【下請法改正&法律名リニューアル!】中小受託取引適正化法(取適法)の施行
2025.12.24[契約]

【2026年1月施行!改正版下請法】
こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
ビジネスにおける契約事項として、
契約業務やサービスと同じくらい
重要なのが、価格や報酬額でしょう。
しかし、
エネルギーコストや
それに伴う人件費や原材料費の高騰
を原因として、
実際の事業者間取引において、
いわゆる価格転嫁
が頭の痛い課題となっています。
この状況を受け政府は、
受発注両者がフェアな立場で
価格交渉できるよう
構造的な価格転嫁の定着
のための新スキーム整備が進められ、
そして打ち出したのが、
改正版下請法である、
中小受託取引適正化法
の制定で、
早くも年明け1月からの施行を控えています。
この法律によって、
これまでの下請法よりも
適用取引やフリーランスの保護範囲が広がり、
禁止事項やペナルティのカスタマイズなど
措置がとられ、
事業実務上影響が大きいことは間違いありません。
本コラムでは、
この新法のルールや誕生の背景、
受発注の両事業者が求められる対応を
行政書士の目線で解説します。

【もともとあった下請法→取適法に生まれ変わる!】
近年の物価や党務コストの急騰をきっかけに、
事業者間取引の適正化を図るべく、
2025年5月16日
公正取引委員会と中小企業庁は
下請法改正案を国会に提出、
可決・成立しました。
この法案によって、
これまで下請法と呼ばれてきた
下請代金支払遅延等防止法は大幅改正
され、
中小受託取引適正化法、略して取適法
と、その法律名もがらりと変更、
来週2026年1月1日から施行されます。
今年2025年いっぱいまでの現行法である
下請法は、
下請代金の支払遅延等防止
親事業者の下請事業者に対する不当取引規制
下請事業者の利益保護
を掲げ、
健全な国民経済の発達
を目指すべく
独占禁止法の特別法
として存在してきました。
独占禁止法も下請法も、
公正取引や自由競争環境保護の面では
非常に大切な法律ですが、
そのうちの下請法について
わざわざ法律名が変わるレベルまでの
改正に踏み切った背景としては、
次の3点が挙げられます。
①適切な価格交渉&転嫁促進
原材料費や人件費の上昇傾向が続くなかでも
賃上げを実現していくには、
営業のほか、原資確保するために価格転嫁
が必要となるでしょう。
しかし、
取引自体がフェアな環境下でなければ、
事業者間の価格交渉は難しくなります。
取適法によって、
受注事業者側がストレスがかからないよう
商慣習を是正し、
適正取引と価格転嫁を大きく促進
するものとなるでしょう。
②取引基盤整備の必要性
従来の下請法でもカバーできなかった
取引上の課題が残っており、
ペナルティも含め
行政対応の強化が長く望まれていました。
今回、新法として整備することによって
適正取引と見える化アップ、
価格転嫁を促進し、
事業者間の公正な取引関係が確立するでしょう。
③時代遅れなルールのアップグレード
働き方やビジネスの多様化によって、
フリーランスや個人事業主を中心に
ビジネススタイルも広がっているなか、
現行の下請法ルールに当てはまり切れない
取引課題も指摘が挙がっていました。
昨年のフリーランス新法に続いて
取適法が施行されることで、
様々な形態、サービスを持つ事業者が
安心して取り組めるビジネス環境に整えることは、
まさに時代の変化に応じた措置
と言えるのではないでしょうか。
※公正取引委員会:取適法関係の取組
※フリーランス新法については、
以前のコラムで詳しくご紹介しています。
こうして、
適正取引を目的とした
現代の取引実態に合わせたルール整備の必要性
から、取適法が誕生しました。

【取適法誕生!改正ポイントは?】
取適法の施行によって、
従来の下請法で運用された仕組みが
大きく見直されます。
法対象となる事業者の皆さまが
注目すべきおもな改正点は、次の6点です。
①関連用語の見直し
下請法から取適法という法律名に改められ、
皆さまの目に真っ先に焼き付くであろうことが
変更された使用用語です。
これまでよく使われていた下請という言葉は、
発注側と受注側の上下関係を連想し、
対等ではない表現でした。
しかし時代の変化に伴って、
ビジネス上、発注事業者は
受注事業者を下請業者などと呼ばなくなる
ケースも増え、
下請法で使用されてきた法律用語は
現代のビジネスに合わなくなってきました。
そこで法改正によって、ルール運用をカバーすべく
法律名とともに
下請という言葉自体を廃止し
従来の関連用語が改められます。
<公正取引委員会:法律名と使用用語の変更&追加>

