コラム

【行政書士がCHECK】トランプ新政権によるアメリカVISAへの影響

2024.12.25[VISA]





【決定!第47代アメリカ大統領】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
今年秋、アメリカで大統領選挙がおこなわれ、
共和党のドナルド・J・トランプ氏が再選
を果たしたことは、記憶に新しいところです。

アメリカが経済的にも政治的にも
世界をリードする超大国であることは
周知のとおりであり、
その国の大統領に誰が就任するかは
日本を含めた諸外国にも大きく影響する
と言われています。
私たちにとって
アメリカに渡航、在留するために必要な
VISAの取得においても
新政権の政策が関与することになるでしょう。
これまでも実際
大統領が変わることによって、
VISA審査や取得、更新が難航する
事例は少なくなく、
新政権の効果は気になるところです。

就労VISAを中心に
トランプ氏の2期目大統領就任による
申請や審査への影響、
そして事業者が取り得る対策について、
行政書士の目線で考えてみました。




次政権をうらなう?トランプ氏の前期実績&発言】

再選を果たしたトランプ氏が
第47代大統領に就任し
新政権がスタートするのは
就任式がおこなわれる
2025年1月20日からを予定しています。
アメリカ大統領の任期は4年間、
 同一人物が就任できるのは2期まで
 です。(=3選NG)


これにより、
VISAが関わる移民政策も含め、
今後の政治方針の方向性は
2017年から2021年までの1期目の政策実績、
そしてこれまでの発言から
探ることができそうです。

<前政権の政策>
1期目就任の際に顕著であったのが、
対外諸国に対する輸入関税課税
厳格な移民政策

でしょう。
特に、
移民政策のほとんどは
国境強化や不法入国防止に集中

したものでしたが、
グリーンカードや既存VISAにおいても
審査の優先順位や制限的措置
が見直され、結果、
外国人の雇用や亡命、認められる渡航先
まで幅広く影響がおよびました。

前政権において、
特にVISAやグリーンカードに影響がおよんだ
と思われる政策をまとめてみました。
いずれも、
VISA申請や入国後の生活、ビジネスに
大きな影響が想像できるかと思います。


VOGUE JAPAN:ゼロトレランス政策関連記事
BBS:DACAプログラム廃止記事
Bloomberg:TPS打ち切り記事
Foresight:MPP記事

<過去の発言>
新大統領となるトランプ氏による
選挙前後の言動にも注目してみると、
やはりVISAやグリーンカードにも
何らかの影響をおよぼしそうなものがあります。

①特定対象の市民権付与廃止
2023年、トランプ氏は
アメリカ国内で出生した
不法滞在移民の子に対して
自動的な市民権付与の廃止

を公約事項としていました。
ロイターの記事

日本人には
直接関わりがあるわけではありませんが、
この公約は、アメリカの憲法はもちろん、
合衆国としての国そのものの存在意義
をも問われ、
VISAや人道的措置にも波及しそうな内容です。

②移民制限の促進
トランプ氏は11月の再選直後に
前政権をそのまま継続する形で
トランプの壁拡大
VISAプログラムの全般的見直し
難民・亡命審査プロセスの厳格化

を新施策として提唱しています。
特に、
H-1BVISA
EB-5(投資家)VISA

などについては
直接そのVISA名を挙げて
要件を厳格化する方としています。
Forbes JAPAN:H-1BVISA関連記事

③渡航禁止措置
前政権でも
イスラム信仰外国人の入国禁止措置
などをとってきたトランプ氏は、
新政権でも同様の措置を復活させる
と述べています。
日本経済新聞:過去渡航禁止措置記事





【アメリカVISAへの影響】

来年からスタートする新政権で
トランプ氏が公約や明言としているのは
前政権の施策を継続する
というポリシーが明らかです。
これを踏まえて、
アメリカVISAサポートの行政書士として
私が想定する影響は次の4つです。

予想①複数のVISA要件厳格化
トランプ次期大統領は
VISA審査プロセスをより細かく厳しくする
という、いわゆる
Extreme Vetting(=極端な審査)
を提唱しています。
BBCの報道記事


これは、
VISA保有者が政府から受けられる様々な恩恵
(合法的地位、許可、サービス、権利など)
における手続き上、
VISA申請をおこなう外国人に対して
提出書類や要請、追加質問の増加
更新の一時停止
をはじめ、
生体認証や身元調査、
セキュリティ・スクリーニングの強化

などが考えられ、
VISA許可や発給、雇用、出入国、
MEDICAREなど各資格や受給
にも影響がおよぶでしょう。

想定される具体的なVISAとしては、

E
H-1B
H-2A
H-2B
L-1
TN
O
OPT PROGRAM
永住者(グリーンカード)


を申請、更新する場合に
より慎重、確実な申請をすべきでしょう。

また、
これらのVISA保有者の親族の方は、
現状受けているベネフィットの受給資格を
今一度確認しておきたいところです。
※アメリカVISAの種類については、
 
こちらのコラムでご紹介しています。
※H-2A/Bは
 臨時労働者としての
年次対象国リスト
 が運用されており、
 農業、建設、接客業、林業
 などの業種が対象となります。


