【スマホの取り扱いが変わる!】スマホ新法
2025.11.05[契約]

【2025年12月全面施行!スマホアプリ取り締まりの法律】
こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
スマートフォンは
日常生活ツールの一部として浸透し、
私たちがさまざまなアプリを活用していますが、
そのスマートフォン用アプリ配信事業者に対して
一定の規制をかけるスマホ新法が
昨年6月に成立しました。
段階的にルール施行がおこなわれましたが、
いよいよ今年12月全面施行となります。
配信事業者はもちろん、私たち一般ユーザーにも
メリットとデメリットの両方、影響が想定される、
このリーガルアクション。
今回は来月の全面施行を控えるこの法律の
グランドルールと事業者、ユーザーにおよぶ影響、
懸念や注意点などを、解説します。

【スマホ新法とは】
スマホ新法とは、
スマートフォンの特定ソフトウェア
に関連する公正な競争の促進と
公正な市場環境の整備を目的
として
一定規模以上の指定事業者に対して
一定の規制事項を義務付ける
法律で、
その正式名称は
スマートフォンにおいて利用される
特定ソフトウェアに係る競争の促進
に関する法律(SSCPA)
とです。
現在、スマートフォンは急速に普及し、
私たちの生活やビジネスにおける
新基盤として台頭してきました。
このスマートフォン利用において
特に必要なソフトウェア(特定ソフトウェア)
のセキュリティ確保を図りつつ、
競争を通じて多様な主体による
イノベーションの活性化
それによって
ユーザーの多様なサービスの選択&恩恵の享受
ため、競争環境の整備をおこなうものです。
スマホ新法が制定された背景としては、
大きく次の2点が挙げられます。
①一部事業者による市場寡占
スマホソフトウェア市場は
開発技術の高さやコストもあることから
一部の事業者で展開、ユーザーが集中して
市場が寡占されてきました。
市場が寡占されると
ユーザーも慣れたソフトウェアを使用継続
するため
ネットワーク効果やスイッチングコストが増加し、
新規事業者にとって
参入ハードルが高くなってしまいます。
②既存規制法の機能不全
公正で自由な取引を促進し
消費者の利益を守るための法律としては
独占禁止法が存在するなど
これまでもなかったわけではありませんでした。
しかしこの法律の適用にあたっては、
ルール違反の疑いがあるケースに対して
個別の事実立証が必要で、
その事実立証に時間がかかり
即時の状況改善は難しい状況でした。
※内閣官房:モバイル・エコシステムに関する競争評価最終報告
こうした背景を踏まえて
スマホ新法は、
禁止事項が明確に定められ
ペナルティも厳格化されている
ことも、特徴のひとつとなっています。
この法律はすでに2024年6月に成立、
運用ガイドライン公表のもと
12月には一部ルールがすでに施行
されていましたが、
2025年12月18日に全面施行
を予定しています。
※公正取引委員会:スマホ新法
※公正取引委員会:スマホ新法ガイドライン
※公正取引委員会:スマホ新法施行までの100日カウントダウン
ちなみにスマホ新法は
欧州で2024年3月に施行された
欧州デジタル市場法
(DMA, The Digital Markets Act)
がベースとなって制定されています。
DMAは、
コアプラットフォームサービスと呼ばれる
オンラインデジタルサービスを提供する
大規模プラットフォームを
ゲートキーパーとして広く指定し、
一定の禁止行為や遵守行為を義務付けています。
※DMAで定義しているコアプラットフォームは
オンライン仲介サービスやSNSも対象とする
など、
スマホ新法の特定ソフトウェアよりも
範囲が広く定義されています。
⇒InfoCom:DMAの規制対象
※イギリスでも、
2024年5月に類似法律である
デジタル市場・競争・消費者法(DMCCA)
が成立しています。
※アメリカでは、
司法省(DOJ)や米連邦取引委員会(FTC)
など当局の市場競争に対しての積極介入
が進んでいます。
※韓国やオーストラリア、インドなどでも
新しい競争法制度が検討されています。

【スマホ新法の規制ルール】
スマホ新法は一定の事業者を規制することで
エンドユーザーに一定の効果をもたらす
法律となっています。
おもなルールは次のとおりです。
①規制対象の事業者
スマホ新法が指定対象としているのは、
特定ソフトウェアを提供し
一定の優越的地位を持ち
寡占状態にさせる
として
公正取引委員会が指定した事業者
です。
具体的な事業者としては、
の3社が指定されています。
②対象ツール
規制対象となっているのは、
スマホ利用に欠かせない
ソフトウェア=プログラム
であり、
これを
特定ソフトウェア
と呼びます。
特定ソフトウェアは、
次の種類が定義されています。

さらに
①で解説した対象事業者と具体的なソフトウェアも
合わせて確認してみると、以下のとおりとなります。

※スマホ利用を前提として対象を指定していることから
iPadなどのタブレットに関するOSや
通信機能がある携帯ゲーム機などに関するOSなどは、
規制対象からは外れます。
③規制内容
①の対象事業者は
禁止事項と遵守事項が設定、
義務付けられています。
各事項の内容は以下のものとなります。

