コラム

【ライフリスクのせまる外国人を守れ!】難民の認定

2025.09.17[VISA]




【外国人を「保護」するための在留制度】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
外国人が日本に上陸し、
一定期間の滞在するためには
基本的にVISAが必要となりますが、
外国人のなかには、
望んで母国を離れ、日本に来たわけではなく
さまざまな事情で母国に帰れない
帰国すると心身への危険が及ぶおそれが大きい

など、
一般的なVISA要件から外れた形で
在留を希望するケースがあります。

その場合に、
日本がグローバルルールにしたがって
外国人の在留を認める措置として挙げられるのが、
今回ご紹介する、

難民認定

です。

特殊なケースゆえに、
単に望むだけで
誰でも認定を受けられるものではなく、
慎重な審査によって限られた外国人
だけが活用できるこの制度の
ルールや注意点を解説します。




【世界ぐるみで確立「難民認定」制度】

第2次世界大戦後、
庇護が必要or差別から救うべき
とされる、
すべての人々の基本的人権を確認する目的で
世界人権宣言が採択され、
国連加盟国間では
難民の発生を重大な問題と認識
されるようになりました。

これを受けて1951年、
外交会議によって
難民の地位に関する条約(難民条約)が採択、
その後1967年には
難民条約からエリア&時間的な制約を取り除いた
難民の地位に関する議定書(難民議定書)
が締約されました。
※難民条約と難民議定書のふたつをまとめて
 難民条約と認識されることもあります。

 ⇒UNHCR:難民の地位に関する条約
 ⇒
UNHCR:難民の地位に関する議定書

こうしたグローバルアクションを受けて
日本でも
難民に対する体制が整備され始めました。
1981年に難民条約加入
1982年に日本に対する難民議定書発効
を経て
難民の人権ルールを日本でも適用するため
制度が整備された結果、
人種宗教、国籍、
特定社会的集団の構成員
政治的意見

を理由として
帰国によって迫害リスクの大きい人々
難民と認定(Refugee Recognition)
適法に在留許可する法運用
が確立されました。

法務大臣は、本邦にある外国人から法務省令で定める手続により難民である旨の認定の申請があつたときは、その提出した資料に基づき、その者が難民である旨の認定(以下「難民の認定」という。)を行うことができる。
2 法務大臣は、本邦にある外国人から法務省令で定める手続により補完的保護対象者である旨の認定の申請があつたときは、その提出した資料に基づき、その者が補完的保護対象者である旨の認定(以下「補完的保護対象者の認定」という。)を行うことができる。
3 法務大臣は、第一項の申請をした外国人について難民の認定をしない処分をする場合において、当該外国人が補完的保護対象者に該当すると認めるときは、補完的保護対象者の認定を行うことができる。
4 法務大臣は、第一項の申請をした外国人について、難民の認定をしたときは、法務省令で定める手続により、当該外国人に対し、難民認定証明書を交付し、その認定をしない処分をしたときは、当該外国人に対し、理由を付した書面をもつて、その旨を通知する。
5 法務大臣は、第一項又は第二項の申請をした外国人について、補完的保護対象者の認定をしたときは、法務省令で定める手続により、当該外国人に対し、補完的保護対象者認定証明書を交付し、同項の申請があつた場合においてその認定をしない処分をしたときは、当該外国人に対し、理由を付した書面をもつて、その旨を通知する。

(出入国管理及び難民認定法第61条の2)




【難民認定の要件】

難民認定の申請対象となりうる
外国人については、
以下のように定義されています。



難民とは、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国(無国籍者にあっては常居所国)の外にいる者であって、その国の保護を受けることができないもの、又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの
(難民の地位に関する条約第1条 難民の地位に関する議定書第1条)

外務省:難民の地位に関する条約
法務省:難民該当性判断の手引

わかりやすく言えば、
紛争や迫害、人権侵害といった
命に関わるほどのトラブルから
自分や家族を守るために
やむを得ず母国から追われた人々
or
ほかの国に逃れなければならなかった人々

