コラム

【2025年成立!セーフティな担保取引を促進】譲渡担保法

2025.11.19[契約]





【ついに明文化!譲渡担保の法律】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
ビジネスにおいて
なんらかを担保になるorする
といった取引のなかで、
債務者のものを担保にする譲渡担保
ローンなどでの売主の所有権留保などは
これまで慣習と認識されてはいたものの
法律ルールとしては定められていませんでした。
それが、2025年5月、

譲渡担保法
(譲渡担保契約及び所有権留保契約
    に関する法律)


が成立、
これら担保取引が正式に
法律として明文化されました。

今回は、
成立したばかりの
この新しい法律で定められた
譲渡担保と所有権留保について、
その基本的な仕組みと法成立の効果、
今後実務上の影響や必要なリーガル対応
について、ご紹介します。




【譲渡担保法の成立】

日本では
譲渡担保や所有権留保は
担保権として認められている
ものの、
これまで民法などの法律ルールにはなく
裁判判例や実務的な商慣習によるもの

⇒権利関係や優先順位など具体的ルール
 はっきりと定まっていない

とされてきました。

このことからこれまでも当然、
トラブルリスクになることが多く、
特に譲渡担保に関しては、
端から見れば所有権移転を伴う立派な契約
として成立しながらも
実際は担保取引の性質を持つ2面性

が、利用に対するブレーキとなっていました。

こういった背景から立案化の声が高まり、

2025年5月、
譲渡担保法
(譲渡担保契約及び
    所有権留保契約に関する法律)

正式に成立


しました。
法制審議会担保法制部:第51回担保法制の見直しに関する要綱案

民法を改正したのではなく、
あえて独立した法律を制定したのは、

  • 譲渡担保や所有権留保ルールをはっきりさせる
  • 不動産担保や個人補償に依存しない資金調達を活発化させる


ひいては、
取引の安定性を高める
というねらいがあるためです。


法律ルールがはっきりすることで、
得体が知れないような存在だった
譲渡担保と所有権留保は格段に活用しやすくなり、
資金調達方法も多様化することが期待できます。

なお、この法律は、
公布(2025年6月6日)から2年6ヶ月以内
⇒2027年12月までに施行=本格スタート予定
です。
※ノウハウの確認方法が判例のみであった
 こともあり、
 これまで
行政書士試験の民法科目でも
 譲渡担保や所有権留保の出題率は低かった
 
ですが、
 法成立を機に
 来年度以降の試験でも出題率が上がる

 と予想しています。


ちなみに、この法律ルールは、
施行前に発生した
譲渡担保や所有権留保案件に対しても
原則適用されます。

※特別ケースとして、
 占有改定によって対抗要件具備
 していたものについても、
 施行後2年以内の動産譲渡登記によって
 当初優先順位をキープできる

 などの緩衝措置があります。
 ⇒
e-Gov:譲渡担保法附則




【ルールを確認!譲渡担保と所有権留保】

慣習上の担保スタイルに過ぎなかった
譲渡担保と所有権留保について規定する
譲渡担保法の成立で得られる
メリットや効果を感じるにあたってはやはり、
それぞれの基本ルールを把握しておきたい
ところです。

譲渡担保と所有権留保、
それぞれについて解説します。

<譲渡担保>
譲渡担保とは、
相手方の債務不履行
(=不払い、遅延、破産など)に備えて
動産、不動産、債権などを担保目的に
その所有権を形式的に移転=譲渡すること

を指します。

たとえば、
パン屋さんを営む事業者Aが
事業者Bからお金を借りたい

とします。
その際、
債権譲渡契約を取り交わして
Aはお金を借りられる条件に
自分の所有するベーカリーマシンに
Bのための譲渡担保権を設定することで、
ベーカリーマシンの所有権は
AからBに移転
します。

所有権がBに移転する(Bは担保権者になる)だけ
ですので、
Aはベーカリーマシンを引き続き使用
Bはベーカリーマシンを自由に使えるわけではない
という実態となります。

お金が完済されれば、
ベーカリーマシンの所有権は再びAに戻ります。
しかし
AがBに契約どおりお金を返さなければ
Bは担保権を実行して、
ベーカリーマシンを自分のものにしたり
売却や処分ができます。

