コラム

【標準労務費とは?】建設会社が今から準備すべき実務対応

2026.07.01[行政書士・業務]




【もう始まってる!標準労務費への対応】


こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
2025年に全面施行された、改正建設業法。
2026年に入った現在、
建設業者にも具体的な対応が求められる
ようになっており、改正ルールとして、

著しく低い労務費による見積もりNG
資材価格高騰への対応
著しく短い工期NG


などが盛り込まれ、
建設業界全体で適正化が進められています。
※改正建設業法については、
 
こちらのコラムで解説しています。

こうした改正ルールのなかでも、
今後の建設業経営に大きな影響を与える
と考えられるのが、

標準労務費

です。

標準労務費という言葉を
聞いたことがあるけれど実際よくわからない
自社見積もりや契約にどんな影響があるのか


このような建設業者の方も
多いかもしれません。

本コラムでは、
標準労務費の概要と、
建設業者が今から準備しておきたい実務対応
について、
行政書士の視点からわかりやすく解説します。




【標準労務費とは】

標準労務費とは、
建設工事に従事する技能者の労務費について、
適正水準を確保するために設けられた基準です。

近年の建設業界では
人手不足や高齢化の深刻化
が進む一方、
価格競争の激化
によって
技能者への労務費が十分に確保できない
ケースも見受けられてきました。
その結果、

若手人材の建設業離れ
技能者不足
技術継承の停滞


といった問題につながっています。

国土交通省:技能者の処遇を巡る建設業界の現状


そこで建設業法の改正によって、
建設業界全体で適正な労務費を確保し
技能者の処遇改善につなげるための仕組み

として、
標準労務費
の考え方が導入されました。

国土交通省:建設工事請負契約に係る新ルール導入

※改正建設業法ルールと建設業者への影響
 については、
 こちらのコラムでも解説しています。


この標準労務費は、
次のふたつを掛け合わせることで、
算出目安を立てます。



①労務単価⇒作業ひとり1日あたりの給与
まず、公共工事設計労務単価をチェックし、
自社技術者の日当目安を決めます。
この単価は
国が調査を経て毎年発表されているもので
技術者ひとりあたりの基本的な日当額
となっています。

国土交通省:公共工事設計労務単価


これら工種別単価は
技術者が直接受け取るべき日当目安のため、
建設業者の負担経費が含まれていません。
そのため、
法定福利費などの自社必要経費を別途チェック
する必要があるでしょう。

②労務歩掛⇒この作業にかかる手間
ある作業を1単位仕上げるために
これくらいの手間がかかるという目安

を示す歩掛(ぶがかり)も必要です。

これらのふたつの要素を掛け合わせて、
たとえば、

100㎡の現場の建物解体工事をするのに
職人さんが何人必要で何日かかるか


といった
より実態に近い労務費を算出します。

標準労務費はさらに、
より実態に近い金額を算出する必要があるため、
工事地域の最低賃金や工事種別ごとの特性
に応じて柔軟に補正
をおこないます。

①や②はあくまで標準的な条件下での目安
ですが、
実際の工事現場では、
地域によって最低賃金や賃金水準が異なります。
そのため全国一律の金額をもとにした金額から
次のような要素をもって
現場の実情に合わせて調整されます。



こうして、
各工事の実情に即して
さらに柔軟にブラッシュアップされた
標準労務費は、単なる参考価格ではなく、
適正な労務費を確保するための基準
として、
今後の見積作成や価格交渉に
大きな影響を与えるものと考えられています。

国土交通省:標準労務費の算出


国土交通省:労務費基準値の示し方例





【なぜ標準労務費が導入されたのか】

建設業界では長年にわたって、
仕事を取る、請けるために工事価格を下げる
という価格競争が続いてきました。
そのしわ寄せは建設現場で働く技能者に及び、
低賃金、長時間労働、人材不足
といった悪循環を招いています。