と言えます。

こうした難民は現在、
1,000万人を超えていると言われています。

JICA:世界の難民状況

※インドシナ難民や第三国定住者
 などのように
 難民条約の定義に入らずとも
 家や故郷を追われた人々がいる
 のも事実です。

 ⇒国連UNHCR協会:難民について

反対に、
次のような者は難民の定義からは外れます。



重要な要件キーワードである
迫害について政府は、
生命や身体の自由に対するもの
と解釈しているほか、
UNHCRでは
性的指向(ジェンダー)、差別(性別、人種)
など、
難民条約で定義されているもの以外でも、
その形態や継続によっては該当しうると
しています。
UNHCR:難民認定基準ハンドブック

難民認定された外国人は、
次のようなことが認められます。

①日本での在留
外国人が難民認定を受けた場合
定住者VISAを取得し
適法に日本での滞在が認められます。
※申請中=認定前のVISAについては
 後ほど詳しく説明します。


②永住要件の緩和
難民認定された外国人が
その後永住者VISAを目指す場合、
VISA審査における永住要件が緩和されます。
たとえば、
永住者VISAの取得要件としては
在留年数や経済的自立などが挙げられますが
このうちの
独立生計要件を満たさないとしても
永住許可を受けることが可能
となります。

③出入国の許可
難民認定を受けた外国人が
旅行などを目的に日本出国を希望
する場合、
出身国の政府を批判する言動によって
パスポートの発給が拒否され利用できない

など、
通常の渡航手続きをおこなえない
ことがあります。
しかし、難民認定によって、
パスポートの代わりに
難民条約締約国により有効な旅行文書
として、難民旅行証明書が交付され、
難民が諸外国の入国に必要な際には、
査証=VISA発給が認められます。
もちろん、
この証明書の有効期間内に
日本への入国も認められます。

<難民旅行証明書>

※難民旅行証明書の様式は都度アップデートされ、
 現在はパスポートサイズのものとなっています。
出入国在留管理庁:様式変更のお知らせ
※難民旅行証明書の交付を受けるためには
 事前に別途申請が必要です。
出入国在留管理庁:難民旅行証明書交付申請

④ 在留上各種権利の行使
難民認定された外国人は在留中、
基本的に日本人or一般的な在留外国人と同様に
取り扱われ、
国民年金や児童扶養・福祉手当受給資格などの保護
を受けることができます。




【難民認定の申請】

外国人が認定要件を満たしているとしても
当局から自動的に難民認定されるわけではなく、
必要書類を準備のうえ、
難民認定申請が必要です。

①難民認定申請
一般的な難民認定申請のルールは、
次のとおりです。


出入国在留管理庁:難民認定手続き

気になる難民認定審査期間については、
1次審査、そして不認定後に審査請求
をおこなう場合も含めると
実に3年ほどまでにもおよぶなど、
長期化の傾向が高いです。

また、当局のルールにしたがって
必要書類を提出すれば
誰でも認定されるというわけではなく、
審査は厳格に慎重におこなわれます。
技能実習や留学などのVISA保有者が
安易に難民認定しようとしても
認定要件ゆえに許可の可能性はとても低い

ので、慎重に申請を検討することが大切です。

外国人が難民認定申請をおこない、
実際にその審査結果が決定するまでは
次のながれで進んでいきます。

出入国在留管理庁:申請~認定フロー


認定申請をした外国人は
申請受理後に
特定活動VISA(有効期間2か月)
が与えられます。



さらに、
以下のすべての要件を満たす申請者は、
日本の事業者などで雇用され、報酬を受ける活動
つまり、就労が指定されます。



最初の
VISA期限2か月の特定活動VISA付与期間は
当局審査のための振り分け期間
と呼ばれ、
申請案件は審査の結果、
申請者の状況や主張内容に応じて
次のようなグループに振り分け、
スピーディにVISA上の措置がとられます。



これらグループ分けから、
就労OKで6か月の在留期間が認められる
グループA=難民条約上の難民は
本国情勢などによって人道的配慮が施される

一方、
最重要要件の迫害事由に該当しない
グループBやCは在留期間制限

など厳格な一面もあることがわかりますね。

そのほか、
グループDの具体的な事例としては
失踪した技能実習生や退学留学生
などが挙げられます。

②認定インタビュー
難民認定申請した外国人は
難民認定要件を満たすことの証明、
そして認定を必要とする状況説明のため
申請と同時に
当局難民調査官の認定インタビュー
を受けなければなりません。
※通常、
 難民調査官は入国審査官が就任します。


難民調査官は
申請書類や面接結果を基に調査し、
関係記録にまとめて法務大臣に送付します。
そして法務大臣は、
申請書類一式や関係記録を精査のうえ、
申請者の外国人が
難民条約上の難民認定可否を決定します。