ここでBが回収できるのは、
Aに貸したお金の残高だけであり、
これをオーバーする金額が発生する場合は
そのオーバー額をAに返さなければなりません。

売買代金だけでなく、
下請作業代金、借金といった債権
土地や建物といった不動産の譲渡担保
も活用可能です。



※特定の指定場所や一定量にある動産も
 譲渡担保の対象にでき、
 その内容や範囲が入れ替わっても
 担保は変更内容をカバーします。
 

譲渡担保と混同しやすい担保権として
抵当権質権が挙げられますが、

抵当権
不動産や地上権、永小作権を担保に差し出す
もので
動産を担保対象にできない

質権
動産を担保に設定できる
but  債務履行までの預かりもの
(占有してるだけ)と定義

されているため、
担保権設定者が担保動産を使用、処分できない

といった違いがあります。

<所有権留保>
所有権留保とは、
売買契約成立後に
売主が買主に商品を引き渡しても、
売買代金の支払いを担保するため
代金の全額完済までは
商品の所有権を売主にキープ(留保)しておく

担保スタイルで、
実際のビジネスでは、
クルマやプリンタ(複合機)などの販売ローン
においても利用されています。

たとえば
買主AがディーラーBと
売買契約を結び、クルマを購入
するとします。
AはBに売買代金を支払いますが、
高額な場合は分割払いが可能で、
その際
Aは
Bの指定するC社に
指定期日までに分割代金を
定期的に支払います。

この間、
Aはクルマを手元に置いて使用できますが、
その所有権者はBのままで、
Bは売買代金が完済するまで
その所有権をキープ(留保)します




所有権留保もまた
売買代金の分割払いが可能であり
クルマを占有し使用できるため
債権回収不能リスクは機能的におさえられます
が、所有権がBに留まるため、
代金未払い時
Bはクルマを引き揚げて
第三者に売却するなど処分して
換価代金を未回収債権の履行に充てられる

ことが、
譲渡担保と違う特徴と言えます。




【譲渡担保法での効果】

譲渡担保、所有権留保はいずれも、
今まで民法などの法律に規定がなく
判例や学説などでしか
認められず
あくまで実務慣習としての位置付けでの活用

でした。
そのため、
確固たる判断ソースが不十分
と言われてきました。

法務省民事局:明文ルールと従来からの課題


こうした課題対応を目的とした
譲渡担保法の成立によって
担保スタイルとして
取引構造や対抗要件などが明文化

されたことで、
ビジネスにおける活用取引の
透明性や信頼性が格段にアップし

安心・安定の資金調達の促進
に大きく期待できます。

特に、
中小企業やスタートアップ、ベンチャー企業
にとっては
自社所有物や売掛債権を担保に
融資などの資金調達を目指す
においての追い風になる

と言えます。
※保有動産や債権などの企業資産を担保に
 金融機関から融資を受ける
 ABL(Asset-Based Lending)
 という金融手法が存在します。
 ⇒
日本政策投資銀行の説明

気になる法規定内容は、次のとおりです。

法務省民事局:譲渡担保法のポイント


これら内容から、
私が行政書士の目線で特に重要
と感じたポイントを3つ、ピックアップします。

①複数順位の設定
譲渡担保における複数順位設定について
従来は判例ありきでしか認められず
法的根拠がなく
登記制度も整備されていなかった

ため、
譲渡担保権が複数設定された場合、
どの担保権が優先するか判断しづらく
トラブルの原因
となることがありました。
そのため結局、
私物契約や信託の形での対応で一応成立
するものの、
安定性には欠けるのが目に見えているため、
譲渡担保の複数設定を避けることが多かった
のが事実です。

こうしたシチュエーションを考慮して
譲渡担保法では
譲渡担保対象の財産は
重ねて譲渡担保契約の目的にできる

と定めることで
複数順位の設定について明文化
複数順位の設定が可能になりました。

法務省民事局:競合譲渡担保権の順位


複数順位の設定がしやすくなることで、
優先順位に応じて弁済スキームが整備され、
資金調達の柔軟性や見通しもアップし、
融資などを検討する事業者にとって
ポジティブな影響が期待できます。

