面の添付・意見聴取
【遺言書を輝かせ、みんなの心に灯る「付言事項」】
実際に遺言書を作成する際に
さまざまな不明点や迷いが発生するものです。
また記載表現に配慮がないことで、
無用なトラブルを引き起こしかねません。
そこで遺言書に付言事項を加え、
遺言の内容にメリハリを付けることで
スムーズな相続手続きや
相続人の円満な関係に役立ちます。
遺言者の偽ることのない想いや気持ち
を残すことで
遺言者だけでなくすべての関係者が
心残りのないようにしたいですね。
WINDS行政書士事務所は、
付言事項を含め
遺言書作成サポートを承っております。
お客さま個々の事情に合わせて、
最適なアドバイス、記載サポートにより
スムーズで円満な相続を実現します。
どうぞお気軽にご相談ください。