※特定運送委託については、
この後の改正ポイント④で解説します。
②協議に応じない価格決定の禁止
原材料費やエネルギー価格、労務費など
のコストが上昇傾向にあります。
それにもかかわらず、
発注事業者が
そのコスト上昇額分を取引価格に反映せず
従来価格のまま取引を継続させる、
いわゆる価格据え置きが
そして、
通常市場価格に比べ著しく低い価格でありながら
市場価格の算定が難しく違反を立証しにくい
買いたたきが問題視されてきました。
受注事業者もビジネス上立場が弱く、
取引停止をおそれて
価格交渉を切り出すこと自体困難で、
申し入れができたとしても、
発注事業者にまともに取り合ってもらえない
門前払いが横行していました。
取適法ではこの事態に対応すべく、
協議のない価格据え置きを
買いたたき行為の一種とみなし
適切な協議なく一方的な代金額の決定を禁止
することによって、
受注事業者が交渉のスタートラインに立てない
という状況を解消し、
受発注事業者が対等な立場で話し合える機会を
法的に保障し、
ひいては中小企業が賃上げ原資を確保できる
公正な取引環境を整えます。
<公正取引委員会:協議に応じない価格決定の禁止>

③手形払いなどの禁止
取適法では、
受注事業者の資金繰り負担解消のため、
委託代金の支払い方法が厳格化されます。
具体的には、
決済方法のひとつとして活用されてきた
手形払いが原則NGとなります。
手形は
支払サイト現金化できるまでの期間が
平均100日前後と非常に長く、
受注事業者者は売り上げを計上しても
この期間手元に現金がない状態となり、
経営が圧迫されてきた実態があります。
また、
期日前の現金化には金融機関に割引料を支払う
必要があり、
キャッシュフロー管理面から
コストと手間もかかっていました。
これまでも行政指導によって
支払サイトの短縮など進められてきましたが、
商慣習として手形は根強く残っていた
こともあり、
今回の法改正で抜本的に問題を解消すべく、
支払い手段を原則現金払いに限定し、
受注事業者負担となる支払い手段を全面禁止
とすることになります。
<公正取引委員会:手形払等の禁止>

ちなみに
委託代金の支払期日である60日以内
とするルールは、
従来の下請法ルールからキープとなります。
<公正取引委員会:委託金額受領シミュレーション>

手形以外の支払い方法としては、
電子記録債権やファクタリング、一括決済方式
などもありますが、これらも、
支払期日までに現金化が難しいものは同様にNG
となります。
④保護対象取引類型の拡大
取適法では、
下請法上で保護の対象となっていた取引に
特定運送委託が追加
されます。
従来の下請法では、
法適用の対象取引類型が、
- 製造委託
- 修理委託
- 情報成果物作成委託
- 役務提供委託
の4種類のみに限定されていましたが、
トラック運送業者などが荷主から受ける
特定運送委託を適用対象に追加することによって
受注側の個人ドライバーや中小運送会社が
発注側の大手荷主や元請運送会社からの
不当な取引を強いられることを防ぎ、
より公正な契約を交わせるようにするため、
取引環境の整備を目指します。
<公正取引委員会:対象取引に特定運送委託を追加>

<公正取引委員会:取適法における規制対象の追加>

※5種類の取引類型については、
公正取引委員会から詳しく例示紹介されています。
⇒取適法ガイドブック
⑤適用規模基準の追加
従来の下請法から、
受発注事業者の資本金額を
法適用基準としてきましたが、
取適法では、
適用基準に従業員数基準が新たに加わります。
現在は、ITやサービス業界を中心に、
資本金は少なくても、
売上規模や従業員数が非常に多く
事業を急速に拡大する
フットワークの軽い大企業が存在します。
しかしこのような企業が、
自社より資本金額の多い事業者に発注する場合、
これまでの資本金額基準だけだと下請法対象外
となり、
実質的に発注事業者の立場が強いはずなのが、
受注事業者は法的保護を受けられず、
不当な取引を強いられる事例がありました。
そこで、
従業員数という新しい基準を加えることで、
資本金の額だけでは把握できない
事業者間の実質的な力関係を
より正確に反映し、法適用にあてはめられる
ようになります。
<公正取引委員会:法適用における従業員数基準の追加>