②対抗要件の優先順位設定
そもそも
契約というものは、
当事者間でだけ効力があるのが原則

で、
その効力が第三者に及ぶには、
対抗要件が必要になります。

従来、
譲渡担保権の対抗要件

動産:引渡し
債権:債務者への通知or承諾
   +登記すれば引渡し成立


とされ、

ほかの担保権との担保順位は、
対抗要件を備えた時の順番で決定


されてきました。

動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。(民法第178条)
債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。(民法第467条1項)
法人が動産(当該動産につき倉荷証券、船荷証券又は複合運送証券が作成されているものを除く。以下同じ。)を譲渡した場合において、当該動産の譲渡につき動産譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、当該動産について、民法第178条の引渡しがあったものとみなす。(動産・債権譲渡特例法第3条)
法人が債権(金銭の支払を目的とするものであって、民法第3編第1章第4節の規定により譲渡されるものに限る。以下同じ。)を譲渡した場合において、当該債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、当該債権の債務者以外の第三者については、同法第467条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなす。この場合においては、当該登記の日付をもって確定日付とする。(動産・債権譲渡特例法第4条)


しかし、
占有改定による引渡しは
端から見て対抗要件がわかりにくく
公示性にも乏しい

ものでした。



このことから、
譲渡担保法
占有改定による対抗要件は
ほかの担保権より担保順位が下になる
(劣後する)

と定められました。
また、
同じ取引や関係から発生した関連債務
については
ほかの債務より例外的に優先される

と定められました。

法務省民事局:占有改定劣後ルール

法務省民事局:牽連性担保権の優先


③譲渡担保処分&実行ルール
譲渡担保法では、
未払いや支払不能、すなわち
債務不履行となった際の担保権実行手続き
についても、規定しています。

担保権実行の際の処分方法としては、
対象物や権利の換価、たとえば、
競売や任意売却などが想定され、
これらの手続きが規定されたことで
実務的にブラックボックスとなっていた
処分方法や運用フローが透明化
され、
より安全な担保取引につながります。

法務省民事局:担保権実行に関する規律





【実務契約上の注意ポイント】

今年成立した譲渡担保法の施行で
より安全に担保取引が進むことに
疑いの余地はありません。
その一方、
契約上や周辺手続きにおいては
留意しておきたい点もあります。

行政書士目線で、
担保取引において
実務上重要と思われるポイントを
ピックアップしてみました。

①担保対象の特定&対抗要件の具備
担保を差し出す取引において
なにを担保に取るか
を把握することは、非常に大切です。
動産や不動産であれば
特定しやすいかと思いますが、
担保対象が債権の場合
においてもやはり同様の認識で
進めるべきです。

担保対象が明確にわからないと
債権回収の重要な場面で
債権譲渡担保が無効となってしまう
などの事態に陥る場合もあり、十分な注意が必要です。

担保対象をはっきり特定するためにも、

  • 担保対象のものの発生原因
  • 具体的な債権額
  • 将来発生する債権の担保対象可否
  • 将来債権の対象発生期間


などは
契約書や合意書などのリーガル書面に記載
しておくことが有効です。



加えて、契約書完成後は、
担保対象の債務者向けに
内容証明郵便の送付
債権であれば譲渡登記

などの付随手続きで
確実に対抗要件を取得
しましょう。
※取引先が内容証明郵便の送付や譲渡登記
 に協力する旨の記載が
 債権譲渡担保設定契約書にあると確実です。


②譲渡禁止特約の存在
債権譲渡担保契約を締結するとき
担保対象としたいもの、特に債権には、
債権譲渡禁止特約が付加されている
場合があります。

譲渡禁止特約とは、
契約で生まれた特定の債権を
第三者への譲渡や担保に入れることをNG
とする旨の契約条項
のことです。
日本では
この特約を契約にまじえるケースが多く、
契約書でもよく見受けられます。

そうすると、

特約が付いていたら
譲渡担保にできないじゃないか


と思われるかと思いますが、

譲渡禁止特約のある債権であっても
債権譲渡担保対象とすることは
法律上、有効です。


当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。(民法第466条2項)
前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。(民法第466条3項)