③仮滞在許可
外国人がオーバーステイなどの不法滞在者
である場合、
本来なら退去強制対象
となりますが、
この状態でもし難民認定申請をしている場合は
仮滞在許可書が交付され、
一定要件を満たすことで
6か月間、日本での滞在を許可さ
れます。

<仮滞在許可書>

※このほか
 直接日本に入国していない
 or入国6か月経過後の認定申請の場合も
 許可書の発行を受けられます。


仮滞在許可書を得ることで
難民認定審査中は退去強制手続きが一時停止
となる一方、
就労はNG
住まいや行動範囲も制限
となることに注意しましょう。

仮滞在許可書は、
許可期限の10日前から更新申請が可能です。
出入国在留管理庁:仮滞在期間更新申請

④難民の認定
審査の結果、難民と認定された外国人は
定住者VISA在留カード難民認定証明書
のふたつが交付されます。

一方、
残念ながら不認定となった場合、
外国人は基本的に
退去強制or出国命令といった
第三国への国外退去措置

がとられますが、
それでもなお外国人が
難民認定を諦められない場合は、
前回と異なる理由で再申請
or
不認定処分に対する審査請求
といった選択肢は残されています。

このうち、
審査請求をおこなう場合は、
国の判断や処分に対する不服があるとして
不認定or認定取消の通知を受けた日
から7日以内

異議申立書を地方出入国管理局に提出
=法務大臣に対して異議申立て

をしなければなりません。

「前項の異議申立てに関する行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第四十五条の期間は、第六十一条の二第二項又は第六十一条の二の七第二項の通知を受けた日から七日以内とする。」(新法61条の2の9第2項)。
出入国在留管理庁:審査請求
※当事務所代表は特定行政書士として
 異議申立て代理対応が可能です。

 ⇒当事務所まで相談ください。

異議申立てを受けた法務大臣は、
申請とも裁判とも異なる
行政内部での審査をおこない、
難民審査参与員への諮問
(=審理・意見吸い上げ)

を経て、
難民認定可否のファイナルジャッジ
をします。
出入国在留管理庁:難民審査参与員一覧

ちなみに、
外国人にVISAがない場合、
難民不認定ジャッジが決定したとしても、
そのおかれた事情によっては
在留特別許可処分が決定した事例があります。

当事務所までご相談ください。
※在留特別許可については、
 
以前のコラムでご紹介しています。




【難民認定についてよくある質問】

難民認定について、
これまで当事務所に寄せられてきた
ご相談、お問い合わせから
もっとも多かったものをピックアップして
Q&A形式でご紹介したいと思います。
難民認定のご理解、申請検討のために、
ご参考ください。

Q1. 母国では自分の望む生活ができず
  自分も難民になりたい。
  どうしたらいいの?

A1. 難民認定要件を満たしているかを
  確認しましょう。

難民という地位は、
日本の外に国籍を持つ外国人が
母国などで迫害リスクが大きい場合に
審査によって特別に認定されるものです。
まずはこれに該当するかを確かめてみて
そのうえで実際に申請をすべきかどうかを
検討しましょう。

Q2.難民認定申請中。
       特定活動VISAからほかのVISAに変更
   ってできる?

A2.許可の見通しは低いと考えます。

難民認定申請中は、
特定活動VISAが付与されると説明しましたが、
この状況でも、永住者や配偶者、就労など
ほかのVISAの取得を希望する場合、
VISA変更申請自体をすることは可能です。
ただし、許可を得られる可能性は厳しい
と言わざるを得ません。
理由としては、
VISA変更を希望する外国人がそもそも、
難民認定を受けることの必要性
認定申請に対する不十分な理由
が疑われる
ためです。
保有するVISAを選べる
のではなく、
難民認定を受ける必要があるか
認定されること自体の意味

をよく考える必要があると、私は思います。

Q2.難民認定要件にマッチすると思うけど
       立証できる資料がない。
認定は難しいの?
A2.資料不十分でも認定の可能性はあります。

難民認定を希望する外国人は
実際に日本に上陸、また認定申請するにあたって
さまざまな経緯や境遇を持っています。
なかには、
認定証明書類が十分でなかったり
まったく持っていない

ということも少なくありません。
こうした場合は
難民審査官とのインタビューにおいて
自身が脅威に感じる迫害に該当することや
保護されるに値する経緯や事実を
口頭で的確に説明
しましょう。
当局も事前調査をおこなっており、
外国人の説明と整合性がとれていれば
認定への道すじが明るくなるでしょう。

Q3.認定インタビューって
   どんなことを聞かれるの?