基準従業員数は、
改正ポイント④でご紹介した取引類型
によって異なります。
具体的には、
製造委託、修理委託、特定運送委託、
情報成果物作成委託、役務提供委託
のうち、
プログラムの作成、運送、
物品の倉庫保管&情報処理
にかかるものは300人
情報成果物作成委託&役務提供委託
のうち、
前述のもの以外
については100人
を基準として、
委託事業者従業員数>基準人数
&
中小受託事業者従業員数≦基準人数
である場合は、
両事業者の資本金額に関わらず取適法適用
となります。
<公正取引委員会:取適法における「従業員基準」>

⑤面的執行の強化
法改正によって、
面的執行の強化
という新スキームが導入されます。
少し難しめの表現ですが、簡単に言うと、
公正取引委員会と中小企業庁が
メインで法運用していた従来体制から
他省庁も巻き込んで多角的に広げる
ことを意味するものです。
下請法上は、
事業所管の省庁に調査権限が与えられて
きましたが、
公正取引委員会や中小企業庁との連携執行
を拡充する必要性が挙げられていました。
また、
受注事業者の通報に対する
発注事業者業者の報復行為が
下請法の報復措置禁止対象となっていない
ことも課題と認識されていました。
これらの問題を踏まえて、
取適法では、
事業所轄省庁の主務大臣
(建設、運送業=国交大臣、IT業=経産大臣など)
に、法律執行のための新たな権限が付与されます。
また、
公正取引委員会が調査をおこなう際には、
事業所管大臣も必要に応じて協力をおこないます。
この体制整備によって、
取適法としての制度実効性がアップし、
より多くの受注事業者保護につながるでしょう。
<公正取引委員会:面的執行の強化>

<公正取引委員会:各省庁の連携執行強化>


【委託事業者に対する義務&禁止事項】
適用対象の取引において、
発注側となる委託事業者は
次の事項が義務付けられます。
<公正取引委員会:委託事業者義務事項>

また、
次の行為は正当な理由なくNGとされます。
改正ポイントで解説したいくつかの事項も
このNG事項に含まれていますので、
改めてチェックしてみてください。
<公正取引委員会:委託事業者禁止事項>

業者間の取引においてよく耳にするもので、
請求代金の振込手数料について
委託事業者が受託事業者に負担を迫る
ケースがありますが、
これも上記の、
取適法禁止事項
にあたります。
委託事業者がこれら
義務をおこなわないor禁止事項が発覚した場合
下請法と同様、
従来ペナルティ(=50万円以下の罰金)
が科せられます。
当然、取適法でも、
発注事業者の代表、代理人、従業員など
が違反行為をおこなった場合、
その行為者も法人も両方罰せられる
両罰規定が適用されます。
<公正取引委員会:違反行為の取り締まり>


【事業者が対応すべきポイント】
下請法が改正され、
取適法に変わることによって、
全事業者の皆さまにはより一層、
コンプライアンスが求められます。
違反行為に対しては
各省庁の対応が強化されますので、
より厳しく取引実態がチェックされる
可能性があります。
もし、現在進行中の取引や交渉が
違法と判断されれば、
行政の勧告、指導対象となるばかりか、
事業者名や違反事実公表を受け、
大きな社会的ダメージを被ることになります。
お正月1月1日の施行を前にしたこの年内に、
委託事業者の皆さまは
取適法対応に向け準備していく必要がある
と考えます。
行政書士の目線から、
必要な準備アクションを5つに分けて
ピックアップしました。ご参考ください。


【来週いよいよ施行!万全のコンプライアンス体制を】
年をまたいで下請法は改正され、
中小受託事業者が不当な負担を強いられない、
公正な取引環境を整えるための法律として
取適法に生まれ変わります。
ビジネス取引におけるルールは
格段に充実しており、
コンプライアンス意識必然的に高まる
と言っていいでしょう。
事業者の皆さまにとっては
国内外を問わず、
取引における実務や契約書の見直しが迫られる
シチュエーションも大いに想定され、
法内容とともに適切なリーガル判断が
必要不可欠です。
コンプライアンスを踏まえた取引
をおこなうことで、
取引信頼度と、企業価値アップを図り、
対等なビジネスパートナーシップを
持ちたいところです。
WINDS行政書士事務所は
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