取引先に破産などがあった場合は、
担保対象としていた債権に
譲渡禁止特約が付いていても、
債権者はその債権を直接回収して
支払いを受けることができます。

※この場合の債権に
 預貯金債権は含まれません。


ただし、
担保権者が担保設定時点で
担保対象債権に特約があることを
知っていたor重大な過失で知らなかった場合

債務者は
担保権者に対して支払を拒むことができる

という法律ルールとなっています。
そのため、
破産とまではいかずとも
支払い「遅延」

という場面では、
特約が債権回収の障害になることがあります。
この場合は、
事前に譲渡担保を設定のうえ
相手方の債権内容を正確に把握
(=たとえば差し押さえなどの措置)

することで、
債権回収に有利
と考えます。

③占有改定
譲渡担保法上、
占有改定による対抗要件は
ほかの担保権より優先順位が下がる

ことをご紹介しましたが、
これはあくまで
譲渡担保の場合のルールであり、
先行取引が
担保設定ではなく真正譲渡の場合は
この法律ルールは適用されない

ことには、注意が必要です。

真正譲渡の場合、
その対応要件を備える方法が占有改定
であったとしても、
所有権の移転自体は有効

となり、
その際に譲渡担保の設定は
即時取得などの要件を満たさない限りは無効

となることを、認識しておきましょう。

④集合担保の担保範囲
譲渡担保法はもうひとつ、
変更ルールが存在します。
それは、
事業者の在庫や売掛金などのような
日々内容が変わるものを担保にする、
いわゆる
集合担保に関しては、
一定時点で担保効力が固定されてしまい
それ以降の加入資産には担保の範囲に入らない

というものです。


加えて、
倒産手続開始後に
過去に担保権実行されたものの効果は
裁判所の命令によって取り消せる

というルールも導入されます。

こうしたルール適用によって、
担保権者と倒産手続きにおいての利害関係者間
では法的調整がなされる反面、
実務上慎重な判断が求められるでしょう。


法務省民事局:倒産手続きにおける担保の取り扱い


④不払い発生時の取り立て期限消滅
将来発生する複数の債権を
まとめて譲渡担保設定対象
とする場合、
設定後も不払いが発生していないのであれば
担保債権が取引先=債務者に弁済されることは
認められる

⇒譲渡担保債権についても
 債務者である取引先に取立権限が認められる

のが通常ですが、
その債務者に不払いが発生した場合、
担保対象債権は自社が回収し
取引先が担保に取った債権回収を禁止
する必要があります。


こうしたケースは
取立権限の消滅と呼ばれています。
債務者が持つ債権に譲渡担保を設定したのに、
不払いになってしまったとき
債務者が独断でその債権を回収してしまうと
債権者は担保債権から
債権回収できなくなってしまいますね。

これについての対策としては、
あらかじめ譲渡担保契約書に、
債務者=取引先が支払遅延となった時点で
なんの通知もなしに
担保設定対象債権の弁済を受けることを禁止
する旨を記載しておく

ことが有効です。

⑤関係者への通知&調整
担保設定とそれに伴う契約内容の変更
においては、
取引先や金融機関などの利害関係者
への通知と調整

が不可欠です。

譲渡担保法上、
対抗要件は通知や承諾となるケース
がメインとなります。
連絡の抜け漏れによる
権利主張不全となるリスクを避けるべく、
通知方法や内容を書面として残し、
合意内容や承諾事項を契約書上明記

しておきましょう。

スムーズな調整のために
事前説明会や個別協議の実施などで
利害関係者の理解と協力を求める
ことも有効でしょう。




【施行までにリーガル面の対策、準備を】

今年の譲渡担保法の成立によって
譲渡担保などのルールが明文化され
法的根拠に基づいた
契約設計や権利行使が可能となり、
担保付き取引の透明性と予測可能性も
格段に高まり、
これまではばかられていた
譲渡担保の利用も進むことが
大いに期待できます


一方、担保権者としては
契約書などリーガル書面の整備や
各関係者との連絡調整も求められるでしょう。

成立法を十分に活かすためにも、
これまでの判例などのながれを組んだ
法ルールの正しい解釈、把握が大切です。

WINDS行政書士事務所は、
法的専門知見を駆使した
リーガルチェックなどのサポート対応で
事業者の資金調達、債権回収を
幅広くサポートします。
譲渡担保や所有権留保を利用した
担保取引にあたっては、
専門的な知見を持つ専門家へ
是非ご相談ください。

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31