A3.基本情報や事実経緯、要件該当性
       が問われます。

難民認定申請者の外国人が
対応すべきもののひとつである
認定インタビューですが、
当事務所でのサポートから
最低限、難民調査官からされる質問を
まとめてみました。ご参考ください。



ポイントとしては、
矛盾なく、正直に堂々伝えること
でしょう。
人権にもかかわる重要な審査をおこなうため、
調査官も厳しく、深く質問する
こともあるかもしれませんが、
テストではなく時間制限もありませんので
実際に起こった体験や事実を思い出しながら
具体的に説明することが大切です。
多少わからない、覚えていないことがあっても
そのことを正直に伝えて大丈夫

です。

Q4.仮装難民って偽装難民となにが違うの?
A4.個人単位ではなく、
   送り出し国が虚偽に関与している点
   に違いがあります。

日本、そして諸外国でも、
仮装難民の存在が課題となっています。
個人単位が、難民認定要件を虚偽などの
アンフェアな申告をすれば、
偽装難民と認識されますが、
この偽装に加えて
国や組織(ブローカー)ぐるみで
難民認定されやすいように
個人がマイノリティに仮想して認定される

ものとして、
仮装難民が事実として存在しています。
※具体的な仮装難民としては、
 コソボなどをはじめとする紛争問題
 をベースに申告する者が多く
 ジェンダー、国家主義、宗教
 などの問題申告者が挙げられます。


仮装難民の送り出し国では、
その迫害内容によって
どの国がどう難民認定されやすいか
といった情報をデータベース化している

と言われており、
これにかかった認定国は、
欺罔され、認定する場合があります。
またもし、欺罔とならずに不認定
と決定したとしても、
申請の審査に多くの時間がかかり、
審査中はその法的地位が比較的優遇される
といった法的な抜け穴を利用して
在留生活を送ったり
他国へも常習的に認定申請して渡り歩く

といった事案もみられており、
正規に認定されるべき外国人の審査も
厳しくならざるを得ない
といった、負のスパイラル

も散見されます。

Q5.難民って仕事できるんだよね?
A5.就労可能です。

難民認定を受けた外国人が取得する
定住者VISAは、
就労制限がなく
日本人と同様に就労が可能
です。
ただし、あくまで認定を受けた場合に限られ、
認定申請中は条件付きでMAX6か月間就労OK
仮滞在許可中は原則就労NG

となることを、覚えておきましょう。
出入国在留管理庁:難民認定申請をすれば日本にで就労できるというものではありません

ちなみに、ウクライナ難民の場合は
1年期限の特定活動VISAが付与されており、
日本に在留を希望している場合
就労その他の活動も認められています。


Q6.難民の申請って何回もできるの?
A6.法改正によって回数制限の兆候があります。

難民認定申請の回数については、
2023年までその制限は実質ありませんでしたが、
2024年の改正入管法施行によって、
リピート申請が3回以上の外国人は
出入国在留管理局の判断で
送還することができる

ルールとなりました。
必ずしも強制送還
に直結するわけではありませんが、
法改正されたばかりであることから
政府の裁量として制限ルールが適用
される可能性が高い

ですので、
該当する外国人や関係者の皆さまは
申請を慎重にご検討いただくことを
おすすめしています。
※改正入管法については、
 
こちらのコラムで詳しくご紹介しています。



【難民認定は慎重&十分な対応を】

さまざまな理由から、
母国や諸外国にいることができない外国人を
人道的な配慮で特別に定住を認める
難民認定の制度。
毎年申請はおこなわれているものの、
一般的なVISA申請とは異なり、
認定されるまでには特別な審査プロセス
と相当の期間を要するため、
慎重に確実な申請をおこなうことが必要です。

WINDS行政書士事務所は、
一般的なVISA申請のほか、
今回ご紹介した難民認定申請や
在留特別許可申請まで、
幅広くVISAサポートを承っています。
大切な外国人の皆さまの、大切な毎日を守るため、
専門家の知見やノウハウをご活用ください。

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