予想②移民法&関連ルールの再整備
不法移民の流入増を抑える目的から、
トランプ次期大統領は、
移民制度を抜本的に見直すと思われます。
そのためにまずは
主軸ルールとなる移民法をもとに、
申請対象の外国人はもちろん
その雇用者や関係者の精査
不法滞在外国人の強制送還徹底
従来の人道的制度の見直し

などがおこなわれる可能性があります。

もちろん、
国の制度として法廷審理などを経て
おこなわれることになりますが、
アメリカの裁判所によって
規則制定・変更における
大統領の自由裁量の見解
がどうか
にも注目したいところです。
日本経済新聞:大統領の裁量についての直近判決記事

予想③入国制限
前政権で
渡航禁止措置対象となった国の出身者は
新政権でも何らかの形で入国制限を受ける
と思われます。
またこれまでの世界情勢を鑑みて、
その対象国リストもアップデートされるでしょう。
アメリカ国土安全保障省:Yearbook of Immigration Statistics

予想④優良留学生の優遇
優秀な人材流出防止策として
トランプ次期大統領の公約事項のひとつに
国内大学卒の外国人学生に対する
グリーンカードの自動的付与

が掲げられています。
①と相反するような公約ですが、
現実となるかどうかはともかく、
前政権でのスタンスの一部が発展的に転換された
と見えるに大きく期待できます。
CNNの記事






【関係者が今からできる備え】

過去にも
抜本的な政策の提唱と実施
を進めてきたトランプ政権ですが、
同氏の発言や公約、そして報道から
次期でも同様の傾向がうかがえるなか、
私は、
特に就労VISAの申請には注意したい
と考えます。

就労VISAとなると、
申請者以外にもスポンサーである所属機関
またその家族も審査対象
となり、
やはり事前の対策や把握すべき注意事項
などは気になるところです。

来年の次政権スタートに備えて、
今後のVISAにおいてでき得る対策
チェックすべき情報
などを3つ挙げてみました。
今後の申請準備にご参考ください。

①受入体制の整備
移民政策が厳格化される場合、
VISA審査プロセスにおいては
所属機関調査の強化も予想されます。
実際申請をおこなった際に、
追加要請に対する対応や審査が
スムーズに進むよう、
また審査期間の長引きを防ぐためにも、
所属機関としての事業基盤や組織構成、
申請者の担当業務や同機関における重要度

などをクリアに説明できるよう、
準備するのがベターです。

これは
日本のVISAにも共通することですが、
転勤者や駐在員が対象の
L-1やE以外の就労VISAは、
許可を得たとしても、
在留期間は1年スタートとなることが多いです。
申請者1名に対して2名以上の現地雇用
もし難しい場合でも、
現地雇用1名に加え
盤石な収支計画や事業プラン
といった説明、照明が望まれます。

②コンプライアンスの強化
新政権が前期に引き続き掲げている
不法在留防止や国益を考慮すると
新たなアプローチに備えたいのが
社内コンプライアンスでしょう。
たとえば、

労働条件申請(LCA)や
公共アクセスファイルの遵守
内部監査の実施
就労資格証明書(I-9フォーム)などの管理

などを十分におこなうことで、
所属機関としての健全性や透明性
を主張できるように準備でき、
不許可リスクや審査の長引きの軽減
に役立ちます。


③VISAや申請スケジュールを熟考
前政権でも発足と同時に
特定のVISA審査の難化や処理期間の長引き
などが顕著に見られたことから、
次政権でも
同様のアクションが発生するかもしれません。
申請前後で政策発表となり、
当局の審査や要請に対応できるのが難しい
と判断される場合は、
所属機関は緊急でない限り、

VISA申請を保留して
新政権の政策が正式リリースを待つ

または、

商用と作業の区分け
現地法人の有無
報酬支払元の区別

などが明確にできるようであれば

ターゲットとするVISAの転換の検討
(例:B-1 Industrial Worker、
 B-1 in lieu of Hなど)

もひとつの手段と考えます。


アメリカの場合、
VISAの許可は領事館からの「入国推薦状」

という役割が強く、
必ずしも入国を保証するものではありません。
そのため、
より安全に、確実に入国が可能なVISAの選定
も大切です。
当事務所までご相談ください。

反対に、
グリーンカードの取得を目指す皆さまは、
当初よりも
申請準備やPERM申請を早める計画を立て、
新政権における新政策に左右されないようにする
ことをおすすめします。

 

【来年からの新政権に向け改めてVISA対策を】

いよいよ来年からトランプ新政権が始まり、
各国の情勢も相まって、
アメリカにおける移民政策は
一定の見直しや制限が見込まれます。
政策の変化によって、
日本から在留、または永住のために
渡航される皆さまの申請にも
少なからず影響がおよぶと思われますので、
来年以降明らかになる最新政策を注視しつつ、
VISA申請に備えたいところです。

WINDS行政書士事務所は
国内外の政策や情勢にも目を向けつつ、
皆さまのVISA申請を十分にサポートすべく
対応いたします。
VISAやグリーンカードにおける
コンサルティングも承っておりますので
ご心配やご相談ごとなど、
お気軽にお問い合わせください。