※公正取引委員会:スマホ競争促進法案概要
これらの事項によって、
寡占状態であったアプリストアを開放し
課金システムの決済を自由にすることで、
ほかの開発者が独自のシステムを導入でき
手数料の負担が軽減されたり
ユーザーがより柔軟に
アプリを選び、購入できる状態
⇒自由な市場競争の促進
を可能にするものです。
④ペナルティ
対象事業者が禁止事項に違反した場合は、
公正取引委員会は差止請求権を行使し
再発防止などを命じる排除措置命令
日本国内の売上の20%で算定される
課徴金納付命令
がなされるおそれがあります。
また独占禁止法と同様、
確約手続や緊急停止命令
も定められています。
遵守事項に違反した場合は
公正取引委員会は勧告や命令ができ、
その命令に違反したときは100万円以下の罰金
に処せられます。
これにおける
対象事業者の責任は無過失責任
とされます。
<公正取引委員会:法規制の全体イメージ>

こうして定められた規制の実効性のキープ
にあたっては、
公正取引委員会でさまざまな仕組みが施され、
公正公平な市場環境を整備します。
<公正取引委員会:スマホ新法案概要>


【プラマイ両方?!アプリ新法施行の効果】
スマホ新法の施行によって、
事業者とユーザーそれぞれに
大きく影響があらわれると考えます。
行政書士の目線から、
3つのメリットと2つの懸念を挙げてみます。
①他事業者の新規参入⇒アプリ多様化
まず影響があらわれるのは、アプリストアでしょう。
一部事業者による寡占状態が解消されれば
新事業者が参入できるようになります。
規制対象以外の事業者がサードパーティとして
新しいアプリストアを開設し
手数料や、既存ストアにないルールやガイドライン
を定めたアプリ提供の実現
も夢ではなくなります。
※実際、アプリストアの開放が進む欧州では、
サードパーティアプリストアとして
マイクロソフトやSpotify、EpicGamesなど
の参入が表明されています。
②コンテンツサービスの多様化
①が進めば、
スマホ新法にフィットするように
従来アプリストア
(App Store、Googleプレイストア)では、
デベロッパー規約、アプリ審査ガイドライン
といったルールが大きく変わり、
たとえば、
アプリを提供する事業者のアプリストアで
アプリ内課金以外の決済手段を使うことが可能
となったり、
アプリ内で自社ウェブサイトに誘導し
コンテンツを案内できる
など、ルールが大きく変更されます。
③ユーザーのサービス選択肢が広がる
①や②の効果が具体的に進めば、
私たちエンドユーザーも
ニーズに応じたアプリストアを選び、
より多くの魅力的なアプリを利用し、
スマホを活用した日常生活が充実
することになるでしょう。
さらに決済方法も多様となり、
データ移転なども簡単となれば
より便利にスマホアプリを使えそうですね。
④セキュリティ&プライバシーリスク
①から③のようなメリットが見込める一方、
セキュリティの確保やプライバシー保護
の面では懸念が残ります。
たとえば、
アプリストアの選択肢が増えれば
プラットフォームごと審査基準が異なり、
悪質なアプリ流入も増えるかもしれません。
ユーザーが悪質なアプリをインストールすれば
マルウェア、フィッシング、個人情報漏洩
などのリスク要素も見過ごせません。
また、
ブラウザエンジンや検索エンジンの
選択肢が広がれば
従来のセキュリティ制御(フィルタリングや監視)
が効きにくくなるおそれがあり、
子どもにスマホを持たせたとき
ペアレンタルコントロール機能が簡単に回避され
安全確保が難しくなる
といった事態も想定されます。
そのため、規制対象となる事業者は、
これらリスクを担保するための必要措置を講じる
ことが求められます。
※法成立前のパブリックコメントでも
同様の指摘から反対意見が出ていました。
⑤契約や決済の複雑化
ユーザーのコンテンツサービスの選択肢が
増えれば、
より多様な契約や決済方法が予想されますが、
決済や契約も複雑になる可能性もはらんでいます。
加入やサポート、返金手続きが難しくなる結果、
どのストア、決済がいいか迷う
どこでどうやって契約したかわからない
などの混乱が生じるかもしれません。
<公正取引委員会:スマホ新法で期待される効果>


【指定事業者がすべき対策】
スマホ新法で掲げられた禁止事項と遵守事項
を踏まえて、
アプリ提供事業者としては
来月全面施行までに事前対策をおこなうべき
と考えます。
具体的な事前対策として
まず挙げたいのはやはり、
従来の契約条項の見直し、カスタマイズ
でしょう。
契約書のリーガルチェックにあたっては、
締結や改定前に、
- スマホ新法の趣旨と整合していること
- 他社参入の実質的な制限につながらないこと
といった目線をキープすることが大切です。
リーガルチェックすべき具体的な契約条項を
次のようにピックアップしてみました。
ご参考ください。

特にプラットフォーマー
or
OS/アプリストア提供事業者の皆さまは、
契約書・利用規約・審査基準・手数料と、
コンテンツサービスの全体系を見直す必要がある
と考えます。
アプリ提供事業者の皆さまは、
- 自己の配信・決済・誘導の自由が制限されないこと
- 他のアプリストアとの契約機会を阻むようなルールがないこと
を事前にチェックされると有効でしょう。

【全面施行は来月!スマホサービスの未来をつなぐ】
スマホ新法は、
アプリストアやモバイルOSなどの市場を
寡占する企業を規制することで、
フェアで自由なな市場競争を促進する法律です。
従来の独占禁止法に比べて、
ルールが明確・厳格化され、
新規事業者の参入、ユーザーの多様な選択肢
が期待される反面、
様々な懸念もまだぬぐえていないため、
今後も、法改正などが予想されます。
まずは来月の全面施行までに
事業者側が
万全のアプリサービス提供体制を整えられるよう、
事前に準備をしていきましょう。
リーガルチェックや新たな契約書の作成、
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事業者の皆さまを幅広くサポートしております。
どうぞお気軽にご相談ください。