また、2024年からは
時間外労働の上限規制も適用され、
従来のように
長時間労働に依存する現場運営
が難しくなりました。

今後も建設業界が持続的に発展していくため
にも、
適正な価格での受注と適正な労務費の確保
が不可欠であり、
標準労務費は
改正建設業法においての重要指標

として位置づけられています。






【標準労務費による建設会社への影響】

標準労務費が示されることで、
今後は見積もりや契約における労務費の妥当性が
これまで以上に重視されるようになります。

これまで散見されていた、

とにかく安く受注する
利益を削って契約する
労務費を圧縮して対応する

といったケースから、今後は、

労務費が適正にキープできているか
見積もりは不当に低くなっていないか
技術者への処遇改善が図られているか


という視点がより重要になるでしょう。

特に元請事業者は、
下請事業者への価格転嫁や適正な取引について、
これまで以上に配慮が求められるでしょう。




【元請/下請業者が準備しておくべきこと】

適正な労務費の設定、そして維持を
していくために、
建設業者が今から準備しておくべきことを
元請/下請事業者別に解説します。

◎元請事業者
元請事業者としては、
まず見積もりや積算の考え方の見直し
が重要です。
単にグロスの工事金額だけを
チェックするのではなく、

労務費
材料費
外注費
諸経費(法定福利費など)

といった費目を適切に積み上げたうえでの
見積もりが求められます。

また、

工期設定
下請への価格交渉

契約内容の見直し

についても、
これまでと同じ価格で大丈夫
と安易に判断する前に、
適正な労務費が確保できる契約
になっているか

という視点で運用していく
ことが重要となります。

現在使用している契約書や注文書・請書
で問題ないのか不安


という建設業者さまは、
1度内容を確認しておくことをおすすめします。

◎下請事業者
下請事業者にとっても、
標準労務費の考え方は大きな意味を持ちます。
もしこれまで、
利益はほとんど出ないが仕事を失いたくない
という理由で受注していた場合、
無理な価格での受注を継続していくと
経営悪化や人材流出につながりかねません。
今後は適正な価格交渉をおこなうためにも、

自社原価の把握
自社労務費の整理、構造把握
契約内容の書面化徹底

といった対応が大切になるでしょう。




【見積書・契約書の見直しが重要になる】

標準労務費対応として
元請/下請、どちらの立場でも
特に早く見直しておきたい書類が、

見積書
契約書


のふたつです。

見積書については、

労務費
材料費
外注費
法定福利費

などを可能な範囲で整理し、
算出根拠が説明できるレベルでの見積もり
を作成することが望ましいでしょう。

また契約書については、

工期変更時の対応方法
資材価格変動時の協議
追加工事の取り扱い

などを明確にしておくことで
後々の契約トラブル防止につながります。

改正建設業法への対応は
見積もりと契約を見直すことから始まる

と言っても過言ではありません。



【自社対応に不安がある場合は専門家に相談を】

標準労務費は、
技能者の処遇改善、そして
建設業界全体の健全な発展
を目的に設定される重要指標です。
昨年末の改正建設業法施行を機に、
適正な見積もりと契約に基づいた
労務費の確保が
これまで以上に求められる時代に入りました。

建設業者の皆さまは
単なる価格の問題ととらえず、
見積書や契約書の整備、
法最新ルールの把握への対応、
建設業許可の維持管理など、
実務上の法対応を早めに整えることが大切です。
標準労務費の考え方を正しく理解し、
安心して事業を継続できる体制づくり
を進めていきましょう。

WINDS行政書士事務所では、
  • 建設業許可申請
  • 更新・変更届
  • 経営事項審査
  • 契約書リーガルチェック
  • 建設業法対応相談
など、標準労務費への対応をはじめとした
建設業者の皆さま向けサポートを承っております。

法改正を受けて
何から自社対応すればよいかわからない
見積もりや契約内容を確認してほしい
元請との契約条件に不安がある
下請との取引条件を見直したい


という場合は、お気軽にご相談ください。


 
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